• Interview

Creator's File Vol.16 - The Jazztechnoise DJ.Plugmatics

sonoを使っているアーティストやDJの皆さんへのインタビュー企画、3回にわたってsono主催「オリジナルソング・コンテスト」受賞者の皆様に詳しくお伺いした内容をお届けしています!
Vol.16は特別賞を受賞したThe Jazztechnoise DJ.Plugmaticsさんにインタビューをさせていただきました。

mimy(以下M): 今回のご応募作品は中原中也の詩をポエトリーリーディングとして使っていらっしゃいますが、どういう経緯でこの形にしたのでしょうか?

The Jazztechnoise DJ.Plugmatics(以下P): sonoは去年の2月頃に「VRの音楽プラットフォームを作ろうとしている」ということをnoteの記事で知って、私自身もVRに興味があるもので「何か一緒に出来ることはないか」と思いながら応援していたのですが、今回「歌ものコンテスト」が開催されるのを目にして、応募することにしてみました。
ただ、私が今まで続けてきた音楽活動は、基本的には歌ものではなく即興演奏なんです。
そこで「ポエトリーリーディング」なら自分のスタイルにマッチしそうだと考えて、今回新しい試みにチャレンジしました。
誰かの詩を使うにあたっては著作権の問題がどうしても発生するので、中でも「既に著作権が切れているもの」という観点から中原中也の作品を選ばせていただき、元々作っていた音源にエフェクトをかけながら乗せた、という感じです。

M: 著作権が切れている詩は数あれど、その中でも中原中也を選んだことには何か理由があるのですか?

P: 中原中也の作品はもちろん以前から読んでいて、当時の時代背景が今の時代に重なるところがあるように感じています。
中原中也が活躍していたのは今よりもっと国家権力が強い時代でしたが、中原中也はそういった権力に対して戦いを挑む姿勢があり、そこに魅力があるんですよね。
中原中也の「個人が国家権力に対して負けてはいけないんだ」というメッセージは、今の時代にも同じことが言えると思うので、彼の作品を選びました。

M: そうなんですね。Plugmaticsさんはclusterでもライブをしていらっしゃいますが、こうしたいわゆるメタバースと呼ばれるサービスが出てくる時代なのに何故音楽の世界は「大手に見出されて有名になった人だけが成功する」という既存の枠組みに捉われて抜け出せないのかな?というふうに私は考えながらsonoを運営しています。
多様な人がいる世の中、これだけインターネットが発達して自分の力で色んなことを実現できる時代なのだから、「今までどおりの世界線から外れたところでやっていきたい」という想いがsonoの根底にあるんですよね。
「ダダイストが大砲だのに」はsonoのこうしたビジョンに重なる部分があるということで受賞作品として選ばせていただきました。
今回のコンテストには「sonoをイメージした楽曲」というテーマがあったので、まさにちゃんとイメージしてくださってとても嬉しいです!

P: ありがとうございます。
音楽メディアが世の中に出てきた時、かつてレコードのシングル版に収録できたのは4分程度の曲でしたね。
それが配信の時代になった今でも続いていて、シングルソングは4分程度というのが一般化しているのには、なにか異論は唱えたいかな、という気持ちはあります。

M: 楽曲制作はどのような形で行っていますか?

P: 基本的にはAbletonLiveを使っています。
AbletonLiveはセッションビューがすごく便利で、いくつかリズムパターンを縦に並べて8小節ずつ入れておくと、それをランダムに順番に演奏してくれる機能があるんですね。
そのPC側のランダム演奏に合わせて、少し古い機材ですがKORGのカオシレーターやカオスパッドだったり、ベースやシンセだったりと、音を重ねていくとそれが第2段階です。
さらに第3段階では、ギター的なサウンドやエレクトリックトランペットを重ねて演奏します。
基本的にはテクノが好きなんですが、実はエレクトリックファンク時代のマイルス・デイビスがもう大好物なんですよ。
YAMAHAが出していた「イージートランペット」というガジェットの楽器がありまして。元々子供向けのおもちゃなんですが、MIDIで演奏できるトランペットなんです。
そういったものを使う他に、ピアノやオルガン等のサウンドはiPadで重ねています。こうなるともう、DTMーーデスクトップミュージックという言葉自体が古くなるような時代になってきていますね。

The Jazztechnoise DJ.PlugmaticsさんのDTMデスク周り。カオシレーターやイージートランペットなど、今回のインタビューの中で登場した使用機材も写っています。

M: PlugmaticsさんはMixcloudにも楽曲やclusterでのライブ音源をアップされていらっしゃいますね。今までの音楽活動や、今どんなことをしてるかをお聞かせください。

P: 高校生の頃はバンドブームの時代で、ちょっとしたバンド活動をしていました。
それからしばらく音楽活動から離れていたものの、30代後半からインターネットでDJミックス的なものをアップするようになり、「やはり曲も自分で作ってみよう」と思って始めたのが最初です。
当時はバンドミュージック的なものをDTMで作っていたんですが、その後もう少しクラブミュージック的なサウンドに移っていきました。
音楽と同調するような映像も一緒に上げたりしているうちに、4〜5年前にVRとかメタバースというものが出てきたので、自分のアバターを作って、アバターを動かして演奏しながら同時に
ビデオにして、TwitchやYouTubeにアップする・・・という活動を始めて、今も続けています。

M: バンドのようなサウンドからクラブミュージックに寄っていったというのは、聴いている音楽の趣味が変わったのですか?

P: 私はYMO世代で、クラフトワークやサイケデリック時代のビートルズも自分のベースにあると思います。
中学生の頃にYMOの音楽に衝撃を受けて、それから「この音楽をやりたい」というのは常にありました。
でも、当時は音楽機材を揃えるのに何十万もかかっていた時代だったので手を出せず、中高生の持っているお金で買えるギターやベースから始めました。
大学生になって以降はしばらく音楽活動から離れてたのですが、ある程度社会人になったところでPCを使って音楽を自分で作れるということを知り、クラブ通いもするようになっていたのでテクノの方向に流れていったという感じです。

M: お話を伺っていると、Plugmaticsさんはテクノロジーの変遷と共にずっと新しい技術をキャッチアップしていらっしゃるのだと感じます。
YouTube配信やバーチャル等以外に、リアルの場でのライブはされていらっしゃいますか?

P: 以前やっていたことはあるんですが、最近はリアルから外れてWebでの活動を中心にしています。
顔を出すのにちょっと抵抗があるというのもあるのですが、アバターという「もうひとりの自分」を得られるようになったのが大きいです。
「私でありつつ私ではない」、そして同時に「私ではないけれども私である」という存在を、この5年くらいで人類は初めて手にしたのだと思うんですよね。
ちょっと大げさに言えば、アバターとは人間を拡張するものであるというか・・・。
なんでしょう、今まで「アイデンティティは1つであるべきだ」「アイデンティティを確立しろ」という教育を受けてきたけれども、それが複数あっても全然問題ではないんじゃないのか。むしろ、複数あったほうが良いのではないか?という時代に入ったのかもしれません。

お知らせ

The Jazztechnoise DJ.Plugmaticsさんはメタバースプラットフォーム「cluster」のワールド「クラブ別世界」にてライブ活動を行っています!こちらも是非、チェックされてみてくださいね。

「クラブ別世界」

楽曲情報

The Jazztechnoise (DJ.Plugmatics) / ダダイストが大砲だのに(中原中也)
Release Date: 2025.04.10
BPM: 115
Key: G minor

Bandcampで購入する / レーベルサイトで購入する

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