レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』 新作小説『映画少年マルガリータ』にていよいよ来週から行商ツアーに繰り出す流浪の作家、志田一穂がご案内します。
さて今回は、ラロ・シフリンを改めてフィーチャーさせていただきたいのですね。ラロさまと言えば前回ご紹介した通り、あの傑作『エクソシスト』(1973)の音楽、を…作ったにも関わらず傍若無人監督ウィリアム・フリードキンによってすべてボツにされてしまった!という、なんとも可哀そうな方ではありますが、その不名誉を挽回するべく、しっかりと、いかに素晴らしい実績と業績を持った作曲家であるかということを、改めて紹介したいのであります。

さて、ラロさまはそもそもジャズ・ミュージシャンなんですね。とっかかりはピアノ奏者でしたが、生まれがアルゼンチンのブエノスアイレスなので、もうハナっからラテン魂が注入されているミュージシャンなのです。ですからラテン・ジャズのアルバムもかなりリリースしているという、そういう意味ではただの映画音楽作曲家ではないというところが重要ポイントとしてあるわけです。まぁルーツがジャズな映画音楽コンポーザー、多いですよね。
ですから、ジャズがベースにあるラロさまのサントラ・オリジナル楽曲はとにかくノリのいい名曲がたくさんありまして、まずご紹介したいのが『ダーティー・ハリー』シリーズなんです。

パート1(1971), 2(1973)の、70年代前半におけるサンフランシスコが舞台のあの空気感。乾いていて、だけど人間くさい、それでいて一触即発な緊張感。そんなサウンドを、ラロさまはジャズを母体に置いて、スリリングかつクールに奏であげております。
パート3(1976)は『ワイルドバンチ』(1969)や『わらの犬』(1971)の音楽を手がけてきたジェリー・フィールディングにその座を譲りましたが、80年代となってリニューアルしたダーティー・ハリーが活躍するパート4(1983)でラロさま戦線復帰。

打ち込みサウンドも駆使したり、さらにパート5(1988)でも継続登板して、やはりデジタルビートも踏襲しつつ、一方では原点回帰的にジャジーな楽曲をフュージョン・テイストでアレンジしたり。来るべく90年代という新しい時代への助走とも言える、またまた新しいハリー・サウンドをアピールしてくれてファンたちを喜ばせたという、そんな武勇伝があったりするのですね。
そう、ラロさまはとにかく時代時代で新しい音楽への探求を怠らない戦う作曲家なのでした。その探求心がかつてスパークしたのがあのブルース・リー主演作『燃えよドラゴン』(1973)です。

当時開発目覚ましいシンセサイザーを大胆に映画音楽に取り入れ、あえてスペイシーなサウンドでアジアのオリエンタリズムを表現。カンフー・アクションという未知なるバトルへゆらぎの音色を用いて誘わせるという、強烈なインパクトのテーマ曲を聴かせてくれたのです。
80年代リアルタイム、青春丸刈りストの志田なんかにしてみれば、このシンセの音なんてもはやフツーに聴き入れていたわけなので、当初「これが映画音楽お初の一つ、シンセサウンドだ!」、なんてことを言われても、まぁシンセですよね、使ってますよねハイハイ、としか思わなかったのですが、そんな時代背景を理解して映画を観てみると、この『燃えよドラゴン』(1973)という作品は確かに当時からしてみたら相当強烈な印象を劇場で振りまいていたのではと、改めて納得してしまうのです。

あと、そんなニュー・サウンドがいまだにブルース・リーの「アチョ~!」の掛け声とともに、戦いの定番楽曲=ライトモチーフになっているってことがやっぱり素晴らしいですよね。それぐらいの楽曲を、ラロさまは当時からしっかりと提示していたということもわかるわけです。奇しくも同1973年に公開されたのが例の『エクソシスト』なわけですが、楽曲的軍配は間違いなく語り継がれる名曲を伴った『燃えよドラゴン』にあがるのではないでしょうか。

ラロさまの楽曲を使用せず、マイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」(1973)で補完したフリードキン監督も、一方ではやはり恐怖の定番曲として見事マッチさせたわけですから、その評価はもちろん高いと思うのです。が…、やっぱりサントラ・ファンとしては、既成の引用曲よりも、オリジナル第一!なんですよねぇ…。だからこそ『燃えよドラゴン』のテーマ曲の希少性は、はかり知れないものがあると思っています。
そして極めつけはテレビシリーズ『スパイ大作戦』(1966~)のテーマですね。

志田は音楽的用語はまったく疎いのですが、調べてみるとこのテーマ曲の独特なリズムは4分の5拍子ということらしく、要は5つの拍のうち、後の2拍がスキップして無理くり4ビートに乗っかるという(わからんですね笑)、つまりこれハード・ジャズならではの前のめりなリズムってことじゃなかろうかと。まさにスパイ大作戦、不可能なミッションに戦い挑んでいくスリリングなリズムがばっちり表現された名曲―ではないかと思うのです。
リメイク・シリーズがスタートした1996年『ミッション:インポッシブル』で何が嬉しかったかって、ちゃんとこのテーマ曲が再び使われていたってことですよ。まぁこれを使わないでどうするんだと言われるかもしれませんが、志田が指摘しているのはそんな単純なことではなくてですね、テーマ曲も映画本編同様、ちゃんとリニューアルされていたから嬉しかった、ということなんですね。リメイク版第一作『ミッション:インポッシブル』は、ロックバンドU2のベース、アダム・クレイトンと、ドラムのラリー・ミューレンJr.。彼らの二人名義ユニットによるパワフルなリニューアル・バージョンなのです。

これは劇場で爆音で聴いたときはマジ震えました。もともとのラロさまのテーマ曲メロディーはしっかり活かしつつ、それを取り囲むリズム・サウンドの方を強化させてまったく新規で響いていくるという、そんな楽曲として蘇らせたのです。これはなかなかの職人技でございました。さすがU2の鉄壁のリズム隊であります。
その後も7作に渡るシリーズとして人気を博していく『ミッション:インポッシブル』リメイク群ですが、もちろんテーマ曲が必ずフィーチャーされ、その作品のテイストごとにアレンジされていくので、毎度それの聴き比べも楽しみになっていきましたね。

シリーズ第二弾『M:I-2』(2000)は監督がブライアン・デ・パルマ(『キャリー』1976『殺しのドレス』1980)からジョン・ウー(『男たちの挽歌』1986『フェイス/オフ』1997)になったことでより男気な世界にシフトチェンジ。ブレイクビーツやトランスのサウンドを取り入れたブライアン・トランソー(BT)を音楽担当で取り入れたり、テーマ曲はメタルとラップを融合させたリンプ・ビズキットを起用してカバーさせるなど(これフロアでかけるとブチあがります…!)、ゼロ年代という新世紀突入時に相応しい、攻めのサントラで映画自体を盛り上げておりました。
2011年の『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』から、最新作で現在公開中の『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』(2025)に至る連作では、ストーリー自体がとても濃厚な造りになっていき、それに伴いサントラもオーケストレーションを基調とした荘厳なバージョンにチェンジしていったんですね。

これらもまたかなり聴きごたえのあるテーマ曲ばかりなので、是非聴き比べチェックしてほしいです。これらのアレンジを担当した音楽担当たちは、マイケル・ジアッチーノ(『Mr.インクレディブル』2004 『スパイダーマン ホームカミング』2017)や、ジョー・クレイマー(『アウトロー』2013)、ローン・バルフ(『ターミネーター:新起動/ジェニシス』2015 『グランツーリスモ』2023)など、次世代ムービーコンポーザーとして注目されるメンツばかり。こうしラロさまが創り上げた名テーマ曲は、時代を越えてどんどん進化していくという永遠の命を手に入れていったわけですね。
もちろんそのような楽曲は他にもあって、007シリーズの「ジェームズ・ボンドのテーマ」を作曲/アレンジしたモンティ・ノーマン/ジョン・バリーもそうですし、

ターミネーター・シリーズはブラッド・フィーデルのテーマ曲もすっかりお馴染み。スター・ウォーズ・シリーズのテーマ曲、天下のジョン・ウィリアムズだってそうです(この方は『ジュラシック・パーク』や『インディ・ジョーンズ』、『ハリーポッター』の各シリーズのテーマ曲だってありますしね、おぉスゴイ)。
こうして歴代聴きつがれている楽曲と作曲家を確認すると、いかに強烈な名曲、テーマ曲を生み出されているかがわかります。やっぱりその映画に対しての貢献度を、もっともっと賞賛すべきなのだとも思いますね。今回はラロさまをフィーチャーしてどうだフリードキン凄いだろ!などとフィーチャーしましたが、まだまだいらっしゃいますからね、映画音楽の名コンポーザーたち。そうした方々、ことあるごとに持ち上げていきたいと思います。
というわけで、次回もカッキンで!
志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」(金曜23時)もよろしく。