
sonoを使ってくださっているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画、前回から「激DJに訊く!稼げるDJ・呼ばれるDJになるためのメソッド」と題して、シリーズでお届けしています!
激さんにはインタビューにてnoteのマガジン「激DJ 構築の戦略」誕生秘話や、激さんが考える「DJ論」について、色々とお話を伺いました。
第2回目のメインテーマは「グラデーションと構築」。オーディエンスの空気を読むことや、DJは準備をして臨むべきかどうかについてもお尋ねしました。
前回の記事:
DJにおいての「グラデーション」と「構築」
Mimy(以下 M):私は基本的にDJではなくイベントに遊びに行ってフロアで踊る側の人間ですが、「楽曲のテクスチャーの異なるものが交互に繰り返されるとなんだか合わない」というのは、踊っていても感じます。
リズムにのって音に体を委ねるからこそ、次から次に大きくリズムが変わってしまうと長く踊れないし、「(前回の記事で触れた)お客さんが安定を求めている」というのはそういう話なのだな、と思います。
クラブミュージックは音楽の中でも「踊ることありき」な部分があるので、やっぱりDJをする上では「踊りやすさ」がすごく大事ですよね。それが「パターンを安定させる」ということに繋がるのだなと。
激(以下 G):とはいえ、真面目な人ほどパターンを変えないので、パターンを切り替えることによって「いかに自分に引きつけるか」を作ってほしいなというのもあります。
noteの真ん中辺りの章、いわゆるストーリーを作ることに関して書いた「選曲の構築」という記事は、そういう「方向を作っていく」イメージについての内容なんですよね。

M:「真面目な人ほど」と仰いましたが、テクスチャーやリズムを変えていくほうが、構築する意味では良いということですか?そのほうが変化が生まれてお客さんを喜ばせやすいのでしょうか。
G:テクスチャーの移ろいの「グラデーション」をどれだけ細かくしていくかというお話ではあるんですけど、絶対に変わってるはずなんですよ。
M:なるほど。
G:意図せず「考えないでやる」っていうのが一番良くなくて。
意図して「ずっと同じ機械的なグルーヴで行きます!」というのであれば、それはその人のプレゼンテーションなので、ウケるかウケないかは一旦置いといて良いと思うんですね。
でも、その機械的なグルーヴの中にも、リズムを詰めるなど何かしら変化は絶対あるはずです。
自分の時間を作っていくことはつまり「構築」だと思います。そして、お客さんに伝えるためには、やっぱり色はガラっと変えたほうが分かりやすいんですよ。
いわゆる「グルーヴ・キープ」がすごく気持ち良い人というのが絶対いて。グラデーションの切り方をどういう風にきれいにしてるのか、というのはあると思いますね。
M:お客さんに「伝わった」というのは、自分で感じることができるものですか?
G:全然感じますよ!
M:どんな瞬間に感じますか?
G:やっぱりさっき(前回記事で)仰ったみたいに、四つ打ちが続いた後にブレイクビーツを流してお客さんが「わぁー!」って盛り上がったらそりゃもう「よし!よし!」となりますね。DJって、めちゃくちゃ敏感なので。
M:そうなんですね!
G:後はなんかね、概念的な話なんですけど、空気が見えるんですよ。
M:空気が……見える!?
見える「空気」と見えない「オーディエンス」への対策
G:そう、お客さんの盛り上がった時の空気が見えます。
僕は色んなジャンルをまたいでDJをするんですが、「ここであのスイッチを入れる」みたいな曲が何個かあって。
その曲をかけた瞬間に空気が動いたら、その日はもう「いただきました」って感じですね。
M:そうなんですね!
sonoはVRの音楽プラットフォームを作ることを目指してるんですが、VR空間しかりYouTube配信しかり、オンラインだと空気を読みとる状況を作るのは難易度が高そうに思えます。「リアルだからこそ」という部分はやっぱり強いですか?
G:僕もTwitchで配信を1〜2年やったことはあるし、昔はUSTREAMでも配信していましたが、うーん……。やっている本人は分かりますけどね。
M:分かるものなんですね。
G:分かると思います。あとは、コメントや数字があればそれに越したことはないですね。お客さんの滞留率であったりとか。
オンラインのイベントスペースに10人しか来ていなくても、「10人ずっとその場にいてくれている」という状況であれば「お客さんがちゃんと聴いてくれてるからこの調子でいこう」という指標になるので、そこら辺をヒントにしながら、という感じです。
M:では、配信には配信の難しさもあると思いますが、実はリアルのDJとそこまで大きな違いはないのでしょうか?
G:そうですね。ただ、配信だと音がきれいに聴こえすぎるので、ミスがバレる(笑)
M:なるほど(笑)
G:まあ、最近の人はデータ音源でDJをするので、そんなに大きなミスもないかと。レコードだったらね、ピーンって音が飛んだり針がどこかに行ったりとかはありますが。そこの緊張感は、別の意味であると思いますよ。MIXを録っているようなものなので。
M:激さんは基本的にデータとヴァイナル音源のどちらでDJをするんですか?
G:最近はレコードが多くて。何故かというと、レコードのほうがウケが良いんですよ。
M:どういう意味で?
G:分からないです(笑)
M:(笑)
G:データであろうとレコードであろうとDJということに大きな違いはないと思っているんですけど、僕は見た目のアクションが結構大きいので、多分レコードのほうが見栄えするというのはあると思いますね。
激さんのDJの様子がよくわかります。
他者からの影響と個性
M:DJって、プレイだけではなく見た目の動きの大きさや派手さのようなパフォーマンスも求められるんですか?
G:あったほうがお客さんとしては嬉しいですよね。分かりやすくて。
自分でYouTube用に撮っている動画を見たら、確かに「よう動いてんな」って思いますし(笑)
M:なるほど(笑)
G:よく動くようになったことには理由があって。
DJ KOCO a.k.a. SHIMOKITAはご存じですか?ワールドツアーもしている方ですが、7インチだけでDJするんですよ。
その方と去年か一昨年に京都で一緒にDJする機会があって。めちゃくちゃ上手いのは分かってたんですけど、そういう方が、自分でDJしながらキャップから汗を垂らすくらいブースの中で踊ってるんですよ。
それを見て、「世界クラスの方がこれだけ動いているのなら、自分なんかもっと動かないと割に合わへんやん」と思って。
そういうこともあり、僕は大きめなアクションで動くようにしています。
M:そうなんですね。一緒に共演された方からの影響を受けることは多いですか?
G:「良いな」と思ったものはもちろん、ニュアンスとして取り込む感じですね。
データ音源だと250円も払えば1曲買えるので、「その人そのまんま」というのは出来ませんが、その方のニュアンスを自分ならではの形でコピーすることは出来ると思ってます。
M:その場合、使用する楽曲そのものは変わらないわけじゃないですか。
「自分ならでは」というのは一体何なんですか?前後の繋がりですか?
G:DJって、その人の「生活感」が出るんですよ。性格であったりとか。
例えば僕の場合せっかちなので、すぐ次の曲ミックスしていくんですよね。本当はミックスって等速で乗せないといけないんですけど、次に流す曲が前の曲のBPMをちょっと越えちゃってるとか。それをプレイしながら調整したり。
僕は次の曲が混ざっているのを暴露しながらミックスするのが好きなんですよ。「はい、今ミックスしてます!」みたいな(笑)
M:そうなんだ(笑)
G:でも、人によっては知らない間に曲が変わってることを美徳とする人もいるじゃないですか。もうこの時点で性格が違うので。
だから同じ曲のミックスをしていても、ものすごく性格が出ますよ。
DJとしての準備
M:なるほど、そこがDJの個性となるわけですね。
レコードとデータ両方を同じパーティーでプレイすることもあるのですか?
G:ありますね。データでしか存在しない音源があるので。でも、デバイスをまたぐことには「やりにくさ」という意味でのストレスがあるから、やっぱりデータならデータということで、ある程度揃えたほうがやりやすいです。
例えば『データ→レコード→レコード→データ→データ→レコード』ってなると、今自分が何を触ってるのかも分からなくなってきたり(笑)
M:そうですよね(笑)
G:完全にプレイリストを作っていたら出来なくもないんですが、そうなってくると作業に近くなるので、出来れば「前半データ、後半ヴァイナル」というふうに長い尺で使い分けたほうが、今の僕は調子が良い感じです。
M:noteの記事にはプレイリストを作ることについての内容が書かれていました。
激さんは「しっかり準備をしたほうが良い」という話をしつつ、準備したものがカチッとハマらなかったら臨機応変に切り替えるんですよね。
G:その通りでございます。
M:いつでも切り替えられるように、ある程度見込んで曲の準備をしていくのですか?
G:そうですね。「ウケなかったとき用」と「ウケたとき用」のプレイリストを用意しといたほうが良いです。
昔の自分は「お客さん全員がバカ湧きしてる」という体でミックスプレイリスト作っていたんですが、当然ハマらないですよね。
そんなシチュエーションはDJを10回やったところで1回もやって来ないので(笑)
M:そうなんだ(笑)
G:20回くらいやったら1回あるかな?って。
だから、ウケなかったとき用の「抑えの選手(曲)」を準備しておいたほうが、全然正しい方法だとは思います。
「激DJに訊く!稼げるDJ・呼ばれるDJになるためのメソッド」第3回は以下の記事で公開中!