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このサントラ、ちょっと、レア。第16回 時代が時代だったから仕方ないサントラな件

レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』自称暴れん坊映画将軍の志田一穂がご案内してまいります。

さて、今回はすべて日本映画なんですね。掲題の「仕方ないサントラ」とはあまりにも酷いネーミングですが、ちゃんと前段で「時代が時代だったから」と名付けてあるわけで、すべて時代のせいにしてしまえる、それが今回紹介するサントラたちなのです。何を言っているのかわからないですよね。紹介しながら説明しましょう。

『なんとなくクリスタル』1981 監督/松原信吾

文藝賞受賞、田中康夫原作小説の映画化作品で、80年代ナウな時代を象徴するかのような新時代オシャレ系タイトルが当時流行語にもなった話題作です。とは言え映画はコケました。ブームに乗ってすぐに映画化するものって概してズッコケるんですよね。森田芳光の『キッチン』(原作/吉本ばなな)なんて例外もありましたが。さておきこの映画、いまだDVDはおろかビデオにもなっておりません。なぜでしょうか?原因は本作のサントラにありました。下記をご覧ください。こちらすべてが洋楽曲なんですね(きた~)。

I Go Crazy ポール・デイヴィス

Call Me ランディ・ヴァンウォーマー

99 TOTO

Young Girls アイズレー・ブラザーズ

We Are All Alone ボズ・スキャッグス

Tell Me That You Love Me スティーヴ・ギブ

The Old Songs デヴィッド・ポメランツ

You Can Have Me Anytime~トワイライト・ハイウェイ ボズ・スキャッグス

Seeing You (For The First Time ジム・メッシーナ

Moonlight In Vermont ウィリー・ネルソン

見事ですよね、このラインアップ。いやわかるんですよ、1981年の時代を象徴するこのAOR軍団を選曲して散りばめ、若者たちのライフ・スタイルを音楽で演出したってことは。だけど映画の上映はいいけど、この時代、まだビデオ化という二次利用ビジネスが確立されていなかったので、楽曲の権利処理を改めてやらないと(要するに追加使用金額を支払わないと)、ビデオ化も、その後のDVDやBlu-rayも、あと現在では配信とか、海外販売とか、そういうことが一切出来ないことになるんですよ。

この連載でもたびたびこうした件は指摘しておりまして、例えば第4回の「使用料高額でもやり方一つでリスペクトな件」では、楽曲使用における権利の複雑さを説明したりとか、第6回の「サントラからレアAORを探し出した件」では、同様に洋楽曲を使用して未ビデオ化の『限りなく透明に近いブルー』(1979 原作/監督 村上龍)を取り上げたりとか。問題は権利処理がとても難しい洋楽曲の使用、その一言に尽きます。特にビデオ時代到来前の80年代初期あたりまでの邦画作品がその犠牲になっているんですね。ビデオ?なにそれ?って時代。まだ見ぬ新たなハード&ソフトだから、意識的計画的に無下にしているわけではなく、権利処理なんてしてません、してるわけがない、だから仕方ないんです、ということなのです。

とは言え本作、ここまでAORの人気曲をラインアップできるのは逆に凄くて、どうやってこんなに揃えたんや…とよくよく映画のクレジットを確認すると、なんだ製作に当時のCBSソニーがガッツリ入っているじゃないですか。レコード会社主導の作品って、自分たちが原盤を持っている楽曲はある程度ストレートに使用できるんですよね(もちろん著作権=出版権の許諾は必要)。そういう意味で映画製作としてはうまい仕組みでうまいことやったなと言える作品ではあります。で、結局次から紹介する作品たちも同様の仕組みなんですね。

『バローギャングBC』1985 監督/和泉聖治

シブがき隊の初主演作の本作、サントラはやはりCBSソニーが原盤を持っている洋楽曲で構成されていて、製作も同社。どうやらこの作品からソニー・ミュージックエンタテインメントグループとしての製作映画シリーズを本格的に始動していこうとしていたらしいのですが、はてさて実際続いていたのかどうか…。とにかくシブがき隊のイメージとはかけ離れた、しかしある意味シブい楽曲たちがこちら。

Change Of Tides リサ・ネムゾ

Telephone Mama ガゼボ

You Know Me Well~恋のはじまり ローマン・ホリデイ

New Orleans ジョーン・ジェット&ブラックハーツ

DJ In My Life アニー ※劇中主題歌でシブがき隊もカバー歌唱

One More Night ビリー・ランキン

The More You Live, The More You Love~星空の恋 フロック・オブ・シーガルズ

Picture Show ムービング・ピクチャーズ

Cherish クール&ザ・ギャング

Steal The Night カレン・カモーン

凄いですね。なかなかの選曲ですよ。なんでガゼボなのに雨音ショパンじゃないんだとか、ロマホリならハリキリボーイしかないだろうとか、まぁいろいろツッコミどころ満載なんですが、やはりこちらもよくこんなにマニアックに集めて使いましたなと、多少なりとも評価しちゃうレア・サントラなのです。(シブがき隊もCBSソニー専属だったんですね) で、こちらの映画はなんとビデオ化されているんです。1985年と言えばもうビデオ全盛期。であればビデオソフト化まではしっかりと楽曲契約していたんでしょうね。いや、してましたよね?(笑)としつこく確認したいところではありますが…。恐らくその後出てくるDVDについてはまだ時代が追いついていなかったということで、当然未DVD化であります。下写真は封入特典の映画ポスターとライナーノーツに掲載された楽曲使用アーティストたち。

『波の数だけ抱きしめて』1991 監督/馬場康夫

最後はこちら、ホイチョイ・プロダクション製作の90年代トレンディ―・ムービーですね。90年代になってもサントラでそんなに無茶したのか?という、なかなかな挑戦的作品、それがこの “波数(ナミカズ)” なんですね。これ、湘南ビーチFM開局アニバーサリー記念で許諾をとって、2022年にホール上映もさせていただきました。最初製作元のフジテレビからはてっきりノーと言われると思っていたんです。だってこれもサントラが見事にソニーの洋楽音源たちでしたから。それにDVDにもなっていないし、多分通例ごととしてVHSで止まっていて、またまた権利処理問題でNGなんだろうな~と思っていたら、なんとゴーサインが出たじゃありませんか。ちょうどこのタイミングで楽曲の追加処理をし、遂にDVD発売にこぎつけたというんですからまぁ驚きました。というかまさにグッドタイミング。1991年の公開からほぼ30年の時を経て、奇跡的に二次利用全権利クリアが実現した、またとない機会だったんですね。上映イベント時にゲスト登壇していただいた監督の馬場康夫氏曰く、「DVDリリースするために、リマスター版の製作と並行して楽曲もすべて再クリアした」と。やはり当時はVHS(とレーザーディスク)までの楽曲契約だったんですね。いやはやその苦労が感じられる入魂の使用楽曲たちがこちらです。

Kiwi FM ジングル

Key Largo~遥かなる青い海 バーティ・ヒギンズ

Each The You Pray~愛を求めて ネッド・ドヒニー

Personally カーラ・ボノフ

Love You Like I Never Loved Before~僕のラヴ・ソング ジョン・オバニオン

Don’t Talk~ロンリー・フリーウェイ ラリー・リー

Casabranca バーティ・ヒギンズ

You’re Only Lonely J.D.サウザー

Black Sand~ワイキキの熱い砂 カラパナ

In The Night シェリル・リン

(For You)I’d Chase a Rainbow~虹を追う男 カラパナ

Shine On ジョージ・デューク

Her Town Too 憶い出の町 ジェームズ・テイラー & J.D.サウザー

Rossana TOTO

Kiwi FM ジングル

前述した『なんクリ』に負けないほどのAOR楽曲たちですね。写真のCDは最初にリリースされた1991版ですが、掲載した楽曲リストはオリジナル・ラインアップにボーナストラックを追加した、2010年再発のコンプリート版。ジョン“里見八犬伝”オバニオンや、カラパナの楽曲たち、そして劇中登場するミニFM局 “Kiwi FM 76.3”のステーション・ジングルも追加されたということで、これにはサントラファンたちは喜んだものです。なんと曲順も改めて再構成しているんですよね。これらを観ると、さすがなにごとにもこだわりを尽くすホイチョイ・ワークスです。時間はかけたけどやることは徹底的!ステーション・ジングルもアメリカの専門スタッフにわざわざ発注して作らせたというのですから、当時も今も、変わらずになかなかやってくれます。現在未DVD化の不幸な映画たちも、波数を見習って作品をしっかりと後世に残していただきたいのであります。

さて今週のオマケは、まぁクリスマス間近ですからいっときますか…。

クリスマス・イヴの東京が舞台の映画『サイレント・トーキョー』、なのですが、こちらは原作が秦建日子による小説で、なんでもジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲『Happy X’mas (War Is Over)』にインスパイアされて書かれたものとか…。だけどなぜだか連続爆破テロ事件ものという、映画自体はいろいろいちいち謎ですが、テーマ曲は大胆にもそのまま『Happy X’mas (War Is Over)』をawichがカバー歌唱していますので、こちらは聴いてみても損はないかと。

では、数日後ですが良きクリスマスを!また隔週金曜カッキンで☆

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