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DJバーのススメ:Vol.01 NOMATA - 未来のJazz Kissa - (福岡)

クラブに行くのはハードルが高いけれど、音楽は大好き。そんな方にイチ押しなのが、ミュージックバーやDJバーと呼ばれるお店です。
一人でふらっと気軽に寄っていっても良し、友人同士で飲みに行く感覚で遊びに行っても良し。クラブミュージックの流れる中、ゆったりとお酒やお喋りを楽しめる大人の空間・DJバーの魅力について、お薦めのお店を紹介しながらお伝えします!

「DJバーのススメ」特集の第一回は、福岡の中心部からほど近い人気のお洒落エリア・薬院に店舗を構えるミュージックバー「NOMATA」にスポットを当てて、店主の野俣さんからお話を伺いました。

NOMATAを始められた経緯などをお聞かせください。

NOMATA店主の野俣さん。バーカウンターの奥から、いつもソフトな笑顔で迎えてくださいます。

野俣:
NOMATAはオープンしてそろそろ4年半になります。
僕自身は、仕事として飲食店などに携わりつつ20代の頃からDJをやっていて、自分でパーティーを開くということをずっと続けてきました。
そのように長くDJをしていると、年齢とともに周りの皆さんも結婚するなど色んな変化が起き、段々とパーティーに来づらくなっているという状況があったんです。

僕は音楽が好きで、来ていただいた方に喜んでもらえる環境を作り込むことをすごく大事にしてきたんですけど、ある瞬間「これって僕がやりたいことの押し売りになってるんじゃないかな」と感じたことがあって。
それならば、逆に周りの皆さんが遊びに来やすい空間を作ったほうが良いのではと思ったのが、お店を始めたきっかけです。

例えば家庭を持った方やそんなにクラブに通い慣れていない方でも、飲食店なら行きやすいという部分はありますよね。
ミュージックバーをやることで、昔からの友人・知人やお世話になった皆さんとまた再会できるんじゃないかと思っています。

NOMATAではクラブジャズ界で有名なアーティストやDJの方のイベントも数多く開催されていますね。

今までに数々の名だたるアーティストやDJがプレイしてきたNOMATAのDJブース。

野俣:
そうですね。Kyoto Jazz Massiveの沖野修也さん・沖野好洋さんや、須永辰緒さん、松浦俊夫さん、DJ Kawasakiさん、Jazztronikの野崎良太さん、SOIL&”PIMP”SESSIONSのSHACHO、FPMの田中さん等々、今までたくさんのアーティストやDJの方のサポートをさせていただいてきたので、そういった皆さんと信頼関係を築けていることもあり、連絡を取り合う中でブッキングを行っています。

世界的なトレンドとしてミュージックバーのような場所でパーティーをする流れがありますが、日本では今クラブシーンの大きい箱がどんどんなくなり、逆にミュージックバーが増えていっています。その潮流にちょうど嵌ったというか、良いタイミングでお店を開いたことで、素晴らしいアーティストやDJの皆さんを招いてパーティーを開催することができてますね。

– ミュージックバーを経営するに当たって、どんな空間を作っていきたいと考えていますか?

温もりを感じさせる灯りの漏れる白壁の建物の、ロゴの描かれたブラックボードを目印に2階へと登った先にNOMATAの店舗がある。

野俣:
NOMATAは店内に入るとすぐにDJブースが見える作りになっているんですが、音楽が好きな20代〜30代の新しい世代の方たちに使ってもらうことで、彼らが興味を持ってDJを始めたり、お客さんとの親交を深められたりするような場所を作らないといけないんじゃないかな、という気持ちでいます。

実際、音楽は好きだけどレコードを聴くだけだった若いお客さんに、曲の繋ぎ方やどうやって流れを作るかというところから僕が教えることで、彼らがDJとなりパーティーを主催するようになっていっています。
そうすると今度は彼らの友人や後輩がお店に集まって、また音楽に興味を持ち始めるという循環が起きるんです。

大音量のクラブでは周りのお客さんと交って会話するのが難しい部分もあるけど、NOMATAはあえて会話ができるくらいの音量にしているので、若い世代の方たちと30代〜40代の常連の皆さんが話しながらお酒を一緒に飲んで楽しむ場面もよく目にします。そんな場が生まれることを大事にしたいですね。

僕はアパレル関係の仕事もしていたし、建築デザイン系の友人も多いので、ファッションなど色んなカルチャーをミックスさせるような空間を目指しています。

また、音楽好きな人だけの店にもしたくないので、ナチュールワイン(自然派ワイン)の専門店としてワインも100種類以上揃えています。これだけナチュールワインのあるDJバーは日本でも多分数軒しかないので、そういう部分で間口も広げています。

音楽に詳しくなくても「こういう音楽がかかっている場所が好き」と思ってもらえたらそれが一番だし、「お酒が美味しかった」と言ってもらえるのでも良いし。僕自身がそんなお店に行きたいから、そう思ってもらえるように心がけていますね。

– NOMATAで飲むことのできるナチュールワインについても詳しく教えてもらえると嬉しいです。

ミュージックバーとしてだけではなくワインバーとしても人気のNOMATAにはナチュールワインも豊富に取り揃えられている。

野俣:
白ワインだと割と飲みやすいので、入口としてはすごく良いですね。
それから、アンバーワインというのがお薦めです。オレンジワインとも呼ばれるんですが、白ブドウを赤ワインの製法で皮と一緒に絞り出すと、皮の色が着色してちょっとオレンジ色になるんです。
ワインではヴィンテージのものが重宝されるように、年代が大きく左右する傾向があります。もちろんナチュールワインもそういうことはあるんですけど、ナチュールワインの場合は作り手が重要になってきます。例えるならば音楽レーベルみたいなもので、「あの作り手によるワイン」ということで人気が出るということがよくあります。

飲みごろも、早いものはもう本当にすぐに飲めるのがナチュールワインの特徴ですね。
ナチュールワイン(自然派ワイン)とは添加物や保存料を極力使わない限りなく自然に作ったワインの事を総称します。
ワインというとハードルが高いように思われる方も多いけど、ナチュールワインになると一気に飲みやすくなるんです。低アルコールのものも結構あって、基本は13度くらいですが、10%を切るものもありますよ。

– 野俣さんの最近お薦めの音楽や、お店でどんな音楽を流しているのかを教えてください。

NOMATAの店内。バーカウンターを通り抜けた奥には、ゆったりと座れるソファーのテーブル席が設置されている。

野俣:
基本的に、ジャズが好きなんです。
最近のもので言えば、Yussef Dayes(ユセフ・デイズ)というアーティストの新しいアルバムが最高ですね。

平日は、僕が好きな音楽をかけながら営業していることが多いです。週末はその日のDJの方によって客層が変わりますが、平日は僕の30年近くDJを続けて集めてきたレコードストックの中で、そのときに何となく良いなと思うものをかけながら営業しています。

旅先でジャズ喫茶に行くのが好きなんですけど、そこのマスターと仲良くなって色んなレコードを聴かせてもらった思い出もたくさんあるんです。
僕の場合はクラブジャズから入っているから、NOMATAは「未来のJazz Kissa」を目指していますね。ジャズと一口に言っても、ソウルやファンクっぽいものからブラジルなど色々あるし、季節やその日の客層に合わせて幅広くチョイスするようにしてます。

やっぱり僕自身も色んな音楽を聴くし、お店に来る皆さんも色んな音楽が好きだから、何かのジャンルに絞ることはしたくないんですよね。だから、たまにはハウスやヒップホップのイベントもするようにしていて。
でもDJさんたちのほうも、うちのカラーに少しチャンネルを合わせてくれるので、NOMATAというお店の雰囲気を守りつつ色んなものを提供できたらな、と思っています。

編集後記

「良いパーティーがあるからクラブに行こうよ」と友人を誘っても「音楽は好きだけどクラブ行ったことないし」と言われることがよくあるんですが、DJバーだったら音楽だけでなくお酒やお食事をいただきながら会話も楽しめるので誘いやすいと思い、「DJバーのススメ」という特集を始めました。

私が福岡在住である都合上「まずは福岡のお店から」ということで、今回は真っ先にNOMATAを取材させていただきました。
NOMATAは立地の良さもさることながら店内の雰囲気や流れる音楽、そしてお酒の美味しさを含めて全てが上質な大人の空間となっています。
こういう場所が福岡のような地方都市にあるのは本当にありがたいし、出張や旅行などで福岡を訪れる方にも是非お薦めしたいお店のひとつです。

もちろん、他にも素敵なお店は全国各地にたくさんあるはず!というわけで、今後もまた機会を見つけてご紹介させていただければと思います。

店舗情報

ワインバー NOMATA – 未来のJazz Kissa –
所在地:〒810-0022 福岡市中央区薬院2-17-26 JUNビル2F
電話番号:080-3953-3537
営業時間:月〜土 20:00-2:00
定休日:日曜
instagram:https://www.instagram.com/nomata_bar/

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