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Creator's File Vol.10 - ハウリングケイ

sonoを使っているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画もいよいよ二桁に突入です。第10弾は北海道在住のテクノアーティスト、ハウリングケイさんを特集します!
10代の頃から音楽活動を始め、海外レーベルを中心に多数の作品をリリース。最近はドイツのFrank Mullerのレーベル「Muller Records」からR-04さんとExplainさんとのコラボEP「東北神」をリリースされ、その他にマシンライブを取り入れたイベントも主催されていらっしゃいます。そんなハウリングケイさんに、今までの音楽活動やどのようにして数々のリリースを重ねていったか、そしてこれからのことについてたくさんお話を伺いました。

北海道の音楽シーンでテクノアーティストとして活動

mimy: 今日はよろしくお願いします!早速ですが、ハウリングケイさんは北海道にお住まいなんですよね。

ハウリングケイ: 北海道帯広市で活動してます。

mimy: 帯広なんですね。私は福岡在住で北海道の土地感覚が全く無いので恐縮ですが、北海道ってすごく広いイメージがあって、帯広は札幌とはどのくらい離れているんですか?

ハウリングケイ: 帯広は札幌よりもっと東なんですよ。釧路よりはもうちょっと西寄りなんですけど、距離にしたら札幌から200キロ弱ですかね。

mimy: 200キロ!車だと何時間かかるんですか?

ハウリングケイ: 高速で3時間半ぐらいですね。

mimy: めちゃくちゃ遠いですね・・・!
プロフィールによると、先日sonoでもインタビューさせてもらったLuziqさんが主宰するレーベル「Zodiac13」からのリリースもあり、更につい先日はR-04さん・Explainさんとのコラボレーションである「東北神」をドイツのFrank Mullerのレーベル「Muller Records」からリリースされたということですね。

Tou Hoku Shin ep – R-04,Kei How,Explain
release date:2023.08.01
Label: Muller Records

ハウリングケイ: そうですね、はい。

mimy: アーティストとしての活動期間はどのくらいになるのでしょうか。

ハウリングケイ: 20年くらい活動しています。
でも、曲を最初にリリースしたのは2014年頃なので、僕は遅咲きの人間なんですよ。

mimy: その間ずっとテクノの曲を作ってこられたのですね。
リリースをするようになるまでは、どんな活動をされていらっしゃったんですか?

ハウリングケイ: 専門学校を卒業後、帯広のクラブでDJをやりながらいろいろお仕事をしていました。
一時期は病気で活動できなくなってしまっていたんですが、2014年にTominori HosoyaさんというハウスのアーティストでDJの方に「ちょっとデモを送ってみたら?」と言われたんですよ。コロンビアのGalapago Recordingsというレーベルでコンテストをやっているのを教えてもらって、それで最初のリリースをさせていただけることになりました。

Akinokareha – Kei How
Release Date: 2014-06-30
Label: Galapago Recordings

mimy: そういうきっかけだったのですね!

ハウリングケイ: はい。Tominori Hosoyaさんは「Tomi Chair」という名前でも活動されている本当に素晴らしいハウスを作る方で、東京にいらっしゃるんですが、すごくお世話になったんですよ。
元々は15年くらい前、Zodiac13からも曲を出しているTakuya YamashitaさんとSNSで繋がっていたんですが、Tominori Hosoyaさんとは更にその繋がりで。

mimy: Takuya Yamashitaさんも北海道在住の方ですよね。一緒にライブやDJで共演されていらっしゃるのでしょうか?

ハウリングケイ: 今年9月に出たイベントで初めて会えたんですよ。mixi時代からの繋がりでしたが、ようやく会えました。
最初はmixiにあったテクノ系のコミュニティで偶然Yamashitaさんのテクノを聴いて、「札幌でテクノを作っていらっしゃるすごい方がいるな」と思ったのが始まりでした。

帯広でDJとマシンライブのイベントを主催

mimy: 最近すごく北海道のシーンが熱いなと感じているんですが、プロフィールには他にTowa Ainutronicaさんのお名前の記載もありますね。
Towa Ainutronicaさんとも一緒に何か活動されてらっしゃるんですか?

ハウリングケイ: Towaさんは2年くらい前に、とあるイベントのフライヤーを見て知ったんです。
アイヌ楽器と電子音楽が融合と書いてあって、「すごい人がいるんだな」と思って探したらTwitterで見つけて、そこから知り合いました。今現在一緒にやっているというわけではないんですけど、曲作りをほんのちょっと協力するなどして、今後はコラボでリリースできたら面白いだろうなという話をしています。

mimy: なるほど。Towaさんとコラボするときは、テクノというよりエレクトロニカのような感じになるのですか?

ハウリングケイ: どちらかというとあの方は、アンビエントとかディープハウスとか、いろいろですね。

mimy: おふたりがコラボでリリースされたらすごく楽しみですね!
Towaさんともうひと方、Sijimaさんという方とも一緒に帯広のHipsterでハード機材やDJを交えたイベント「Feel the Pulse」を主催しているということですが。

ハウリングケイ: はい。まだ1回しかやってないんですけど、札幌からササキタカシさんと、そして北広島在住で90年代から活動されているYAMAOKAさんと一緒にマシンライブをさせていただきました。

mimy: マシンライブ楽しそう!

ハウリングケイ: 楽しかったですよ。

mimy: 帯広のクラブミュージックシーンってどんな感じなんですか?

ハウリングケイ: 帯広にはお店が少なくて、知っている限りは2軒か3軒くらいしかないんじゃないすかね。地下にある若い人が集まるクラブがあるのと、BOARSというクラブ、それから「Feel the Pulse」を開催したHIPSTER。
HIPSTERはクラブというよりもDJバーみたいな感じでライブもできるところなんですよ。
BOARSでは12月23日にライブをやることになっています。DJと、僕はマシンライブをやる予定です。

mimy: めちゃくちゃ楽しそうですね!
マシンライブするときは、どのような機材を使ってらっしゃるんですか?

ハウリングケイ: MPC Live IIとMIDIコントローラーと、あとはモジュラーシンセを使ってます。

mimy: 帯広のクラブミュージックシーンでは、マシンライブをする方は多いんですか?

ハウリングケイ: 全然いないです。

mimy: それでは、ハウリングケイさんのマシンライブは帯広の音楽シーンではもう必見ですね・・・!

10代から音楽を始め、一度は音楽を離れるも高評価を得て活動を再開

mimy: 音楽を始めたのは何歳くらいの頃からですか?

ハウリングケイ: 僕は高校時代、10代から音楽を始めました。帯広で電子音楽を始めて、友達もいたんですが、その頃札幌のラジオ局で対バンコンテストみたいなやつがありまして、それで全道のベスト8に入ったんですよ。

mimy: すごい!

ハウリングケイ: 最初のライブが高3のとき、札幌のPENNY LANEでした。
シンセサイザー2台だけでライブをやって、演奏はもうめちゃめちゃです笑

mimy: 当時はバンドのような形でライブをしてらっしゃったんですか?

ハウリングケイ: いや、ずっと1人でシンセサイザーを使ってやっています。
中学生の頃はYMOやTM NETWORKのようなテクノポップがすごく好きだったんですよ。その後、高校に入って電気グルーヴやKEN ISHIIさんに影響を受けて。
高校を卒業してからは札幌ビジュアルアーツという専門学校に入学したんですが、そこで井上大介さんという方が先生をされていて、電子音楽やいろいろなことを学びました。井上大介さんは「Quotations」というロックバンドに参加されていた方で、もう詳しいから本当に師匠ですね。

mimy: 音楽の専門学校で学ばれて、ずっと音楽一筋でいらっしゃったのですね。
ご病気で音楽を離れていた時期もあったそうですが、その後また音楽の世界に戻ってきたきっかけはどんなことがあったのでしょうか。

ハウリングケイ: きっかけは2014年に曲を作ってリリースしたときですね。「この曲でリリースできなかったらもう音楽やめよう」って思ってたんです。
そのときFacebookにアップしたらTominori Hosoyaさんが評価してくださって、リリースすることになったので、「これは絶対続けよう」と決めました。

国内外の様々なレーベルからリリースを重ねる

Morning Comes / Morning Glow – Kei How
Release Date: 2022-10-30
Label: Zodiac13

mimy: 私とハウリングケイさんはTwitterで繋がっていますが、共通のフォロワーさんもたくさんいますよね。

ハウリングケイ: そうですね。おそらく(Luziqさんと共にZodiac13を主宰している)LuNaさんや、その周辺の方との繋がりが多いと思います。

mimy: Zodiac13は、Takuya Yamashitaさんからの繋がりなのでしょうか。

ハウリングケイ: Zodiac13は確か、Takuya Yamashitaさん繋がりではなかったと思います。最初はLuNaさんが僕の何かの曲を気に入ってくださって「曲をリリースしませんか」という話になったんですよ。

mimy: なるほど。今までに何曲くらいリリースされてらっしゃるんですか?

ハウリングケイ: もう20以上してると思います。(※後からBeatportでリリース情報を拝見したら、2023年11月時点で既に40個以上のリリースがありました。
ヨーロッパのSpring Tubeというプログレッシブハウスのレーベルや、あとはスペイン、ヨーロッパ、南米などいろいろな国のレーベルから出しています。

mimy: 海外のレーベルが多いんですね!レーベルには自分からアプローチしていったんでしょうか。

ハウリングケイ: そうですね、英語は全く喋れないんですけど。どうやってるのか自分でもよくわかってない笑

mimy: 今は翻訳ツールもあるし、頑張ればなんとかなりそうですよね笑
私は時々SoundCloudでいろんなレーベルを見るんですけど、そういう感じでレーベルを見つけるんですか?

ハウリングケイ: はい、SoundCloudが多いです。

mimy: SoundCloudでDMを送って、「デモを聴いてください」みたいな感じでアプローチするのですか?

ハウリングケイ: そうですね。テクノやハウスを扱うレーベルを中心に、今までに300以上のレーベルにデモを送りました。
僕の場合はまず翻訳ツールを使って「あなたのレーベルは素晴らしい。僕はあなたのレーベルが好きなので僕の曲を聴いてください」と書いて、プライベートリンクで2、3曲送るんですよ。それで返答が返ってきて、「契約しよう」という話になったら契約して、そのまま曲をリリースする流れです。中には契約書を送ってこないレーベルもありますが。

mimy: そうなんですね。ここまで突っ込んだことを聞いてしまって良いのか心配ですが、契約上のトラブルが起こったことはありますか?

ハウリングケイ: 大きなトラブルはないですけど、リリースしたのに突然Beatportから曲が消えたとかそういうことはありましたね。

mimy: なるほど。レーベルに送ったけれども、ちょっと採用されなかったという曲もあるのでしょうか。

ハウリングケイ: いっぱいありますよ。それを作り直して違うレーベルに送ったりします。

トラックメイキングとマシンライブの話

mimy: でも本当に精力的に活動していらっしゃるので、すごいなと思います。どのくらいの頻度で曲を作っていらっしゃるのですか?

ハウリングケイ: 昔はもう1日に2、3曲を作ってましたね。

mimy: 制作するときはMPC Liveやシンセなどハードな機材を使って作るんでしょうか。

ハウリングケイ: 昔はソフトシンセとFL Studioを使ってましたが、今はどちらかというとハードの割合が増えました。ハードのほうがなんとなく音も良いなというか、僕の勝手な感想ですけど。

mimy: なるほど。マシンライブをするのと曲を作るのとで手法に違いはありますか?

ハウリングケイ: 曲作りの場合は一定に決まったパターンが出来上がってきます。僕はモジュラーシンセも使うんですが、モジュラーはまだ曲作りのときしか使ってなくて、ライブのときはMPCで抜き差しをしたり、オリジナルとは違うシンセサイザーで変化を加えたりしていくので、30分のライブセットの中で偶発性が生まれていろいろな展開が作られていきますね。

mimy: お話を聞いてるだけで、ライブの面白そうな感じが伝わってきます・・・!
1日2、3曲を作られていたとのことですが、それを毎日続けていたんですか?

ハウリングケイ: ほぼ毎日続けてましたね。仕事しながら。

mimy: 夜、お仕事から帰ってきて、限られた時間の中で曲を作られていたのですね。

ハウリングケイ: そうですね、でもミキサーとの調整とかは抜きですよ。

mimy: 作っては次々にいろんなレーベルに送るような感じですか?

ハウリングケイ: それを繰り返しましたね。約10年ずっと続けました。今はペースが落ちて、1週間に1曲作るか作らないかですが。
今回Muller Recordsから「東北神」を出して、ちょっとひと段落ついちゃったような感覚で、気持ちが落ち着いちゃったというのはあります。

Muller Recordsから「東北神」をリリース

mimy: 新曲「東北神」のお話が出たところで、今回のリリースについても是非詳しくお聞かせください!

ハウリングケイ: はい。「東北神」はR-04さんとExplainさんとのコラボで作った曲です。
R-04さんはSpring Tubeでレーベルメイトだったんですよ。それからリミックスの依頼を受けたりして仲良くなって。

Life Force in Green – R-04
Release Date: 2022-06-20
Label: Sol Y Playa

ハウリングケイ: Explainさんは、Oyoda Recordingsで一緒にリリースしたんですよね。それで、R-04さんと「Muller Recordsで曲を出せたら面白いですね」という話になったとき、それならExplainさんも呼びましょうということで、このような形でコラボすることになりました。
そうして作った5曲がFrank Mullerに認められて、今回リリースすることになった次第です。

Honey666 – Kei How, Explain
Release Date: 2022-11-02
Label: Oyoda Recordings

mimy: 本当にすごいですね!
複数人でコラボしながらの制作は、どのような形で進められたのですか?

ハウリングケイ: 個々の人たちが一曲一曲を作り、それをリミックス的な感覚でそれぞれがアレンジして完成させる感じです。

mimy: なるほど。皆さんリアルで会って作業されるのですか?

ハウリングケイ: それが、実はまだ一回も会ったことないんですよ。

mimy: それではデータを送り合っての作業だったのですね。
制作期間はどれくらいかかったんですか?

ハウリングケイ: 途中で皆んな体調崩したりしたので、半年くらいかかったと思います。そうして出来上がったデモをR-04さんがMuller Recordsに送ってくださいました。

mimy: そうなんですね。「レーベルは絶対Muller Recordsに送るぞ」と決め上で、ピンポイントで攻めていった感じなんですね。

ハウリングケイ: もう「絶対受かる」って言霊にしてやりました笑

今後はライブに主軸を移しながらイベントを続けていく

mimy: Muller Recordsから曲をリリースされて、ひとつの大きな目標を達成されたことだとは思いますが、今後チャレンジしてみたいことはありますか?

ハウリングケイ: そうですね。とりあえずいろんなところでマシンライブをやれたらというのと、やっぱりテクノの曲をもうちょっといろんなレーベルから出せたら良いかなと思いますね。
ライブについては、札幌で9月に1回やりましたが、帯広で来年もう一度「Feel the Pulse」をやる予定です。
「Feel the Pulse」はどちらかと言えばライブがメインなんですけど、でも中にDJとかも入れようかなと思っています。ライブが2人くらい、DJが2〜3人くらいでやりたいですね。
僕、Hiroki Esashikaさんというアーティストにすごく影響を受けているんですけど、この方が以前札幌でDJとライブを入れたイベントをやってたんですよ。
あとは他に「beep」というイベントに今年初めて行ったんですが、それを観て自分でもイベント上でマシンライブをやりたいと思ったんです。
今まではDJをやることが多かったんですが、その影響で自分でも「Feel the Pulse」でマシンライブをやっていきたいなと考えています。

mimy: では、これからはライブのほうに主軸が置かれるように変わっていく感じですかね。

ハウリングケイ: そうですね、そちらのほうが増えていきます。札幌や、もしくは広く北海道の皆さんをお呼びしてやっていこうと思います。東京で何かをやってみたいという気持ちもありますけど。

mimy: 素敵ですね!いつかsonoでイベントをやれたら、是非とも一緒に出来たら良いですね。

ハウリングケイ: ありがとうございます。

mimy: ものすごく精力的に活動されていらっしゃるので、お話を伺っていて私も大変刺激になりました。このインタビューを読んで、多分たくさんの方がまた刺激を受けて曲を作られるのではないかなと思います。

ハウリングケイ: 僕のような人間でもこうして曲を作ってリリースしていっているので、若い人たちが諦めないで一生懸命曲を作ってくだされば嬉しいですね。

【追記】

「東北神」はSatoshi Fumiさんにもプレイされました!ハウリングケイさんはSatoshi Fumiさんにも大変お世話になられているとのことです。是非チェックしてみてください。

https://soundcloud.com/blooplondon/sequent-w-satoshi-fumi-170823
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