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火星音楽通信 - 第3回:ジャズ脳 (part 2)

前回ジャズ脳ですとか言って、全然違う方向で話が進んでしまい、収拾がつかなくなって終わりましたが今回はそのpart2です。

前回映画の話を始めたら止まらなくなってしまったのですが、その続きからです。今回も全曲楽曲のリンク貼ってますのでよかったら聴いてみてください。

Paris, texas / ry cooder

まあ言わずと知れた、改めて紹介するまでもないといった名作映画のサントラなんですが、サントラとしても機能しているし、独立した音楽作品としても成立している稀有なサントラ盤かなと思います。ヴィム・ヴェンダース監督の映画で、大好きな映画でもあります。いわゆるロード・ムービーと言われているもので、この手の物語が好きです。放浪志向(放浪したことはないですが)、自身の旅行は擬似放浪的な感じで行っている感覚があります。映画も素晴らしいのでぜひ観てほしいです。

Now’s the time / Charlie Parker

無理やりというわけではありませんが、ジャズに戻ってきました。絶対に外す事ができないのがcharlie parkerです。アルバム的にはどれがいいか迷うところではありますが、最終的に1枚と言われたらverveレーベル期のこれかもしれません。絶頂期と言われている時期は過ぎてしまっていますが、なんと言ってもcharlie parkerのレコーディング・キャリアの中では抜群に音が良い録音になっています。また、charlie parkerの代表曲とも言える’confirmation’や’now’s the time‘も収録されているし、私自身が大好きな曲’kim’,’chi-chi‘など多数収録されていて、全く申し分ない聴き応えがあります。

Charlie Parker with strings / midnight jazz at Carnegie Hall

同じくverveレーベルからリリースされている本アルバムも大変素晴らしいです。ジャズにストリングスというとイージーリスニング的でダサいイメージもあるかもしれませんが、charlie parkerのビ・バップの感覚がそうした懸念を見事に打ち消してくれています。ストリングスも控えめでパーカーの演奏をオミットしていません。録音もモノラルなんですが、とても多彩で煌めきのある豊かな色を持っているような素晴らしい音色です。

先ほどまで映画の話をしていましたが、Charlie Parkerを主人公にした映画があります。

bird” a film by Clint Eastwood

Jazzの熱狂的なファンであるClint eastwood監督によるCharlie parkerの伝記映画です。破天荒な生き方、精神疾患や麻薬&アルコール中毒、金欠、ハードなツアーや家族の死など、はっきり言って多くの苦しみがcharlie parkerを取り囲んでいたのが分かるんですけど、音楽は楽天的で天才的なフレージングばかりで本当に才能ってこう言うものなんだなとまざまざと見せつけられる感じです。

映画もいいんですが、サウンドトラックも作られていて、実はテクノロジーを使って作られていて、charlie parkerのバンドで演奏された音源からparkerのパートだけを抜き出し、それに現代のミュージシャンが演奏をダビングして作られています。charlie parkerが現代に生きていたらこういうサウンドを鳴らしていたのかなと想像させてくれるとてもチャレンジングなサウンドトラックになっています。当時はマルチトラックなどないのでいっぺんに録られた音源からparkerの音だけを抜き出すのが非常に難しかっただろうと思われます。parkerの音だけ若干違和感のある音になっているのはそれが理由です。

サウンドトラックからは’laura(ローラ)‘。涙を流しながらこの曲を演奏するシーンがとても忘れられません。

しつこいけどさらにサントラもう1つ

Quadrophenia / 四重人格

Quadrophenia / the who

The whoが監修した映画で、もう一つの”tommy”の方はストーリーもちょっとメチャクチャでいかにもサイケデリック時代に作られた映画と思えるようなものでしたが、この”quadrophenia(四重人格)”は映画としてしっかり成立していて脚本もよく練られているように思います。イギリスのmodsのことを知らなければなんのことかわからない対立構図に思えるかもしれませんが、予備知識がなくても単純に青春映画としても観ることができるかと思います。modsは労働者階級の若者たちが稼いだ給料は全てオシャレや粋なことに注ぎ込む刹那的な生き方をしていました。modsはそういう若者の集団ですが、集団で暴れたりしていたのでギャングと同義的に扱われていました。映画はアマチュアをオーディションして集められた俳優で作られているのでとてもリアル。

余談。mods(第二世代)だったPaul wellerがイギリスで、日本から来たモッズという名前のロックグループを見て(リーゼントに革ジャンでmodsが嫌っていたrockersのスタイルなので)その格好と名前でライヴしたらイギリスでは客席からモノが飛んでくるから絶対にやめろとアドバイスしたとか(笑

Sean-N’os Nua / Sinéad O’Connor

先日亡くなったSinéad O’Connorのアルバム”sean n’os nua”です。この人はデビュー以来政治的な主張が強過ぎて(ステージとかでもエグいことやってた)本業が霞んでしまいましたが素晴らしいシンガーです。massive attackが2003年にリリースしたアルバム”100th window”でゲストシンガーとしてこのsineadが迎えられていたので久しぶりに思い出し、その1年前にリリースされたばかりの”sean-n’os nua”を聴いてみたところとても素晴らしかったのでそれ以来愛聴しています。内容は彼女のルーツでもあるらしきケルティックな音楽を取り入れたものとなっていて、牧歌的で、かつての刺々しさとは無縁の素朴な素晴らしさに溢れていました。全編素晴らしいので聴いてみてください。

‘Nothing Compares 2 U’ album from “I Do Not Want What I Haven’t Got” / Sinéad O’Connor

Sineadが特に有名になったのは確かprinceの楽曲である、’Nothing Compares 2 U’を歌ってからではないかと記憶しています。個人的にはprinceのversionが至高に思えますが。

Nothing Compares 2 U(live) / price

Princeのテイクは多分このライヴテイクしか発表されてないと思います。

Princeが出てきましたのでprinceさんから1枚紹介したいと思います。アルバムの枚数が恐ろしいほどたくさんあるのですごく迷いましたが

Sign O’ The Times / prince

ですかね。リズムボックスの音に最小限の楽器構成で聴かせるタイトル曲の’sign o the times’が至高ですかね。princeは本当にワーカホリックで絶えず音楽を作っていないといけない人間だったみたいで、ライヴ・パフォーマンスも手を抜かないあらゆる面でハードワーカーぶりを発揮していましたが、ハードなパフォーマンスのせいで使わざるを得なかった鎮痛剤の使用により亡くなってしまいました。michael jacksonもほぼ同様な理由で亡くなってしまったようで、実に残念なことです。

ここ数年。私の好きなミュージシャンがたくさん亡くなってしまって本当に悲しい限りです。前回といい、今回といい結構近年亡くなった方をたくさん取り上げていますね。

‘Danny boy’ EP from “yosogai” / Jeff beck

‘Danny boy’とか、耳タコもののスタンダードなんですけど、jeff beckとシンガーのImelda Mayが静と動を使いこなし、ものすごいパフォーマンスで心うち震わせてくれます。後半が圧巻なのでぜひ最後まで視聴してみてください。そのjeff beckさんも2023年に亡くなられたんですよね。

期せずして湿っぽくなってしまいました

さて第3回:ジャズ脳 (part 2)は以上です。エンディング・テーマは以下

‘Last train home'(album from “still life”) / pat methane group

最終列車のホーム、というタイトルですが、とても哀愁を誘う曲です。いい曲だなぁ、というよりは寂しさで胸がはち切れそうな感じです。まあオヤジが好きそうな曲ですよね。ではまた。

Otomizo Records

sappow.bandcamp.com

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YouTube : Otomizo Records

instagram : otomizo_records

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