• Interview

Creator's File Vol.22 - MACROMANCE

sonoを使っているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画、早くも第22回目となりました。今回は、現在東京のナイトシーンでジャズをはじめハウス、ソウル、アンビエント、時にはクラシックなどをプレイするMACROMANCE(マックロマンス)さんを特集します!
1980年代には単身渡英し、ロンドンを拠点にヨーロッパや北米でゴシック・ロック・バンド「Chiristian Death」のベーシストとして活動していたことでも知られるMACROMANCEさん。「複数の顔を持つカルト・ヒーロー」と呼ばれた彼が赤裸々に答えてくださった過去と現在地、そしてこの先のビジョンまで、存在感溢れるダンディーで素敵な素顔に迫ります。

ミュージシャンとしての長いキャリアからDJ活動への意外な変遷

mimy:実は私、MACROMANCEさんがsonoに登録された頃から「いつかインタビューしてみたい」と密かに狙っていたので、今回それがようやく実現してとても嬉しく思っています。
sonoの運営メンバーは勝手ながらMACROMANCEさんのことを「マックさん」と呼ばせてもらっているんですが、マックさんはかつて「Christian Death」のベーシストとして1980年代からご活躍されていたと伺っています。ミュージシャンとしてのキャリアもかなり長いと存じておりますが、DJとしてはどのくらい続けていらっしゃるのでしょうか。

MACROMANCE:ほぼ10年ですね。僕は今年の8月で60歳になるんですが、DJを本格的にやり始めたのは50歳の頃でした。

mimy:どのようなきっかけがあってDJを始められたのですか?

MACROMANCE:音楽プロデューサーで「S-KEN」っていう人がいるんですね。東京で1970年代後半頃にあった「東京ロッカーズ」というムーブメントを作った、アングラの重鎮のような人です。今も彼は活動されてますが、あるとき彼がプロデュースするアーティストのサポートDJの方が、本番直前に心臓発作で入院されてしまったことがあって。
S-KENから「誰か良いDJいない?」って相談されて、「うーん・・・」って言ってたら、「じゃあお前やれ」って急に無茶振りされたんです(笑)

mimy:それはかなり無茶振りですね(笑)

MACROMANCE:それまでDJをやったことはなかったんですけど、レコードは100枚くらい集めていたので、取り敢えず一回きりのつもりでやってみたんですよね。プレイの仕方も知らないからYouTubeとかで調べて。
そうしたら、たまたまその会場にいらっしゃった人たちが「すごく良いね!」って言ってくれて、そこから2回、3回と声がかかるようになり、気がついたら10年続けていました。だから、実は自分からDJをやろうと思ったことは一度もなかったんです。
ミュージシャン上がりの人あるあるなんだけど、最初はDJに対して「人の曲でプレイするなんて・・・」っていう偏見があったのが、やってみたら「全然違う」ということがよくわかったし、面白かった。むしろミュージシャンよりもDJのほうが僕には向いていたのかもしれない、とまで感じています。

DJ活動とイベント出演

mimy:マックさんはご自身でパーティーを主催されていらっしゃるのでしょうか?

MACROMANCE:今はもうほとんどやってないですね。DJは呼ばれていくことばかりです。

mimy:よくsonoでイベントを投稿してくださっているので、てっきり主催しているものだと思ったら、違うんですね。

MACROMANCE:あれは主催者が別にいらっしゃって。ただ、フライヤーのない小さなイベントもいっぱいあるので、告知のために主催者から許可を頂いて自分で画像を作ってイベント投稿しています。

mimy:レギュラーでご出演されているパーティーもありますよね。

MACROMANCE:六本木の「JUSTA COFFEE BAR」というお店でやっている「JUSTA ROMANCE」というパーティーは、レギュラーで月2回出演しています。
最近は他にも立て込んでいて、日本のジャズ界でも今特に勢いのあるバンド「TRI4TH」のメンバー2人とバリトンサックス奏者の合計3人が集まって去年の暮れに新しく始めたバンド「Solitary Circus」と縁があり、彼らのサポートDJをすることになりました。

Slash – Solitary Circus

MACROMANCE:彼らがやるのは変速なジャズで、ドラムとバリトンサックスとトランペットしかいないんだけど、めちゃくちゃ音が分厚くてしびれる演奏をする、僕好みのバンドなんです。
それが6月頃に彼らから「ライブでサポートDJしてくれませんか?」と声をかけてもらったので一回やってみたところ、バンドもお客さんも気に入ってくれて、Solitary Circusのライブでのサポートは年内にもう数本決まっています。
その他にも、まだ発表されていないものも含めて、いくつか出演が決まっているものがありますね。

mimy: あちこちで引っ張りだこですね!

MACROMANCE:コロナのときは僕がDJをしていた店がほぼ潰れてしまうなど、活動する場所が本当にゼロになっちゃったんですよ。「もうDJ辞めようかな」って思うくらいだったんだけど、今頃になって少し活動の場が増えてきました。

現代ジャズに感じる“ロック”

mimy:DJを始めた当初からジャズを基盤に置いたDJをされていらっしゃるんですか?

MACROMANCE:僕はもともとロックをやってきた人間ですが、10代でロックを聴いたときの「わぁ!」という感動が今のロックにはあんまり感じられなくて。でも、ジャズの中には「僕が思うロック」がある。だから、今は自分が聴くのもプレイするのも現代ジャズ、特にUKジャズですね。
UKはジャマイカからの移民が多くて、アフリカからの影響も強い。そこら辺のミクスチュア度合いがすごく好みだし、「The Clash」にしても「Public Image Ltd」にしても、みんなレゲエやダブの影響を受けていたじゃないですか。それと同じようなものを今のジャズに感じています。

Photo by Noah

MACROMANCE:僕は基本的にDJって、バーテンダーや皿洗いと同じように、お店に来たお客さんを喜ばせる役割のひとつだと思っています。
お客さんのために箱(会場)があって、イベントがあって、雇われて・・・その中で、自分が何をやるべきかに従う。
流したいのはUKジャズだけど、例えば六本木に遊びに来るような若い外国の人はドンツクドンツクした四つ打ちの曲が聴きたいだろうし、 1970年代の音楽は苦痛かもしれない。色んな人が来るので、誰に合わせるかを考えるのは難しいんですが、お客さんにある程度合わせたうえで、でもやっぱりその中でも自分寄りの選曲をするのが僕の基本的なスタンスです。
逆に、渋谷の「The Room」のようなお店でのイベントはお客さんもジャズを聴いている人が来るから、ぐちゃぐちゃのUKジャズをプレイしても喜んでくれるし、六本木では割とR&Bで繋いだり、ジャジーハウスで繋いでムードを作ったりしています。

音楽活動の分け方と今後の展望

mimy:マックさんは以前sonoのディスコグラフィーにもご自身の楽曲を投稿してくださっていましたが、トラックメイキングもされているのですね。
他にも「KOTA®」名義のオリジナルトラックを随時リリースされているということで、DJとしてもアーティストとしてもマルチな活躍をされている印象です。

MACROMANCE:はい。他にも「The Strike Breakers」や「The Liners From Sugary Saturn」といった複数のバンドでベースギターを担当して、緩く活動しています。「KOTA®」はソロ・アーティストとしての名義のものです。

MACROMANCE:年齢のことはあんまり言いたくないけど、これから先に活動できる時間を考えると、そんなに長くないじゃないですか。だから「どれかにフォーカスを絞って本当にやりたいことに集中していったほうが良いんじゃないか」という気もするんですが・・・やりたいことがありすぎて、ちょっと悩みどころですね。

mimy:そうですよね。どれもきっと面白いでしょうし。

MACROMANCE:それと同時に、やるからには「日本も含めた世界に向けてやっていたい」という目標があって。それは別にグラミーを取るとかではなくて良いんだけど(笑)
ニッチな世界でも良いけど、その中でも「トップのところで争いたい」「一番すごい人たちの中で切磋琢磨していたい」という想いがあります。
どこに行けばその頂点があるのか、今は自分の中で若干ぼやけていて。それが見えたら色々捨てて、そこに向かっていけるんでしょうけど。
今は思考錯誤をしながらやっていて、その中で一番「DJとしてのマックロマンス」に需要があるので、呼んでいただける限り一所懸命やっている感じですね。

DJとは“シャーマン”である

Photo by Secret City Walk

mimy:渋谷の「The Room」のように、そのお店のファンとして遊びに来る方の多い現場で自分をアピールするのは、やり甲斐もありつつ難しそうでもありますよね。そういった現場で「こういうふうにやったらハマった!」などの秘訣はありますか?

MACROMANCE:どうだろうね?「何か」が降ってきて、それがお客さんに繋がるとやっぱり嬉しいですよね。
ちょっと大袈裟なんだけど、僕の友達で「DJってシャーマンみたいだよね」って言った人がいて。
「シャーマン」って、神の声を聞いて、その神の声を自分を通して民に伝える役割じゃないですか。DJもそれに近いところがあって、自分が選曲してるというよりは大きな力に「次これ!」って言われてるような感じはする。

mimy:曲がどこからか降りてくるんですか?

MACROMANCE:「降りてくるゾーンに入る」じゃないけど、例えばレコードでDJをやるとしたら、物理的に100〜200枚くらいしか持っていけないじゃないですか。選んでる時点で「今日はコレだ」といったことが、どんなお客さんが来るのかわからないのに何となく決まっていて。
「なんとなく決まってるコレ」というものをプレイしたら、お客さんが喜んでくれて・・・みたいなことが、偶然では説明できないくらいすごくあってね。それが面白いというか。

mimy:それは毎回起きるのでしょうか?

MACROMANCE:(ゾーンに入るのは)毎回ではないですが、選ばされてる感じは常にありますね。
「たまたま置いたらそれが間違えてたのに良かった」とか、「A面と思っていたら実はB面をプレイしていて、でもそっちのほうが良かった」とかいうことは結構あるかもしれないです。だからそれがカチっとハマったときはすごく気持ち良いんだと思います。

海外での挑戦と失敗、そしてこれから

Photo by Secret City Walk

mimy:マックさんは、海外のイベントにもご出演されていらっしゃいますね。
2019年には「KOTA®」としてヨーロッパツアーの18都市でプレイしたり、その翌年の2020年にはポストパンク/ニューウェイヴの祭典「CRUEL WORLD FESTIVAL」(P.I.L、ブロンディー、モリッシー、ダムドなどが出演したことで話題となった)に日本人としては唯一のアーティストとして出演されるなど、ワールドワイドなご活躍は目を見張るばかりです。

MACROMANCE:最近はKOTA®名義のほうで、2年に1回くらい海外に行くことがあります。
ですが、去年はChristian Deathから派生したコネクションで「Wave Gotik Treffen」というゴスの巨大フェスに呼んでもらい、それが大コケしちゃって。

mimy:そのときに意気消沈して帰国されたのをツイートでお見かけしたので、「大丈夫かな?」って気になっていました。

MACROMANCE:あれは凹みましたね。ちょっと失敗しました。神の声が聞こえなかった(苦笑)

mimy:DJでのご出演だったのですか?

MACROMANCE:DJで行きました。そしたらたまたまChristian Deathも同じフェスに出ることが決まっていたんです。彼らとは今でも仲が良いので、現地で「一緒に何かやろうよ」ということになり、ゲストで彼らのバンドにベーシストとして参加もしました。でもそれはオプションで、メインはあくまでDJでの出演でしたね。
失敗については、色々と情報がうまく伝わっていなかったという言い訳もあるんだけど、結果的にフロアを盛り上げられなかったので、失ったものは大きいです。
実はこれが上手くいけば「アジアから来た無名の日本人DJ」である僕が毎年レギュラー枠を持てるという、異例中の異例になれる可能性もあったのですが、ちょっと狙いに行きすぎてしまい、完全に空回りしました(笑)

mimy:そうなんですね。「またリベンジしたい」というお気持ちは?

MACROMANCE:あります!リベンジは絶対しますよ。このままでは終わらせない。
今は具体的なルートがないんだけど、やっぱり海外に向けてやってきたいと思っています。体が向こう(海外)に行っちゃえばどうにかなる気がするんですけど。10代の時にそうだったように、行けば何かしらやる環境はあるだろうし。
向こうのオーディエンスは日本よりもっとダイレクトなので、気に入らなければ去年僕が失敗したときのようにそっぽを向くけど、気に入ったらすぐにリアクションしてくれるし、知らないDJやアーティストでもいきなり盛り上がる。だから、「どこかのタイミングでまた向こうに行かなきゃいけないな」と思っています。

mimy:それではマックさんのこれからの動きも目が離せないですね!
直近で何か新しい挑戦はありますか?

MACROMANCE:実は今、ジャズのトロンボーンプレイヤーである湯浅佳代子さんと一緒に作っている曲があるんです。
マニアックなジャズのアーティストばかりをリリースする「BIG TOP SESSIONS」というレーベルから、僕と湯浅佳代子さんが共同で作っている曲がもうすぐ配信リリースされるので、絶賛バタバタと準備しているところです。こちらも是非お楽しみに!

MACROMANCEさん公式サイト・SNS情報: https://linktr.ee/macromance

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