レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』 新作小説『映画少年マルガリータ』行商ツアーin松本&名古屋に行ってきましてあさっての日曜は東京に戻って神保町の二十世紀カフェでまたまたマルガリータトークイベントをやらかす志田一穂がご案内します。

さて今回は、ちょうど30回目という区切りでございまして、なんとなく区切りの恒例ネタとなった、皆大好きビートルズ楽曲によるレア・サントラの紹介です。いつからそんな区切り恒例になったのかって?いや単純に10回目と20回目の連載でビートルズネタをやっていたので、まぁ10回ごとかなって、それだけなんですがね。というかこの超アバウトな連載、もう30回もやってるの!?と何気に驚きを隠せないのですが、すみません、それでもいろいろレアネタを毎回お送りしているのでまだまだお付き合いくださいませ。

で、ビートルズ楽曲によるサントラネタ。今回はただ一曲のみに焦点を絞ってご紹介いたします。彼らビートルズの1965年のアルバム『Rubber Soul/ラバー・ソウル』に収録されていたA面一曲目と言えば、マニアならすぐに答えられるでしょう「Drive My Car/ドライヴ・マイ・カー」ですね。これはポール・マッカートニーの曲であり、アルバム冒頭を飾るとてもスピーディーで文字通りドライヴィンなロック・チューン。この曲がフィーチャーされて、リアレンジ・カバーされた作品、80年代にひょっこり存在していたのでまずはこちらを紹介いたしましょう。
『運転免許証/ライセンス・トゥ・ドライブ』(1988)でございます。

なにこれ知らない…と目を細める映画ファンもいることでしょう。劇場公開されていたらしく、ビデオ化もされていましたが、結構日本未公開レベルでヒットしなかったという、作品自体がレアなヤツです(これホントに劇場公開されていたのか志田としては「?」なのですが)。とは言え、主演はコリー・ハイム(「ロストボーイ」)とコリー・フェルドマン(「グーニーズ」「スタンド・バイ・ミー」)というダブル・コリーで、本国ではそこそこティーンに人気があった二人なのでスマッシュヒットしたとか。で、タイトル通り、運転免許をとるためドタバタな教習が繰り広げられるカーものらしく、そこでテーマ曲として登場するのがDrive My Carのカバー曲というわけなのです。しかも歌っているのが80年代のバンド、ブレックファスト・クラブなんですね。

ブレックファスト・クラブと言えばデビュー前にあのマドンナが在籍していたといういわくつきのバンド。だけどサウンドはなかなか骨太かつポップな80sサウンドで、時代をしっかり地(じ)で行く正統派ロック&ポップスバンドですね。そんな彼らが演奏するDrive My Car、これがかなりイイんです。なにしろビートルズのオリジナルよりダンサブルという。そりゃまぁそれが80sの肝ですからね。これはなかなか盤では聴ける機会が無いのですが、YouTubeではしっかり聴けるので是非アクセスを。
そして時は2017年までひとっ飛び。『カーズ クロスロード』の登場ですね。

『カーズ』に関してはいずれしっかり紹介しますよと言いながらまだ出来ていないというお詫びもあったりしますが、まずはこのシリーズ第二作にてフィーチャーされたDrive My Carを紹介させていただきたいのです。ピクサーアニメと言ってもやっぱり大人気のカー・コメディものですから、そこはこのDrive My Carが似合わないわけがない。しかもメキシコのシンガー・ソングライターでありダンサーでもあるジョージ・ブランコによるカバーとくればもうノリノリなアレンジ。聴いているこちらも自然と踊り出しそうになる始末ですよ。確かにちょっとリズムもメキシカン&フラメンコチックで、これはこれでドライブ・デートに持ってこいのナイスなバージョンです。
そもそもこのDrive My Carという曲ですが、はっきり言ってシングル・カットもされていないし、ビートルズがライブで演奏した記録も無いという、ある意味この曲自体もレア人気曲。80年代の『運転免許証』の引用時はともかく、これがどうしてピクサーアニメにまで持て囃されたり、TBSラジオ「たまむすび」の交通情報コーナーのテーマ曲になったり、セサミストリートのエルモや竹内まりやまでもがこぞってカバーしたりしたのかと言うと、やっぱり志田としては1993年に三度目の来日公演を果たしたポール・マッカートニーのライブにありと見ているのですね。

この1993年のライブツアー“THE NEW WORLD TOUR”で演奏された一曲目がまさにこの「ドライヴ・マイ・カー/Drive My Car」だったわけです。いやワールド・ツアーの一曲目を飾る曲ってめちゃくちゃ大事じゃないですか。そこにこのDrive My Carですからね。これはビートルズ・ファンとしてはかなり驚かされた選曲だったんです。重ねて言いますがシングル曲でもない、しかも「ラバー・ソウル」というマニアライクなアルバムの収録曲でしかないわけで。だけどこれ、ライブの冒頭で勢いがつくのはさすがアルバム一曲目に持ってきていたポールの心意気というやつでして、そうかそうか、ポールはこの曲でスタートラインからいきなりダッシュしたかったのねと。この曲ってやっぱりそういう役割だったのね、ということで、それによって全世界ツアーで認知され、もはやシングル曲レベルの大人気曲になっていったのではないかと思うのです。

因みにその“THE NEW WORLD TOUR”のライブ映像はしっかりとこの「ポール・イズ・ライブ」というライブ映像作品としてまとめられていますから、その一曲目のコーフン極まりないステージングを体験してみるのも良いかもしれません。もちろんCDでも聴けますよ。↓ しかしこのアビイロード・セルフパロディ、可愛いですよね。

そんなわけでDrive My Carですが、近年もう一本気になる映画もありましたね。楽曲はともかくタイトルそのままキター的な濱口竜介監督作品、『ドライブ・マイ・カー』(2021)がそれです。

こちら、カンヌで脚本賞は獲るわ、アカデミー賞で作品賞と脚色賞を含む計4部門にノミネートされたあげく、国際長編映画賞を受賞してしまうわ、国内外にて大変話題になった作品でした。そして本作の原作はあの村上春樹でありまして、春樹さんと言えばビートルズ曲のタイトル引用プチ常習犯。ビートルズ曲「ノルウェーの森/Norwegian Wood」を小説タイトルとした『ノルウェイの森』なんてのもありました(2010年にこちらも映画化)。

面白いのは、ドライヴをドライブ、ノルウェーをノルウェイと、表記をちょっと変えているところだったり。しかしこのDrive My CarもNorwegian Woodもアルバム「ラバー・ソウル」の一曲目と二曲目だったりするんですよね。前者はポールの曲、後者はジョンの曲。なんというか、いろいろ多岐にわたってその繋がりだったり広がりだったりを考察し、かつ勘ぐり続けてしまうのが、さすがビートルズなんですよねぇ。うーんしかし脱線気味だったけど村上春樹原作映画作品群のサントラも、それはそれで紹介したくなってきたぞ…。そうだ、それはそれでやろう。そうしよう。
というわけで、次回のビートルズネタは40回目でしょうかね。ではまたカッキンで!志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」(金曜23時)もよろしく。