• Interview

Creator's File Vol.04 - Yuki Hata

sonoを使っているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画第4弾。
今回は、福岡に住みながらVRの世界でもライブなどの音楽活動をしているYuki Hataさんにクローズアップします。
Hataさんが音楽に携わるようになった経緯をはじめ、バーチャルマーケットやサンリオのVRイベント、そして京セラのVRワールドでBGMや効果音を担当したことについても詳しくお話を伺いました。

VRChat内の京セラのワールドで音楽を担当した話

mimy: 私とHataさんは同じ福岡在住で、クラブやライブハウスなどで何度か面識があり、以前もHataさんから直接お話を聞く機会があったのですが、今回はインタビューということで、Hataさんのことをまだあまり知らない人のために、今までの活動経緯などお伺いできればと思います。
初めてTwitterで繋がってかれこれ5年くらいなんですが・・・先日は京セラのVRのワールドの音楽を担当されたとか。最近のご活躍、本当に素晴らしいですね!

Yuki Hata: はい。「Kyocera Laser World​​」という京セラさんのレーザー製品について紹介するワールドがVRChatに作られたのですが、その会場BGM/楽曲制作とSE(効果音)を担当致しました。

「京セラレーザーコンセプト製品展示ブース」をVRChatに設置

mimy: Twitterで投稿を見てたんですが、「すごく大きなお仕事を引き受けていらっしゃるなぁ」って思ってました。

Yuki Hata: ありがたい限りですね。

mimy: Hataさんは「JOHNNY HENRY」というVRの世界でライブ活動するブルースロックバンドのドラマーでもいらっしゃるわけですが、今回の京セラのお話もVR上でのワールドでの音楽担当ということですよね。今回のお仕事は、やはりVR上のバンド活動の関係で声がかかったのでしょうか。

Yuki Hata: 僕はバンドと作曲の二本柱で活動しているんですけど、作曲側の活動でお話を頂きましたね。

mimy: ではもう、Hataさんご指名で直接お仕事が舞い込んできたのですね。

Yuki Hata: 僕は過去にもVRChatのワールドのBGMを作った経験があったので、それでお話を戴いたところはあると思います。

mimy: なるほど。VRChatの中で声を掛けられたんですか?

Yuki Hata: いえ、DiscordでDMを戴きましたね。

mimy: そういう経緯なんですね。Discordでお仕事の依頼が来るなんて、すごく今の時代だなっていう感じがします。

Yuki Hata: そうですね。僕はずっと家にいて作業をしている感じですが、何か不思議ですよね。

始まりは高校時代に友だちから誘われたジャズ研究会だった

mimy: Hataさんが音楽に向き合われるようになったきっかけをお尋ねしてもよろしいですか?

Yuki Hata: 僕は今もバンド活動でドラマーをしているんですけど、実はドラムをやっている期間がもう圧倒的に長いんです。

mimy: 何歳頃から音楽を始められたんですか。

Yuki Hata: 元々ピアノを幼少期からずっとやってたんですよ。でもその頃は全く音楽に興味なくて、練習も本当に嫌いだし、発表会も嫌いだし、譜面も全然読めないしみたいな。
それが中学~高校にかけて、ドラムマニアという音楽ゲームにもうめちゃめちゃハマって。その時に「生ドラムを叩きたいな」と思って音楽に興味を持ち始めたんです。
すると同じ時期に友だちが高校にジャズ研究会を作って部長になって、僕も入ることになり、そこで初めて生ドラムを叩きました。

mimy: 最初からジャズだったんですね。

Yuki Hata: そうなんです。ジャズってドラムソロがあって、ドラムが一番かっこいいなと思って。

mimy: かっこいいですよね。でも高校生の頃からジャズをやるというのもなかなか珍しい。

Yuki Hata: それはでも、若干逆張りみたいなところがありました(笑)
その当時はグリーン・デイやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのような洋楽や、BUMP OF CHICKENとかレミオロメン辺りが確か人気だったんですけど。
その流行になんだか乗っかりたくないと思ったときに、友だちが「俺ジャズ聴いてるよ」みたいなこと言ってて。
「ジャズかっこいいな」と思ったけどそんなに聴いたことなくて、通っていた高校の近くの図書館に大量に置いてあったCDを週5枚くらい借りて家でなんとなく聴くというのを繰り返しました。
全然ジャズなんてわからないんですけど、たまに「これかっこいい」みたいな良いのがあって。そういうのをずっと聴いて、ジャズが自然と身近な馴染み深い音楽になった感じです。

mimy: そうですか。私は自分の母親がジャズも含めていろんな音楽が好きで、子供の頃はずっと音楽が家に流れている環境だったんですけど、母が大好きなジョン・コルトレーンなんかも当時は全くピンときてなかったですね。今聴いたらめちゃくちゃかっこいいんですけど。

Yuki Hata: 僕の父親もコルトレーンが好きだったんですけど、多分団塊世代の人たちってコルトレーンとか結構フリー系のジャズが好きな印象がありますね。

mimy: なるほど。1960年代後半にコルトレーンが来日して長崎にも来たことがありましたよね。そういう時期と重なってあの世代にはコルトレーンを好きな人が多いのかなと思ってました。

Yuki Hata: 父の時代は学生運動が盛んだったんですが、当時は何か難しい前衛的なジャズを渋い顔して目を閉じながら聴くのがかっこよかったんだという話を父から聞きましたね。
脚色もあるとは思いますが。

mimy: 納得です。でも、お父さんが聴いていた文脈とは全く違うところでHataさんもジャズに触れるようになったというのは面白いですね。

Yuki Hata: ただ、僕が聴いてたのはアート・ブレイキーやビル・エバンスとかチック・コリアとかで、且つジャズの中だと結構ポピュラー寄りのものが好きでしたね。
もうマイルス・デイビスとか全然わかんなくて「なんだこれ…」みたいな(笑)

「どういう生き方をしたら良いんだろう」と思い悩みながらも音楽を続ける

mimy: 高校を卒業した後は美術系の大学に通われたんですよね。

Yuki Hata: はい。油彩を描く学科に行って。
でも大学4年間で絵を描いてたのは多分3年生くらいまでで、あとはだんだん音楽の方にシフトしていきました。

mimy: 高校時代からのバンド活動がずっと続いていたということですか?

Yuki Hata: そうですね、バンドを掛け持ちしたりしてました。コンスタントに活動するようなバンドはあまり多くなかったんですが。
全然授業に出なくなって、4年生のときに普段温厚な先生にもうめちゃくちゃ怒られたことがありましたね(笑)

mimy: えええ(笑)
無事に卒業できたんですか?

Yuki Hata: はい、卒業できました(笑)

mimy: 卒業してからはずっと音楽一辺倒な感じですか。

Yuki Hata: そうですね。今も恥ずかしながら当時と活動スタンスは全然変わってないんですけど、バイトしながら音楽活動をやるというのをずっと続けてるんですよ。
だから実はまともに就職したことがなくて。
そもそも僕がいた美術系のコースは、当時は不況の影響かまともに就職した人がめちゃくちゃ少なかったんです。
どちらにしろ僕は就職していなかったのかもしれないんですが、なんかズルズルと、っていう感じではありますね。

mimy: それは周りに一緒にやっていく仲間もいたからですか?

Yuki Hata: うーん。大学時代はバンドでライブハウスに出たりはしていたものの、バンドマンの界隈に入っていって仲間がいて、みたいなのはあんまり無くて。
ハコにお世話になって仲間が出来るようになったのは大学を卒業してからでしたね。
でも、一緒にやっていく仲間がいたからってのは大きいと思います。

mimy: 私の目から見ると、Hataさんはすごく良い生き方をされているなって思うんですよね。
本当にやりたいことがあっても、やっぱり大半の人はどうしても世の中的に「こうでないといけない」というものに引っ張られるから、何かに集中してやれることってなかなか難しいじゃないですか。

Yuki Hata: そうですね。

mimy: 本当は何かとことん突き進めたいと思っていても、いろんなことを考えていろんなノイズを聞いて「ちゃんとやらなきゃ」みたいな感じに普通はなりがちなんですが、私は自分がそういうちゃんとしたレールに乗ろうと思っても乗れなかった人間なので、仕方なくレールから外れたところで生きてきたら、だんだん「周りに合わせて生きていく必要なんてないよな、面白くないし」って開き直ってきちゃって。そこは負け惜しみなのかもしれないですけど。

Yuki Hata: 僕は自分が納得して生きられてたら幸せかなと思っていて。
結果的にそれが「レールに乗っている」と周りから見えることだったとしても、自分が納得できてたら良いのかなと。
僕は「好きな生き方をする」と決めてやったというよりも、割とダラダラとやってきたというのがあって、若い頃は「これでいいのかな」ってずっと思っていました。

mimy: なるほど、それでは葛藤もあったんですか?

Yuki Hata: 葛藤、、、うーん、昔からずっと頭の中でぐるぐる悩むことが好きで。でも、「どういう生き方をしたら良いんだろう」という問いには、答えを出せないまま気付いたらどんどん歳をとっていった感じが強いですよ。誇れた生き方は全くしてないです。難しいですね。

mimy: でも、きっとすごく楽しんでやっていらっしゃると思うんですけどね。

Yuki Hata: うん、楽しんではいます。ここ5年くらいは本当に楽しくて。
20代の頃はやっぱり心も不安定だし、楽しんでるんだけど反面「これでいいのかな」という何か虚しい感じが若干あって、かといって普通に就職もしたくねぇなみたいな。それが、音楽で仕事できるようになってきてからはすごく楽しくて。未だに不安はありますけど。

VRの世界と出会い、VRの中での音楽の可能性に目覚める

Hataさんが出演するVRChatでのライブ「仮想水槽」の様子

mimy: 5年くらい前といえば、私とHataさんがTwitterで繋がったのもその時期ですよね。
私が出会った頃というのは、Hataさんが音楽に入り込むようになった時期にちょうど重なっていたのですか。

Yuki Hata: ですですです。

mimy: その頃はHataさんご自身も、まさかVRの世界にぐいぐい入っていくとは思っていなかったんでしょうけど。

Yuki Hata: そうですね。僕の作曲の柱が立ってきたのって、2017年くらいなんですよ。
それまではずっとバンド活動やってて、色々とバンドはやっていたのですが僕はその場で集まった人たちで即興的に音楽を作るのがすごく好きで。
ジャムセッションではなく、完全な即興演奏という形で、ライブハウスにもほとんど出ない完全即興演奏のバンドを組んだんですよ。

mimy: そういえば以前、3ピースのバンドで24時間耐久の即興ライブをされていましたよね。YouTubeでリアルタイムで見てました。

Yuki Hata: ですです。
でも、バンドを組んで即興演奏を学んでいったら、ぶち当たったのが作曲だったんすよね。
何故かというと、即興演奏って何もないところから音楽を作っていくじゃないですか。
それが作曲のプロセスと似てるんだという話を、デレク・ベイリーの本か何かで知って、それで即興演奏に還元するために作曲を勉強しようと思ったんです。

mimy: では、それまでは作曲はしていなかったんですか?

Yuki Hata: 持っていたシンセサイザーで打ち込みはちょっとやってたんですけど、がっつりDAWを使った作曲はやったことがなかったですね。それで作曲をやり始めたらすごくのめり込んじゃって。
そうこうしていると、2018年くらいだったんですが、同じバンドのメンバーが先にVRに注目し始めたんです。「VRちょっと面白いですよ」みたいな話になって。
ちょうど「VRChat」という、いわゆるメタバースとかVR SNSとか呼ばれるプラットフォームの中で「バーチャルマーケット」というフェス型即売会の第2回目が開催されていたので、VRChatの中にアカウントを作って入ってみたんです。すると、その中のお店を模したもので皆んなが3Dモデルを展示していて、初めてVRの世界を知りました。
今一緒にバンドを組んでいるJOHNNY HENRYのリーダーを知ったのもその頃あたりで、彼がVRChatの中でソロで音楽ライブをやっていたのを見に行って、「こういう世界があるんだ」とか思ってましたね。
しばらくはそのままだったんですけど、2019年にバーチャルマーケットの第3回で会場BGMの作曲家を募集してたんですよ。

mimy: なるほど。

Yuki Hata: 例えばリアルの販売即売会だとどこか広い会場にブースが並んでいるのが一般的だと思いますが、バーチャルマーケットも同じなんですけど、会場がめちゃくちゃ凝ってたんです。
バーチャルマーケットの会場は何らかのコンセプトに沿ったワールドになっていて、もうVRの中だからやりたい放題なんですよ。巨大生物がいたり、全面がガラスのような半透明の何かで出来ている会場だったり。
バーチャルマーケット3の世界にも沢山のコンセプトの会場があってそれのBGM制作者の募集があったんです。
「面白そうだな」と思って応募して、受かったんですね。

mimy: さすがですね。

Yuki Hata: 作曲自体2017年頃から始めて、ミックスもマスタリングもお世辞にも上手と言えなかったので、まさか受かるとは思っていなかったんですが、受かることができてもうめちゃくちゃ嬉しくて。
僕はその頃まだヘッドマウントディスプレイを持ってなかったので、VRChatもゴーグルを使わないデスクトップモードで入ってたんですけど、せっかくVRのワールドのBGMを作るのならもう自分で中に入って聴いてみたくなりました。でも当時お金が無くて、「ポルカ」というサービスで支援して頂いて、そこでOculus Rift Sとグラフィックボードを購入し、やっとゴーグルを使ってVRの中に入ったんです。

mimy: 20万円ぐらい集めたとか?

Yuki Hata: いや、10万円ですね。Oculus Rift Sが5万円で、グラボが5万。

mimy: その後でJOHNNY HENRYを結成したんですか?

Yuki Hata: そうですね。VRChatって、ゴーグルを使って入ったら新しい世界に圧倒されてテンション上がるんですけど、その後どこに行っていいのかわからなくて。最初に誰かとフレンドになっていたりコミュニティに入っていたりすると、割とそこから広がっていくと思うんですが、僕の場合は中に入る習慣も別に無かったので、「これからどう楽しんだら良いんだろう」というのがあって。
するとバーチャルマーケットが終わって少しくらいして突然、後のJOHNNY HENRYのリーダーからDMが来て、「今度バンドのスタイルでライブをやりたいんだけど、ドラムを叩いてくれないか」と言われたんです。
そこからVRの音楽勢の人たちと交流始まって、一気に広がった感じです。

mimy: なるほど。DMはTwitterで来たんですか?

Yuki Hata: はい、DMはTwitterでいただきました。
TwitterとDiscordで連絡を取り合うのが多いですね。

mimy: Discordか。私、あんまりDiscordを使う習慣が無くて。VRも、最近はVRChatよりClusterのほうに入ることが多いかな。

Yuki Hata: Clusterは何から入ってます?スマホから?

mimy: スマホでもデスクトップでもQuestでも入るんですけど、Questだとすぐ酔っちゃうからデスクトップが一番多いですね。

Yuki Hata: デスクトップで入ると、便利で手軽ですよね。

mimy: そうですね。それでも酔っちゃうんですけど。

Yuki Hata: 酔うかどうかはその日の体調によってもだいぶ変わって来ますね。僕も低気圧で若干体調やられてるときだともうめちゃくちゃ酔います。

mimy: HataさんくらいVR経験が長くても、やっぱり酔っちゃうものなんですね?

Yuki Hata: 酔いますよ。慣れてる人もいると思うけど、僕はそんなにヘビーユーザーではなくて、最近入るときは出演とか仕事の時が多いですね。

mimy: なるほど。それで聞きたいんですが、VRの中で仕事するというのは、作った曲をワールドの中で演奏するいうことなんですか?

Yuki Hata: そうですね。VRChatの中で打ち合わせをやったり、BGMやSEを作るときは先にテストワールドを上げてもらって、そこでどうマッチしてるのかを確認したりします。

mimy: 最近は企業さんのワールドのBGMやSEを担当することが多いんですか?

Yuki Hata: いや、様々ですね。

mimy: サンリオ関連でもVRの音楽のお仕事をされていませんでしたか?

Yuki Hata: はい。今年の1月に「SANRIO Virtual Festival 2023」というのがVRChatで開催されたんですが、その中の「Beyond a bit」というライブショーの音楽を作らせてもらいました。

mimy: すごい!その音楽を作ったきっかけもやっぱりDiscordからの繋がりですか?

Yuki Hata: ディレクターのEstyさんと元々お知り合いだったのですが、最初はTwitterでDMいただいたのかな。具体的なやり取りはDiscordがほとんどでした。

mimy: お話を伺っていたら、興味を持って始めた後もずっと続けることが積み重なってお仕事のご依頼が来るようになったという印象を受けました。

Yuki Hata: ありがたい限りです。

mimy: Hataさんにはアグレッシブさは感じるんですけど、変にガツガツしていないというか、おかしな方向に走ってないところに私は好感を抱いてるんですよね。
真摯に音楽に向き合ってやってきたことがちゃんと結果に結びついていらっしゃるのだろうと感じます。あと単純に、Hataさんの音楽かっこいいです。

Yuki Hata: ありがとうございます。まだまだ勉強中です。

mimy: やっぱりドラムされているから、ビートがかっこいいです。
私は四つ打ちばっかりで、Hataさんみたいにかっこいい曲はなかなか作れないんですよね。そういえば、それで以前ふたりでコラボしようって話にもなったような。あれ、どうなったんだっけ?あ、一度作ったけど、Hataさんがやり直したいって言ったんだ(笑)

Yuki Hata: ごめんなさい、やり直したいって言ってそのままになってる。

mimy: 私もすっかり忘れてて、すみません。そのうち出しましょう(笑)

Yuki Hata: でもやっぱりお話を戴くことは本当にありがたいです。
VRに入ってから僕の中での一番の恩恵って、いろんな人との出会いで。
VRの中にはフロンティアスピリットに溢れてる人が多い印象で、そういう方たちと関わらせてもらってるのがまずありがたい部分なんですけど、だからこそ「ちゃんとやろう」って思っています。
あとは金銭面ですね。欲を言うと音楽で自活したいですね。

mimy: できますよ、Hataさんは。

Yuki Hata: えーーーー、うん、頑張ります。できるかな。

mimy: その文脈でいくと、このsonoというサービスは、ミュージシャンやDJの人がちゃんと音楽でお金を稼げるシステムを作るためにやっているので、将来的にはVRの世界でそういう場を提供できるようになれたらなと考えてます。だからHataさんにはまたいろいろとアドバイスなんかいただければと。
あとはsonoでテクノ・ハウス・エレクトロニカあたりのジャンルのレーベルをやるつもりでもいるので、これは完全に余談なんですが、レーベルが出来たら絶対Hataさんには声掛けようって前から狙ってます。はい。

Yuki Hata: ありがとうございます。そのときはぜひお声掛けいただけたら。

VRの中の空間演出と、制作側として関わって音楽活動をすること

VR上でアバター姿でライブをしているYuki Hataさん

mimy: 最後に、Hataさんの今後の展望というか、これからやっていきたいこと、既に取り組んでいる新しいことなどありましたらお聞かせください。

Yuki Hata: そうですね、今一番興味が出てきてるのがVRライブです。
「Beyond a bit」で曲を作らせてもらった事が、空間演出と楽曲をどう合わせるのかというところを考えるきっかけになりました。
「SANRIO Virtual Festival」で面白いと思うことの一つに、VRChatの中で活動や制作をされているクリエイターの方々のVRライブを見られるフロアがあって。
その中でいろんなクリエイターの方々の「VRライブってこうありたい」というものが、何だかくっきり見えた気がして。制作側として関わったことも関係してるとは思うのですが。
今VRライブの面白さや可能性をすごく感じています。

mimy: なるほど。

Yuki Hata: だから今何をやってるかというと、VRの演出に対する音のアプローチをどうしようと考える中で、具体的にはUnityを勉強したり、そういうことを興味持ってやってますね。

mimy: VRに於ける演出ですか。ちょっと話がずれるかもしれないですけど、KORGがバーチャルシンセを扱えるVR音楽制作環境をリリースしたという記事を最近読んで、あれは本当に面白そう、楽しそうだと注目しています。

KORG Gadget VR – Introduction

Yuki Hata: 出てましたね。あれをそのままVRのライブで使いたいですね。あのコックピットみたいなものをいじりながらマシンライブをするような感じでいろいろ作っていけたら面白そうですね。

mimy: もうこれ、ちょっと夢が膨らむんですけどもし可能なら、これから作るsonoのVRプラットフォームでKORGと提携して出来たら良いなと思ってしまいました。

Yuki Hata: いいですね。

mimy: まあ、相手にしてもらえないと思いますけど(笑)
理想としてはそういう野望を持っております。

Yuki Hata: ちょっと脱線しますが最近はクオンタイズしないリズムにハマってて。
VRの中のライブって、Unityのタイムラインで演出を作ったりするんですが、それにはDAWみたいなグリッドが無くて。映像編集ソフトっぽくて何小節とかもBPMもなく、秒数で合わせていくしかない。
その制作プロセスと、僕の今やってる手作業で地道に音を並べていくクオンタイズしないリズムがマッチしないかなと。
システマチックなものも良いんですけど、なんかアナログ感あるものが作れないかなぁと思っています。

mimy: VRという、めちゃくちゃ先進的な世界の中でのアナログ感ですか。興味深いですね。

Yuki Hata: それで言うと話は飛びますがVRの中でいろんな面白いことが発見できそうかなって思ってて。
例えば人間同士が会話するときはミラーリングという、相手の表情を自分も真似して無意識に相手の感情を理解する習性があるらしいんです。
でも、それってVRの中だとアバターを使うからあまり出来ないんですよ。ゆくゆくはもしかするとアバターも使ってる人間と同じ表情をしてくれるようになるのかもしれないけど、少なくとも現状は微細な表情の変化まではコントロール出来なくて。
その制限のある中で、コミュニケーションや表現方法がどう変わっていくのか、現に変わってきてるのか。そういうのは気になりますね。

mimy: 面白いですね。すごく可能性を感じる。

Yuki Hata: VRの中にいると僕は特殊な性癖を持ってると言われるんですけど、アバターがトラッキングエラーを起こしておかしなポーズになったときのシュールさに魅力を感じています。
例えば、VRゴーグルを着けてコントローラーを持ってると、ゴーグルがコントローラーの位置を認識してトラッキングしてくれて、アバターが同じ動きをしてくれる。
でもそのトラッキングにエラーが起こると、手や足だけが変なところに飛んでいって体がぐちゃぐちゃになったりするんです。そういうシュールな感じも、考えたらVRでしか起こり得ないものなんですよね。
あと、VRの中だと抜け殻もあったりして。その場からヘッドマウントディスプレイを外して一旦離席すると、アバターだけが倒れてるみたいな。
アバターの向こうの人間の存在の有無が見えるというか、VRなりの独特な実存感をそこに感じたり。

人がくしゃくしゃに!? 愛しきトラッキング飛びの世界

mimy: まさにシュールですね。

Yuki Hata: そういうのが作るものに与える影響もあったりするのかな、ゆっくり時間かけてだんだん顕著になっていくのかなと思ったりします。

mimy: そうか。Hataさんが最近sonoに上げてくださった曲のPVやアートワークも、人間こんなに骨曲がらないだろうみたいな格好をしていますよね。

Yuki Hata: そうですね(笑)

mimy: それもやっぱり面白さを感じて敢えてされてるということですか。

Yuki Hata: そうですね。言うほどコンセプチュアルではないし、そこまでテーマ性があるわけでもないけれど、単純に面白いなと思っただけなんですが。

mimy: すごくHataさんらしさを感じました。

Yuki Hata: ありがとうございます(笑)

mimy: そんなHataさんの噂の楽曲ですが、sonoのディスコグラフィーにもアップしてくださっていて、9月リリース予定のEPに収録されるそうです。この記事を読んでいらっしゃる方は良かったら引き続きsonoでHataさんの動向をチェックしてください!

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