レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』すっかりデヴィッド・ボウイと映画についてリマインドの日々が続いている志田一穂がお送りいたします。
さて、今回は90年代以降のボウイ関連映画とサントラを追いかけてみようと思います。まず語るべきは1990年から米国ABCにて放送開始となったデヴィッド・リンチ監督による『ツイン・ピークス』ですね。

新たなる90年代のスタートとともに、この一種異様なミステリー・メロドラマは一年間に渡る放送とビデオ化によって世界中で大ヒット、大ブームを巻き起こしました。ちょうどリンチ監督が同年(1990)に発表した映画『ワイルド・アット・ハート』がカンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドールを受賞したということもあり、時代はまさにリンチに風向きが変わったタイミングでもあったのですね。かくしてその話題性とともに『ツイン・ピークス』のキャラクターやロケ地、アンジェロ・バダラメンティによるあのテーマ曲に加え、ボイス・レコーダーやらチェリーパイと、その人気とブームは広がり続けていきました。


でもこれボウイは関係ないよね?という声が聞こえますが、いやいや、この放送シリーズが終わってすぐ、1992年にリンチ監督は映画版として『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』を発表するわけでして、ここにボウイが俳優として出演しているんですね。

この件については当時から志田は “必然的であるなぁ”と強く感じておりました。リンチ監督が持つクール&バイオレンスな持ち味というものが、かねてからボウイとの共通項として“あるよなぁ~”と思っていたので、ここでようやくコラボりましたか~と勝手にウンウンとうなずいていたのですね。

まぁ映画の中のボウイは、2年間謎の失踪を遂げていたFBIフィラデルフィア支局の特別捜査官というよくわからない役なのですが(ボウイの演技もとにかくストレンジ笑)、とにかくここでリンチとボウイが繋がりまして、リンチの次作『ロスト・ハイウェイ』(1997)のサウンドトラックに、こちらもようやくですがボウイの楽曲がガッツリ起用される運びとなるわけですね。

そしてその曲こそが1995年にボウイが発表したアルバム『アウトサイド(1.Outside)』に収録されていたインダストリアルロック・トラック「I’m Deranged」です。

またまた当時の志田、“きたきたきた、きましたよ~!”と心の中で叫びましたね。『ツイン・ピークス』⇛『映画版ツイン・ピークス』⇛『アウトサイド』と90年代前半から中半までをリンチとボウイは走ってきて、もはやアーリーゼロ年代となろうかというタイミングの1997年、遂に映画(リンチ)とロック(ボウイ)の融合が実現したわけです。この一瞬の蜜月が凄いなと思うのはやはりボウイのアルバム『アウトサイド』の存在なんですね。

このアルバムは前回紹介したボウイのベルリン時代の相棒、ブライアン・イーノと約15年ぶりに再びタッグを組んで挑んだコンセプト・アルバムでして、しかもその内容が、“ネーサン・アドラーの日記(ベビー・グレース・ブルーの儀祭殺人事件)”と副題が付けられているほど、サイコな猟奇殺人事件の謎を追っていくストーリー構成なのです。

当然当時の志田は、 “なにこれツイン・ピークスじゃん!日記ってまるでクーパー捜査官のボイス・レコーダーじゃん!”と思わず叫んでしまいましたね。それほどにリンチ監督のアレと酷似していたので。
でもですね、これはもう完全にボウイの確信犯的影響下によるリンチへのラブ・アンサーであり、だけどそもそもボウイ自身が “ワシこういうの大好きだしずっとやりたかったけん” と謎の方言で言ってそうなくらい、なんだか志田的にも “そうじゃろそうじゃろ”と許しちゃえる内容だったのですね。


さらに振り返ればボウイはかつて『ジギー・スターダスト』(1972)や『ダイアモンドの犬』(1974)といった名盤でもこのような物語をアルバム全体で展開していくという技法をとって表現していたわけで、90年代となって真骨頂な作品がイーノも加わってドドンと出たな!という素晴らしい内容でもあったわけです。やっぱりボウイはこのような前衛的アプローチを本質に持つアーティストなんですよね。
で、この荒廃的厭世的アンダーグラウンド的アルバムの楽曲はリンチ作品のみならず、アルバムリリースの同年(1995)に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』にもエンディング曲として投下されまして、その楽曲「Hearts Filthy Lesson」も狂気戦慄的な犯罪ミステリーである本作の雰囲気にベストマッチ。これまた絶妙なマリアージュを産み出しておりました。

やっぱりここでも志田としては “そうだべそうだべ”とこのコラボに納得しまくるのですが、一方同時に、なんだか90年代ってホントに頭クラクラするくらいダークサイドに没入していく時代なのね、怖え…と、ちょっと震え上がったりしていたのでした。
というわけで今回はボウイの90sムービー&サントラ・ワークスをご紹介しました。ボウイのテーマはこれにて一旦終了。実はまだまだ映画との関わり、いろいろあるんですよ。ここまできてハッと気づいたのが、そういえばリンチの『エレファント・マン』の舞台版ではボウイが主演だったじゃん!とか、まぁそれは映画ネタではないんですがボウイネタってことでとにかく尽きないんです。でもこちら3週もやってしまいましたからね。さらなる追求はまた今度。いや本当にボウイってホントに映画にお似合いですよね!ではまたカッキンで。
★志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」は金曜23時から。公式HPから世界中どこでも聴けます。