このサントラ、ちょっとレア。第45回 さらにデヴィッド・ボウイと映画の関わりについて探る件

レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』1月20日はデヴィッド・ボウイ・デイということらしいので、この機会にいろいろボウイっちゃうかと前回から意気込んでいる志田一穂がお送りいたします。

さて、そんなわけでデヴィッド・ボウイと映画音楽の関係のつづきです。アルバム「レッツダンス」で80年代に大ブレイクしたボウイですが、70年代から映画の世界からもちょいちょいラブコールをもらっていて、1976年にはそのスターマン的キャラクターを引用するかのようにニコラス・ローグ監督による『地球に落ちてきた男』に主演。この作品はカルトSFの傑作としていまだに語り継がれておりまして、ボウイ自身も本作を大変気に入っていたらしく、この頃リリースしたアルバム『ステーション・トゥ・ステーション』『ロウ』のジャケットにも映画のスチールをメインビジュアルとして使用したほどだったんですね。

だけどこの『地球に落ちてきた男』、ボウイは役者に徹するというこだわりがあったかのかどうか、音楽までは担当しなかった。貪欲なミュージシャンなら、映画で主演ということであれば「主題歌も歌わせてよ!音楽もやらせてよ!」となったりするもんだろと、シロート的には思ってしまうのですが、ボウイはそうではなかったんですね。で、なぜか音楽はママス&パパスのジョン・フィリップスと、日本の前衛音楽家、ツトム・ヤマシタのお二人が担当。しかしながらSF作品の世界感を実験的スペーシーな楽曲群でまとめあげた二人のサウンドトラックは結構な人気を得まして。が、なんと公開当時はサントラ盤のリリースは無し!しかも40年後となった2016年という年のアニバーサリー・タイミングに、ようやく完全版となって謎の初リリースとなったのですが、当然の如く待ちわびていた世界中のサントラマニアたち、そしてボウイファンたちは歓喜したという、生きてりゃいろいろあるもんだなや、と志田も大いにビックリしたのでした。

まぁたとえボウイ不在と言えでも、そのイメージングで奏でられた楽曲たちもまたボウイアイテムになり得るという、年月を経たからこそ証明された、大変稀なるサントラがこの『地球に落ちてきた男』というカルトムービーの存在、というものなのですね。なのでそんな作品のサントラも、なかなかのレアものなのではないでしょうか。

さて、本作が公開された1976年は、ボウイにとってアメリカを拠点としていた活動に一旦区切りをつけた年でもあり、翌年1977年からはいよいよベースを西ドイツに移行。伝説のベルリン時代が始まるのです。。

ここからあのブライアン・イーノをプロデューサーに迎え、ベルリン三部作を創り上げていくわけですが、そのアプローチの影響下に位置するかのような、二作のボウイ映画も生まれるのです。

1978年、西ドイツ映画として製作された、第一次大戦時のベルリンを舞台とした『ジャスト・ア・ジゴロ』が登場。ボウイはもちろん主演を務めますが、本作でも音楽はボウイではなく、ジャズ・ミュージシャンのギュンター・フィッシャーが担当します。ファンとしてはせっかくのベルリン時代ボウイムービーなのに、やっぱり音楽は担当しないのか、と、物足りないところではありましたが、実は一曲だけ、音楽監督のジャック・フィッシュマンと共作した「Revolutionary Song」という曲がザ・レベルズというユニット名で演奏、レコーディングされていたんですね。しかも日本でまさかのシングル・リリースもされ、当然希少盤としてコレクターズ・アイテムになっているのですが(邦題「デビッド・ボウイーの革命の歌」)、

聴いてみると確かにこれコーラスでボウイ本人様が歌ってませんか?!と当時ビックリしたシロモノなんですね。そりゃ重要アイテムになりますよ、という、こちらも激レアサントラなのでございました。

ベルリン時代のもう一作はこちらも西ドイツ映画、1981年の『クリスチーネ・F』です。

ベルリンの街で麻薬や売春などに溺れていく少女クリスチーネの実際の手記を映画化した問題作でしたが、劇中のクラブのライブシーンにボウイが本人役で登場。前述したベルリン・レコーディング三部作から多くの楽曲が引用されており、それらはサントラ盤として集約されたので、まるでボウイのベルリン時代ベスト盤のようなコンピレーション・アルバムとなっています。

特筆すべきは、その中に前回紹介したヴィム・ヴェンダース・プロデュースの映画『レディオ・オン』(1979)でも使用された「Heroes」のドイツ後バージョン「Helden」も収録されていることですね。『クリスチーネ・F』の方が使用は後になりますが、はっきり言って『クリスチーネ・F』の方が「Helden」という曲が映画の中で生きていると感じているのです。

退廃的なベルリンという街の存在からなんとか抜け出したい、抜け出さなければという主人公のエモーショナルな感情が、曲の歌詞「We can be heroes, just for one day〜僕らはヒーローになれる たった一日だけなら」と密に繋がっているなと。たとえ引用曲でも、ボウイ、ベルリン、西ドイツ、そして分断されたままの壁の存在という、リアルな共通項が映画の中でも映し出されているので、それぐらい『クリスチーネ・F』という作品にはボウイこそが不可欠でしたし、またボウイ自身もそれを自覚したからこそ、重要アイテムとなるレアなサントラ盤を編纂したのだと思うのです。

さて、今回はボウイのアーリー80sワークス、結果的に映画とのセッション&コラボレートによるレア・サントラをご紹介しました。次回もまたボウイをテーマにお送りいたします。いよいよ80年代ですね。この時代もなかなかレア満載です。ではまたカッキンで。