sonoを使っているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画、18回目は2025年5月27日にカナダのRennie Foster率いるレーベル「RF」より「Wa Fu Hyou Ryu」をリリースするR-04さんにお話を伺いました!
このリリースは、以前Kei How(ハウリングケイ)さん・そしてExplainさんと一緒に制作してドイツの「Muller Records」からリリースした「東北神」と同じ顔ぶれでのコラボレーションとのこと。制作の裏側や、R-04さんのこれまでのご活躍、創作活動についての想いなど詳しく語ってくださっています。
新作「Wa Fu Hyou Ryu」と、Kei Howさん・Explainとの出会い
mimy: 「Wa Fu Hyou Ryu」のリリースおめでとうございます!今回のリリースは、以前sonoでもインタビューさせていただいたKei Howさんと、そしてExplainさんの3組でのコラボレーションということですね。
BEROSHIMAさんのMuller Recordsに次いで再びこのメンバーが集結ということですが、どのような経緯でRFからのリリースに繋がったのでしょうか?
Beatport▶︎ https://www.beatport.com/ja/release/tou-hoku-shin/4190516
R-04: 「東北神」の制作を行ったときは、Kei Howさんがインタビューでお話しされていたように3組でマテリアルを作ってオンラインで交換してトラックを仕上げました。
そのスタイルで作り上げてから、その延長で「もう少しトラック作ってみよう」ということになり、音源を互いにパスして増やしていった中で出来上がったトラックをまとめて、今回RFから発売させてもらうことになりました。
mimy: この3組が集まったそもそものきっかけをお伺いしてもよろしいですか?
R-04: Kei Howさんは、私が「Daylight」というEPを2021年にラトビアのレーベル「Spring Tube」からリリースされることになった際、レーベルメイトの方々を見ていたら明らかに日本出身と思われる方がいらっしゃることに気が付いて。
「いい曲作ってるなぁ」と思ったことでやり取りが始まったのを覚えてます。
mimy: レーベルメイトだったことがきっかけだったんですね!
そして、Explainさんもそこに合流されるということですね。
R-04: Kei Howさんはコラボレーションに積極的な方でいらっしゃるんですが、私にもExplainさんのことをご紹介くださって。
そうしたら、Explainさんのほうから「一緒にやりませんか?」というお話が来たんですよ。
mimy: Kei Howさんが繋げてくれたご縁でExplainさんと一緒にコラボレーションをすることになったということですか?
R-04: そうです。そうした中で、Explainさんとのコラボレーションで2022年に「Pochette」というEPが発売されることになりました。
3アーティストで制作する過程・役割
mimy: 制作のやりとりについてですが、「誰がメインでビートを作るか」という役割分担はあるのですか?
R-04: 明確に「こういう作り方で行きましょう」と毎回決まっていたわけではないんですが、得意分野というか、キャラクターがそれぞれ違うところが面白いなと思っています。
Explainさんはハードなビートが得意で、一方私は元々ピアノをやってたこともあって、つい鍵盤を弾いちゃうんですよ。そしてKei Howさんは、その中間のバランスを取ってくださるので、上手く棲み分けが出来ていると思います。
また、3組で回すので、最後に触った人のキャラクターが曲に出やすいかな、とは思います。
今回のEPはExplainさんが最後に触ってる頻度が高く、前回よりも全体的にビートが前面に出てるかもしれません。
mimy: 「誰が最後に触るか」はどういう流れで決まるのでしょうか?
R-04: 最初に「こんなのがあるので触ってみませんか?」と投げた人は、最後には出てこないという感じですかね。
「じゃあ私、手が空いていてるからちょっとやっちゃいますね」というふうに、自然発生的にこのようになっていて、今回はExplainさんが最後に「出来ました!」と送ってくれました。
mimy: WAVのパラデータやステムデータをやり取りして「こんなの出来た!」「じゃあ、それになんか乗せるね!」という形で進めるのですね?
R-04:そうですね、大体最初は2分くらいのループで。
これは私だけかもしれないですが、最初の段階で出来上がりすぎているとやりにくいような気がするので、他の人が個性を出すための余地を残してお渡しすることを心がけていました。
レーベルリリースについて
mimy: 制作を始める時点で「どこかのレーベルから出そう!」という目標を持って始めるんですか?
R-04: 場合によりますが、「東北神」の場合は明確に「Muller Recordsさんでのリリースを目指しましょう」ということで作り始めました。
その流れでストックが出来ていたので、手元にあるストックをどこに投げようか考えたときに、確かKei Howさんが去年の3月くらいに「Rennie Fosterさんのところへ持って行きませんか?」と言い出してくださったんです。
mimy: それでは、1年に渡って温めていた企画ということなんですね。
R-04: そうですね。だからやっぱり思い入れはあります。
mimy: このEPは4曲収録されているということですが、他にも曲があった中でこの4曲を選ばれたですか?
R-04: 私自身もストックは常に沢山ありますし、多分Kei HowさんやExplainさんもそうだろうと思います。相当ストックをためてる。
mimy: 確かに、以前Kei Howさんとお話したときも「毎日曲を作っている」とおっしゃっていました。
R-04: そうですね。だから私もリリースされているのは氷山の一角なんですけど、ストックは結構ありますね。
最新作「Wa Fu Hyou Ryu」の制作裏話
mimy: 今回収録されている4曲はリミックスというわけではなく、全て新作なのですね。
各楽曲についてのご紹介もいただけると嬉しいです。

BeatPort URL▶︎ https://www.beatport.com/ja/release/wa-fu-hyou-ryu/5074811
バンクーバー在住のアーティスト、Taka Sudo氏によるアートワークは、レーベルが準備してくれたものとのこと。
R-04: 「Wa Fu Hyou Ryu」というEP名に関してはKei Howさんの命名で、「和の風が漂い流れる」という意味の込められた造語です。彼曰く、「日本的な雰囲気のものが海外に流れ漂っていってほしい」と願って作ったとのことで、これに限らず彼は「ジャパニーズ・テクノ」を意識したような日本語のタイトルを付けることが多いですね。
そしてこのEPには「Raikou」「Fudoh」「Setsuna」「Text」の4曲が収録されています。
「Raikou」は雷、「Setsuna」は瞬間、「Fudoh」は動かざるという意味で。
mimy: 不動明王の「Fudoh」ですね。
R-04: そうですね。この辺には実は裏話がありまして。
去年末ごろ、私とKei HowさんとExplainさんがオンラインで雑談していたときに、私が「ああ播磨灘」という昔の相撲漫画にハマってたことを話したんですね。で、その中に出てくるキャラクターやキーワードが曲名の元になっています(笑)
そんな感じで、他愛のない話の中から出てきた単語をヒントにして曲を作ったりタイトルを決めたりしていました。そうして「Raikou」という曲名が決まると、「やっぱり雷の音を入れなきゃ」ということになって、曲作りのイメージが膨らむんですが。
私1人で曲を作る場合はその曲に合うイメージの単語付けるものの、コラボレーションにはそういう遊び心を入れています。
mimy: 3組の皆さんが共通で読んでいらっしゃる漫画なんですか?
R-04: いや、多分私だけだな(笑)
mimy: そうなんですか(笑)
残りのもう1トラックは、R-04さんではなく他の方が名付けられたのですか?
R-04:「Text」ですね。
この曲は、最初にExplainさんが「Text」というタイトルで素材を送ってきてくださったんです。なので・・・一体どういう意味なのかは、実はよく分かりません(笑)
私自身は「Text」という言葉からパソコンでカタカタしているイメージが浮かんだので、そういった雰囲気をこの楽曲に多少注入しています。
R-04さんのこれまでの活動
R-04: そういえば、Explainさんとは「Pochette」のコラボレーションよりもはるか昔に、コンピレーションでご一緒していたことに後から気付いたんです。
Electrax Musicが東日本大地震の際に出した、「KIBOU」という4枚組チャリティコンピレーションでした。
mimy: 交流を深める以前にも実はレーベルメイトだったのですね!テクノ界隈だと、何かしら繋がってきますよね。
R-04さんは、DJやライブなどの活動はされているのでしょうか?
R-04: 東京ベースで活動していますが、最近は引きこもりがちなので、お誘いお待ちしてます(笑)
mimy: DJとマシンライブ、どちらの形でご出演になることが多いですか?
R-04: 出演するのはDJですね。最近はYouTubeでも、ちょこちょこ動画をアップしています。
1. Emotions, Yuuki Hori
2. Station, kanata.t
3. Suiren, Rukeichi
4. Awake, Sarufaromeo
5. Sound Scape, Towa Ainutronica
6. Rawan, Kei How
マイク・ワットとのコラボレーションと、英語圏に向けての音楽発信
mimy: そもそも、DJや楽曲制作についてはいつ頃始められたのですか?
R-04: デビューしたのは2009年です。当時「Roxour」というレーベルから、最初のシングル「Gazing At The Moon」をレコードで発売させてもらいました。
mimy: いきなりフィジカルでのリリースだったのですね。
R-04: 今だとちょっと考えられないですよね。価格が上がってしまっているので。
その曲が何故か、イギー・ポップがフロントマンを務めるパンクバンド「The Stooges」のベーシストであるマイク・ワットさんの耳に止まって、彼のラジオで曲をかけてもらい、番組内でインタビューも受けたんです。
それがきっかけで「今度一緒に曲を作りましょうか」という話になって、イギリスの「Paper Recordings」というレーベルから私とマイク・ワットさんの曲が発売されました。
mimy: 最初から世界で活躍されてらっしゃるのは凄いことですね!
お話を伺っていると、R-04さんの活動はすべて基本的に海外での展開であるというふうに感じます。
R-04: やっぱり英語圏のほうが分母が大きいし、出来れば色んな人に聞いてもらいたいので、英語圏へ向けてひたすら発信してくのは最初からずっと心がけていたことですね。
R-04: これはマイク・ワットさんがベースを弾きながら「こんばんは」って言う曲で。
「リアルバージョン」とありますが、マイク・ワットさんって、積極的に日本語を喋ろうとする方なんですよね。だから本人は「こんばんは」と言っているつもりだったらしいんですけど、最初に送ってこられたバージョンは「かんばんは」だったんですよ。
「こんばんはのつもりなんだろうなぁ」って気付いてはいたんですが、「Kanban Wa」のほうが面白いなと思って、そのままにしてたら「Kanban Wa」が先に発売されました。
Band Camp▶︎ https://paperecordings.bandcamp.com/track/konban-wa
mimy: (笑)
後から本人が気付いて「Konban Wa」にしたんですか?
R-04: そうです、だからリアルバージョンなんです(笑)
流行らせたい概念①「テクノ・ハノン」
R-04: 最近私が流行らせようと思ってる概念が2つあるんですが。1つは「テクノ・ハノン」ですね。

mimy: 「ハノン」って、ピアノの指の動きを練習する、あのハノンですか。
R-04: そうです。ハノンって、ひたすら同じ音階を繰り返すので「つまらない」と思って嫌になってピアノを辞めちゃう人が多分たくさんいると思うんですよ。
私は6歳の頃からずっと今でも趣味でピアノを続けていて、「ハノンやらなきゃいけないよな」と思ってやるんですけど、やっぱり辛いんですよね。
mimy: ずっとやってても辛いものなんですね。
R-04: 面白くはないです、早く曲を弾きたいなって(笑)
それを「いかに楽しく克服するか」を考えたときに、テクノもよくよく考えると繰り返しが多いじゃないですか。でも、テクノの繰り返しは、なんか気持ちいい。ということは、テクノに合わせてハノンをやれば、楽しいはずではないかと。
mimy: ハノンって、楽譜には1番から何十番かまで載っているじゃないですか。あれを全部そのままテクノにしてしまうということですか?それとも、ハノンの「繰り返し練習する」という概念をテクノに持ってくるということなんでしょうか?
R-04: ムービーがあります。
R-04: 単純な話、「テクノを聴きながらハノンをやれば苦痛が柔らぐだろう」って、そういうことなんですけど。
mimy: 「練習のときにテクノのビートに合わせてやると楽しいよ」ということを広めようとしていらっしゃるのですね!
確かに、ビートがあるとメトロノーム代わりになってテンポが保てるので練習になりそうです。そうすると、BPMを変えるのもありですね。
R-04: 一応、2倍速バージョンもあります(笑)
流行らせたい概念②『レトロフュージョンテックハウス』
R-04: もうひとつ流行らせたいのは「レトロフュージョンテックハウス」です。こう呼ばれるようなジャンルを開発しようかなと思っています。
mimy: 「レトロ」というと1970年代〜1980年代くらいの音を思い浮かべますが、「フュージョン」はジャズの流れですよね。その辺の音とテックハウスを組み合わせるということですか?
Beatport▶︎ https://www.beatport.com/track/floating-lights/17580558
R-04: 「Floating Lights」という曲は、まさに私がレトロフュージョンテックハウスを意識した楽曲なんですが。
趣味でジャズっぽい曲を弾くことがあって、その辺の理屈を勉強していく中で得たエッセンスを曲作りにコソコソ仕込んでいます。ブロックコードとかツーファイブワンとかフォースビルドとか、セブンスを分解してバド・パウエルっぽくしてみたりとか。
mimy: 考えてみるとテクノは元々ハウスの文脈から来ていますが、ハウスのルーツを辿っていくと1970年代のファンク、ひいてはジャズが源流にありますよね。ジャンル的には全部繋がっていくという納得感はあります。
R-04: 特に「この時期の音を明確に意識している」という感じでもないんですけど、私の近い友人であるプロデューサーからは「1990年代を意識してますね」というコメントをもらうので、多分1990年代っぽいんだろうなとは思います。
mimy: 「1990年代っぽくなる」のは、その時期に音楽に目覚めたり、その時期の曲をめちゃくちゃ聴いていたりなどの原体験があるからなのでしょうか?
R-04: ありますね。めちゃくちゃある。あの時代にはゲームミュージックをよく聴いていたんです。多感だった時期にクラブミュージックもバンドサウンドも聴いてましたけど、三分の一くらいはゲームミュージックでした。
ゲーム会社のTAITOにZUNTATAというサウンドチームがあるんですが、当時ZUNTATAに在籍してたSHUさんという方の曲がすごく好きで。当時も今もファンですけど、その後ネットが栄えた頃、彼にファンレターを送ったら「会いましょう」ということになって。
実際にクラブでお会いしたら、更に何故か一緒に曲を作ることになったんです。
mimy: 自分が憧れてた方と一緒にネットで繋がることで、そこから発展していったわけですね!
R-04: そうなんですよ。その流れで制作した彼との合作は今でもBeatportにあります。Schnackという名義の方がSHUさんです。
Beatport▶︎ https://www.beatport.com/ja/track/if-got-wet/11529368
R-04: あの時代のゲームミュージックなどが「レトロ」にオーバーラップしてる部分ですね。
特に、SHUさんの影響はおそらく無意識に出ている気がします。
編集後記
クラシックピアノの基礎をもち、ゲームミュージックに影響を受け、そしてジャズへの傾倒を取り入れながら精力的にテクノの楽曲を作り、世界の音楽シーンへ向けて発信し続けているR-04さん。そのバックグラウンドに迫る中、インタビューの時点ではまだ聴くことのできなかった最新EP「Wa Fu Hyou Ryu」を早く聴いてみたいという気持ちは高まるばかりでした。
Kei Howさん・Explainさんとのコラボレーションによりどのような化学反応が新たに生まれているのか、是非読者の皆様もその耳でお確かめください!

楽曲情報:
「Wa Fu Hyou Ryu」- R-04, Kei How, Explain
レーベル:RF(カナダ)
リリース日:2025年5月27日
Beatport: https://www.beatport.com/ja/release/wa-fu-hyou-ryu/5074811
追記
「Wa Fu Hyou Ryu」のリリース直前ですが、某有名レーベルからまたR-04さんとKei Howさんとの合作が後日リリースされることが決定したそうです。こちらも楽しみですね!