• Interview

Creator's File Vol.14 - 激DJに訊く!稼げるDJ・呼ばれるDJになるためのメソッド(第1回)

sonoを使ってくださっているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画、早いもので14組目となりました。
今回は京都を中心に活躍し、noteで
『激DJ 構築の戦略のマガジンを執筆されたDJ激さんのご登場です!
noteのマガジン「
激DJ 構築の戦略」誕生秘話や、激さんが考える『DJ論』について、色々とお話を伺いました。
かなり詳しい内容となっているので、「激DJに訊く!稼げるDJ・呼ばれるDJになるためのメソッド」と題してシリーズにて記事をお届けいたします。
第1回目のメインテーマは、リズムとパターンの違いや楽曲のテクスチャーについて。「DJに必要な3つの軸」とは、一体どんなものなのでしょうか?

Mimy(以下 M):よろしくお願いします。

激(以下 G):はい、お願いします!

M:noteの記事を全て読みましたが、かなりのボリュームですね。

G:めっちゃありますね、ページだけでいくと1、2、3……17ページ!

M:やはり、すごい分量ですね!まずは、この記事を書こうと思ったきっかけについてお話しいただければと思います。
今までずっと長くDJをされてきた中で、なぜ今このタイミングでnoteに公開しようと思ったんですか?

上手くいかないDJ活動の中で見出した答え

激さんのnote記事:激DJ 構築の戦略

G:DJを始めて今19年目になるんですけど、15年間くらいは、今から考えたら「何でやってるんだ」と思うほど上手くいっていない時期でした。
僕が10代〜20代前半にやっていた『レア・グルーヴ』のDJは、音楽ジャンルとしては一般にはなかなか受け入れにくいもので。「それだけではダメだよね」というので、それから色々挑戦していったんです。
「うまくいってなかったことには全部理由があります」という内容をnoteにも書きましたが、

「それを求めて来る人がいるのか?」
「お客さんに強要してないか?」
「お客さんは味方ではない。冷静に判断している」

ということに気付けるようになるまでが僕のしくじりエピソードです。
「DJには間違いがない」ってよく言うじゃないですか。でも、本当は「間違いはあって、正解もある」んですよ。
皆んな、そこについてちゃんと触れずに「好きなことをやれば良い」と言ってくるので、それを分からない人は絶対に分からない。
選曲の考え方やメソッドというのはあるんですけど、もう少しその先の話までなかなかロジカルに出来ていないというのが多くて。
100点満点はないにしろ、平均的にDJで80点、90点を取る方法はあるんですよ。それが出来ていないと、やっぱウケるものもウケないので。
だから、例えば昔の自分みたいにすごくやる気はあるけど全然売れなくて「どうすれば良いんだ」と考えている人がもしいれば、僕の記事が役に立ったら良いなと思ってnoteに書きました。

M:実際に「激さんみたいなプレイをしたい」という方が周りにいるから書いたのでしょうか?

G:そういう方も周りにいなくはないんですけど、どちらかと言うとまだDJを始めて1年〜2年目くらいの子たちが多いので、そこに対しては逆にあのnoteはあんまり読まない方が良いかなと思っています。話が重たすぎるので。

M:なるほど(笑)

G:DJを始めたばかりの子たちは、まず「とりあえずDJが出来る」という部分を頑張るフェーズです。
その「当たり前」が出来た後で「どう展開するか」や「ストーリー構成を考える」という順番を踏まないと、いきなり僕のnoteを読んだら「うわ、DJ考えること多くない?」となると思うので。
だから、対象となる読者は「DJを3年以上やっていて売れてない人」だというイメージで作りました。

M:noteの記事は、幅広いジャンルのDJについて書いていらっしゃいますよね?

G:自分が主にDJするブラック・ミュージックやディスコ、あとはハウス、ベース・ミュージックなど、出来る範囲でカバーしているというのはあるんですが、例えばアニソンやレゲエなど色んなジャンルにも通じるお話をしていると思います。

DJにとっての音楽ジャンルの定義とは?

M:noteの記事を読み進めていくと、まず最初に楽曲のジャンルやアプローチといった内容が書いてあり、それ以降が本格的な部分という構成ですね。
いつもジャンル分けについて疑問に思うのですが、例えば「テクノ」と「ハウス」があり、更に「テックハウス」なんていうものもあったりします。DJをされる方々は、どのくらい厳密にジャンルを考えてプレイしているんでしょうか。
「今回はテックハウスのパーティーだからこの感じで行くよ」といって準備することはあると思うんです。でも実際のところ、どういうふうに区分けしているんですか?

G:はい、もう素晴らしい質問ですね!

M:ありがとうございます(笑)

G:僕はすごくジャンルにこだわってっているほうですが、どちらかと言うと、ジャンルについては「お話をする上での共通言語として、お互い持っている概念を話す」というイメージが強くて。
DJに於いてのジャンルというのは、単純に「リズムパターンの違い」だと考えてるんですよ。

参照:前提 DJとはアプローチの表現である-ダンスミュージック極論のジャンル分け① リズムパターン

G:楽曲のジャンルって、極論でいくと2パターンしかないと思っています。「ドン(チー)ドン(チー)ドン(チー)ドン(チー)」というリズムの四つ打ちと、「ズンチ ズンズンチー ズンチ ズンズンチー」というリズムのブレイクビーツですね。
四つ打ちが速くなっていけばハードベースやロシアンベースになり、遅くなっていけばレゲエになっていく。そして、ブレイクビーツが速くなればドラムンベースになり、遅くなるとヒップホップになっていく。最近はイーブン・キックのちょっと緩い感じのヒップホップもありますが、一般的な概念でいうヒップホップはそういう感じですよね。
ここでリズムのパターンを揃えていくことが、まず重要です。リズムのパターンをある程度揃えていかないと違和感が出てくるので。

DJに必要な3つの軸

G:ブレイクビーツも色んなジャンルがあったり、ハウスも「テックハウス」や「ディープハウス」があったりします。テクノとハウスは一般的にはキックの入れ方等で違うと言われていますが、そういう話についてもnoteの記事で書かせていただきました。

参照:前提 DJとはアプローチの表現である-ダンスミュージック極論のジャンル分け② テクスチャー/ 速さ

G:自分の中では、この話は音の「テクスチャー」という概念に分類しています。
わかりやすくいうと、テクスチャーとは音に「硬い印象」があるか「柔らかい印象」があるかの違いです。
このテクスチャーが近ければ近いほど、ミックスはしやすいというイメージなんですね。
DJをする上では「速さ」と「リズムパターン」と「テクスチャー」という3つの軸があり、このうちの2つが揃っていると、ミックスが出来るんですよ。

M:なるほど!2つ揃ってたら繋げられるんですか。

G:なので、リズムパターンとテクスチャーさえ合ってたらBPMは無視することができるんですよ。

M:そうなんですか?

G:まあ、強引に行くと駄目なので、ある程度方法は考えないといけないんですけど、あんまり違和感なく繋げられます。

M:そうなんですね。ということは、全然リズムが違ってもいけますか?

G:いけます!さっきの話で行くと、「テクスチャー」と「速さ」さえ合ってたら、ブレイクビーツと四つ打ちって、ジャンルを跨ぐことができるんですよ。

M:ああ、なるほど。
私もテクノのイベントに遊びに行ったとき、四つ打ちからいきなりブレイクビーツに変わって、「なんかリズム変わったけどめっちゃ格好いい!」と思いながらそのまま踊るという現象に遭遇したことがあり、それがまたすごく良かったんですよね。
その体験はまさしくそういうことだなと思うんですど。DJスキルとしては難しくはないということでしょうか?

G:難しくはないんですが、「ある程度安定させる」ことが大事です。
お客さんがフロアで踊るとき、ほとんどは「安定感を求める」のが楽しみなんですよね。

M:うんうん。

G:そして安定を求めつつ、自分の予想を裏切ることも実は期待しています。僕は「裏切りと安定」って呼んでるんですけど、そのバランスはすごく大事で。

参照:前提 DJとはアプローチの表現である-ダンスミュージック極論のジャンル分け② テクスチャー/ 速さ

G:同じBPMで「硬い→柔らかい→硬い→柔らかい」という曲順で繋がると、テクスチャーが散らかってしまって踊りにくい。
ある程度「硬い→硬い→硬い→硬い→硬い→柔らかい」という流れで曲を用意をしてあげたほうが、お客さんは安心して踊ってくれるし、さっき仰っていたようなテクノのイベントのときに「柔らかいテクスチャー」のタイミングでブレイク・ビーツに切り替わると、ブチ上がったりします。
そういう切り替えを作ることが、DJで仕掛るポイントとして狙っていける。
稀に、野生の勘で「もうそろそろブレイクビーツやろ!」みたいな感じで切り替える人もいますが。
四つ打ちで、みんながフラフラ踊ってきたタイミングでブレイクビーツをバァーン!と挿してやると「うおーっ!」って盛り上がることを期待して、DJはプレゼンテーションしている訳なので、やっぱり何も考えていないようでも狙っているとは思いますよ。

「激DJに訊く!稼げるDJ・呼ばれるDJになるためのメソッド」第2回は以下の記事で公開中!