レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』新年明けましておめでとうございます。正月3日にアップなんてなかなか攻めてるカンジですが基本はいつものカンジの志田一穂がお送りいたします。とにもかくにも今年も何卒よろしくお願いいたします。

さて今回は来週1月10日がご命日となるデヴィッド・ボウイと映画の関わりについて、満を持して説いていきたいと思います。これ多分何回かに渡る壮大な回顧&分析になっていくと思うので予めご了承のほど。

さて、いきなりですがボウイと言えばデビュー前、リンゼイ・ケンプ(写真左)に師事しながらパントマイマーとしてアートの世界に潜んでいた時期がありましたね。コアファンならご存じかと思いますが、その姿をパフォーマンス含め記録した短編映画があるんです。1969年に公式発表された『イメージ(The Image)』という作品がそれで、この頃は既にロック・アーティストとして活躍していますし、同年にあの「Space Oddity」をシングル・リリース。その後は一躍スターダムへとのし上がっていったという、そんなブレイクしてからのタイミングで、かつての作品を掘り起こしセールスにかけた逸品中の逸品なのです。

そもそもボウイがこの作品に出演したのは1966年。ボウイが19歳のとき。サラッと出演したくらいであろう前衛的実験的なこのインディペンデント・フィルムですが、こんな短編でも当時ワールドワイドでセールスに出され、日本でも80年代に天下の東映ビデオ(名物ディレクターが名物珍品ばかりビデオ化していた伝説が多々あり)がVHSビデオでリリースされていたというのですから、本当にボウイの底知れぬ人気と影響力というものは恐ろしいものです。(ちなみに志田は90年代に再度ワールド・セールスされた際に本作を拝見しました)

オリジナル版の音楽はプログレファンにも定評があるシンガーソング・ライター、ノエル・ヤヌスが担当していましたが、日本でのビデオ化に際してはその音楽が権利不履行で使用不可だったらしく、日本のVHS版ではザ・ファン・ド・シアクルという謎の二人組ユニットが全サウンドトラック=音楽を製作。現在でも作曲家でありアレンジャーとして活動している吉富博明氏がボーカルやバックコーラスと大半の作曲を担当し、ギタリストとしてアルバム・リリースを続けている堀尾和孝氏が、文字通りギターと一部作曲を担っているという、なかなかのレア・サントラなんですね。もうどうしてこんなことになっちゃったのかな?という疑問渦巻きつつも、ジャケットにはしっかりドドンとsound produced とユニット名・ロゴまでアピールされていると。いやはや本当に、なんとも…感が炸裂なのでございます。

してそのサウンドはと言うと、さすがボウイ作品へのリスペクトか、シンセメインのニュー・ウェイブ調に生音を融合させた、80sという時代ならではのアプローチ。それらはときにオーケストレーション的であり、アンビエント的でもあったりして、かつての掘り起こしフィルム作品に、ややともすれば新鮮な息吹を吹き込んでくれているのは確かではありました。特筆すべきはこのユニットに参加しているミュージシャンの中にあの橋本一子さんがいらっしゃいまして。しっかりピアノとオルガン担当として参加されているんですね。しかも一曲、曲提供までしておりまして、こんな過去ワークスがあったのですねとちょっとじんわりしてしまいます。話題それますが橋本一子が手がけた映画音楽も素晴らしいのですよ。手塚眞監督の『白痴』(1999)、『実験映画』(1999)、そして『ばるぼら』(2020)なんかは監督との親和性が高レベルなのがビンビン伝わってくる名曲揃いです。

こうして掘り下げていくと、ボウイ・アイテムにちょっとでも関与していたという歴史は橋本さん的にもなかなかの美談として語り継がれても良いかなと思いますね。まぁ短編インディペンデント映画ですが…。とにかくなかなかレアでディープなサントラなのでありました。もちろんこの『イメージ(The Image)』のVHSはとっくに絶版でデジタル化もされていないので最早幻の作品であるわけです。たかが掘り起こし作品だけで随分説明してしまったなという感じですが、これぞボウイ世界の深淵なるアイテムなのでしっかりと記されていただきました。
さて、もう一本、レアなサントラ作品、紹介しましょう。1979年の『レディオ・オン』がそれであります。

こちらあのヴィム・ヴェンダース プロデュースによるモノクロ・ロード・ムービーでして、ロンドンからアイルランドにスコットランド、さらにドイツまでと、やっぱり延々旅路を往くという、ヴェンダースに至っては自分の監督作以外でも同じような旅映画を作らせるのね…と当時苦笑したのですが、なんでここにボウイの音楽=サントラが?と言いますと、作品の冒頭からいきなり飛び込んでくるんですね、あの名曲「Heroes」が。

しかも本作に使用されている「Heroes」はタイトル・クレジットが「Helden」なのです。これドイツ語で、意味はズバリ、ヒーローズ。つまり「Heroes」のドイツ語バージョンなんですね。それが突如として映画のド頭からほぼフルで流れてくるのです。これはもう観ていてビックリでした。ヴェンダースと言えば根っからのロック・フリークですし、たとえプロデュース・オンリーでもこうしたレアな既製曲を使うにあたっての使用料確保にはやっぱり妥協しないのですね。

これをはじめて観たのはやっぱりワールド・セールスが再び行われた90年代のことでして、実際1982年に日本でもささやかに公開されたらしいのですが、その存在をまったく知らなかったので全編観た際には結構ロックなノリでビビりました。しかもボウイのあとはディーヴォの愉快なストーンズ・カバー「(I Can Get No) Satisfaction」や、クラフトワークの「Uranium」に「Radioactivity」もが登場したり。ちょい役であのスティングも顔出ししてるのもどんだけロック色出したいのかよとニヤニヤが止まりませんでした。

そして再びボウイの曲だと思ったら「Always Crashing In The Car」(アルバム『Low』1977に収録)なんていうマニアライクな曲まで飛び出す始末。まさにボウイ楽曲の引用はブライアン・イーノとともに作り上げたベルリン三部作からで、いかにヴェンダースとしてこの頃のボウイ・ワークスに刺激を受けていたかが伝わってくるというものです。

だけどヴェンダース、自分の監督作ではボウイの楽曲は一度も使ったことがないですよね?ルー・リードはあんなに使っているのに。このあたりも大変興味深い関係性ではないでしょうか。
さて、今回はデヴィッド・ボウイというスーパー・スター・ネタでありながら、かなりレアなサントラ事情のご報告でございました。ボウイ・サントラの話しはここからまだまだ続きそうです。これはですね、さらになかなか深いハナシになってまいりますよ?
では、皆様昨年中も大変お世話になりました。今年もまだまだ小ネタかましてまいりますので、引き続きなにとぞナニトゾ~。
★志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」、HPから世界中どこでも聴けますので是非聴いてみてください!