レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』今週末は長野県松本で講演してまいります、志田一穂がご案内します。
さて、今回はちょっと物騒なタイトルがついておりますが、昭和世代の映画バカなら「むむ、あれだな?」と素早く察してくれるのではないでしょうか。そう、1982年の日本映画、石井聰亙監督の『爆裂都市 BURST CITY』ですね。当時の宣伝キャッチコピー「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。」が物語るように、とにかくロックとバトルとSFがぶつかり合ってこんがらがってぐちゃぐちゃになりながら時速500キロぐらいで爆走していくとんでもない映画なのですね。

まず主演です。二組のロックバンドの集合体というのが既に常識外。福岡は博多から突出した最高のめんたいバンド “ザ・ロッカーズ”と“ザ・ルースターズ”という実在するバンドを合体させ、架空の “ザ・バトル・ロッカーズ”として再編成してしまったというから失神ものです。

当時、このロッカーズとルースターズはそれこそライバル・バンドとして競い合っていたので、映画の中とはいえ「え、ホントに一緒にやるの?」とかなり話題になったとか。中身がロッカーたちと警察とギャングの大抗争みたいなぶっちぎりストーリーなので、必然的にこのバトル・ロッカーズがかなり過激なサントラを全編担当するという流れに。そして結果として早すぎた超サイバーパンクなサントラ盤が誕生したというわけです。

ご存じかどうか知りませんが、ロッカーズのボーカルは現在も俳優として活躍中の陣内孝則で、ルースターズのボーカルはロック界の生けるレジェンド、大江慎也です。ねばっこい昭和歌唱マナーの陣内に、鋭利の如く歌を突き刺してくる大江というこの二人、対極を成すようなボーカリストですが、その共演曲を聴くとなるほど物凄い化学反応を起こすのだなと、思わず身体中の血液が沸騰してしまいます。
サントラに収録されたその貴重なバトル・ロッカーズ音源は以下の通り。

★メインテーマ曲としてシングル・カットもされた「セル・ナンバー8(第8病棟)」(陣内ソロ名義の「視界ゼロの女(マチ)」のB面)。
★「ワイルド・スーパーマーケット」あの“Wild Thing”を引用したかのような曲で妙に盛り上がらせるロック・チューン。
★「シスター・ダークネス」Velvet Undergroundのようなノイジー・バラッド。陣内と大江の、キーの高低差デュオが絶妙な曲。
★「バチラス・ボンブ(細菌爆弾)」ルースターズ調のビートが利いたロックンロール。
★「フラストレーション」The Whoの“My Generation”を完全に模倣した曲だが、スピーディーな勢いでイナタく疾走するこの曲こそが“めんたいロック”の真骨頂。
★「ボロボロ」もはやパンク寄りのアジテート・ソング。
と、こうして解説しているだけでも病棟とか細菌とかフラストレーションとかと、なんちゅう楽曲たちだと呆れられているかもですが、とにかくこれが映画のサントラ!?と楽曲だけ聴くとにわかに信じられない曲ばかりなのです。

サントラ盤にはこの他に前述した陣内ソロ曲、「視界ゼロの女(マチ)」や、ロッカーズ名義の曲が3曲(「シャープ・シューズでケリ上げろ!」「プア ボーイ」「マイト ガイ」)。一方、残念ながらレーベル契約の問題なのか、ルースターズ名義の楽曲はサントラ盤への収録無し。ですが、「レッツ・ロック」と「ゲット・エヴリシング」の2曲はサントラとしてシングルカット。もう一曲「オールナイト・ロック」がありますが、こちらは映画を観ればしっかりと耳にすることができます。

インスト曲、ルースターズ 池畑潤二の「ソルジャー」と、同じくルースターズ 花田裕之の「キックス」、そしてやはりルースターズ 井上富雄による「ソロー」も、近未来的イメージで奏でられている捨てがたい楽曲たち。こうした曲や劇中の台詞(ほとんどが絶叫や奇声やアジテート)が随所に挿入され、重ねて申し上げますが、完全なる暴動サントラとなっております。
ルースターズの音源問題のように、レコードメーカーの専属アーティストをすべて解放出来なかったという事情があったと思われるので、映画に出演している多くのミュージシャンたちの楽曲が一同に介せなかったのは残念。それらもざっと紹介しておくと、まずバトル・ロッカーズ同様に貴重な存在なのが、遠藤ミチロウ率いるスターリンが敵役 “マッド・スターリン”として狂い咲き出演していること。約8曲という革命パンクを認識不可能なくらいに怒鳴り散らしております。

それから、重鎮 柴山&鮎川のサンハウスですね。やはり福岡は久留米出身の鮎川アニキを差し置いて勝手に暴動している場合ではありません。楽曲「カラカラ」一曲のみの登場ですが、これが聴こえてくるとハッとさせられます。
そして本作の美術監督も務めていた泉谷しげるの楽曲ですが、こちらは映画と同年の1982年にリリースした泉谷 with BANANAのアルバム『NEWS』(名盤!)の収録曲「裕福の飢餓」を、劇中キャストたちが黙々と歌う(というかポエム・リーディングのように呟く…)バージョンが登場。

これもまた音盤化されていないレア・トラックなので、とにかく映画を観て聴いていただくしかないのであります。(欲を言えばクレイジー兄弟として登場する当時INUの町田町蔵(現・康)の楽曲なんかも映画用に差し込んでほしかったですね)

まぁ、平成世代や令和世代にはなんのことやらな作品かもですが、コンプライアンスとかハラスメントなんて言葉が皆無だった時代の、言い換えれば映画もそのサントラも、こんなに自由でやりたい放題でオモシロイもんだったのよと堂々叩きつけることができる一本なので、何か無性に元気を出したい、狂ったようにパワー漲りたい!ってときは、本作を観てサントラも爆音で聴きましょう!うおりゃ~!!

では次回もカッキンで♪
志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」も夜露士区。