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このサントラ、ちょっと、レア。第18回 サウンドトラックでジャズやるべジャズな件

レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』一日に三本は映画を観ないとどうも体調がしっくりこない志田一穂がご案内します。あ、今まだ1月3日?新年あけましておめでとうございますです。

さて、今回は急に「ジャズやるべ」とスウィングガールズ的、上から目線なサブタイトルなんですが、新年一発目ということで皆大好き『ラ・ラ・ランド』(2016)をフィーチャーしつつ、ミュージカル映画の歴史なんかにもスポットを当ててみようかと思っているのです。

まず『ラ・ラ・ランド』ですね。いやこの作品には当時劇場で観て本当に驚かされました。80年代から現在に至るまで、なかなかミュージカル映画の真髄を捉えた作品て無いよな~と思っていたところ、突然こんなのが現れるから、いやぁ映画って本当にイイもんですよねぇと水野晴郎的につい笑顔になってしまったのです。って、ミュージカル映画の真髄って何よ?80年代には『ブルース・ブラザース』(1980)だってあったし、『フットルース』(1984)や『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)やプリンスの『パープル・レイン』(1984)なんかも結構しっかりとしたミュージカルだったじゃんか、といきなり突っ込まれそうですが…

いえいえ違うんですよ。志田が提示するミュージカル映画のシンズイってのは、もっと古く、往年のミュージカル映画のことを言っているんです。

そもそもミュージカル映画は1930年代、正確に言えばトーキー映画が主流となった1929年に製作された最初のミュージカル映画、MGM製作の『ブロードウェイ・メロディー』から始まったんですね。

最初は物語なんか無くて、いわゆるブロードウェイのステージ・レビューをそのまま再現したような作品だったんですけど(なのでレビュー映画と呼ばれてました)、それでもやっぱり皆音楽大好きなので、このレビュー映画は大人気になっていったんです。だってブロードウェイ・ミュージカルの世界観が自分の街の映画館で観れちゃうわけですし、セットは豪華絢爛でまるで夢の中にいるような時間、これはヒットしないわけがなかったわけです。トーキー映画の一番の立役者がこのレビュー映画だったということでもあるのですね。

で、少しずつ物語として演出されるようになり、台詞も歌とともに演じられるようになって、いよいよミュージカル映画というジャンルが確立していくと。そしてそれらは30年代から50年代にかけて隆盛を誇っていくわけです。

1935年にはフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースによる『トップ・ハット』がありました。1939年にはジュディ・ガーランドの『オズの魔法使』、ジーン・ケリーも大活躍で『巴里のアメリカ人』(1951)や『雨に唄えば』(1952)といった傑作を映画史に刻みました。

つまりこうした往年のミュージカル映画にこそそのシンズイが携われていると思っているのです。物語の中に、歌と音楽、そしてダンスが自然に馴染んでいるあのスタイルですよ。言い方を替えると、 “古き良きハリウッドのハイ・ソサエティー” だけどしっかりとしたメッセージ性を兼ね備えた “ヒューマン・ドラマとしての音楽映画” です。あの雰囲気、あの空気感。それはあの時代だからこそ出せたものなので、その後のミュージカル映画たちを比較すること自体どうなんだ?ということもあるのですが、でもやっぱり新作でミュージカル映画が登場すると、今度はどうかな?この作品はかつてのジーン・ケリーのような映画を観せてくれるかな?と、期待してたりしてました。

だけどなかなかそうはいかない。80年代はリチャード・アッテンボロー監督の『コーラス・ライン』、90年代は個人的見解で皆無、00年代は『スクール・オブ・ロック』(2003)や『ヘアスプレー』(2007)、『マンマ・ミーア!』(2008)など、多少の兆しはあったとは思いますが、どこか垢抜けすぎているのか「面白いは面白いんだけど、なんか違うなぁ…」という気持ちでした。

さらに『レ・ミゼラブル』(2012)なんかはなんだか凄すぎて「圧倒されましたが、そういうことじゃナッシング…」と目を丸くして終了だったりしてまして、と思っていたら、遂に現れたんですね、2016年になって『ラ・ラ・ランド』が。

この作品、デミアン・チャゼル監督作品と知って最初は「え…」と思いました。だってあの音楽学校パワハラ映画『セッション』(2014)の監督ですからね。

ジャズ・ドラマーを主人公にビッグ・バンド・ジャズの魅力が楽しめると思ったら、なんだこの胸糞悪い終わり方は…と激怒しつつ、しかしなんだか忘れられない問題作だったことは間違いないので、最初は『ラ・ラ・ランド』も、陽気で浮かれたタイトルはただのまやかしで、中身はまた嫌悪感バリバリなんじゃないかと疑心暗鬼炸裂だったんです。だけど冒頭の渋滞ハイウェイ・ダンスシーンからして、「待ってマジかよ」と、いきなり涙腺決壊だったんですね。

このシーン含め作品の随所に、かつての往年のミュージカル映画のオマージュ・シーンがたくさん登場してくるんです。涙が込み上げてくるのはまさにそのせいでして、それこそMGMミュージカルの影響を受けフランスで製作された『シェルブールの雨傘』(1963)や『ロシュフォールの恋人たち』(1966)からも、かなりリスペクトしたシーン満載なのです。

もちろんMGM作品を想起させるシーンもたくさんで。いやこれ本当にあの『セッション』のチャゼル作品なのかよと相変わらず疑り深く観ていましたが、本作はれっきとしたあのミュージカル映画のシンズイを継承した傑作だったわけですね。

で、ようやく本題なんですが(長かったですねすみません)。ただのオマージュ映画なら当然シンズイ的に見える、それだけじゃないの?と思われがちですが、ポイントはその音楽なんです。ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』の音楽は、正真正銘の “ジャズ” なんですよ。そう、かつてのミュージカル映画の傑作たちの音楽には、ジャズが根底に土台としてあって、その音楽風味を『ラ・ラ・ランド』は再び2010年代に蘇らせてくれたのです。かつて劇場で観ていたときは、結構なんだなんだ??と混乱して「いやー良かった、久々のマジなミュージカル映画だったんじゃないの??」と興奮していただけでしたが、後々DVDで再見したりサントラを聴き込んでいたりして解析していくと「あージャズだ、ジャズのサウンドがこれだけかつてのミュージカル映画の復権を唱えていたのだ」と、二度目の興奮状態になったのです。

ジャズはいいですよ。一言にジャズと言っても広義に渡る音楽ジャンルの一つですが、ミュージカル映画としてのジャズは、あらゆるリズムが変則的に動き回り、ビッグバンドなスタイルなので、ホーンとストリングスのアンサンブルがそれぞれのシーンを実に豊潤なサウンドで彩ってくれるのです。アレンジも多彩で、オーケストレーションにトリオスタイル、ピアノソロだってOK。そんな多種多様な表情を見せてくれる“ジャズ”だからこそ、映画、しかもミュージカル映画には持ってこいの音楽だと思うのです。

ロックやポップスといった音楽をテーマにするのも新しいミュージカル映画のアプローチとしてはもちろんウェルカムだと思うのですが、やっぱり本格的なミュージカル映画を観たければ、ベースにジャズがあると落ち着くんですよね。そんな映画『ラ・ラ・ランド』のサントラを手がけたのは『セッション』同様、チャゼル監督とも付き合いが長い(バンドも一緒に組んでいた)、ジャスティン・ハーウィッツなる俊英ミュージシャン。なるほど『セッション』もまたジャズがテーマの作品でした。あちらはかなり攻撃的なジャズでしたが、それもまた批判しがいのある問題作として注目を浴びつつ賞は総ナメな傑作だったということです。

さて、今回はレア・サントラというよりも映画の中のジャズを探求していく感じになりました。でも、サントラの中に思いも寄らないレア・チューンを見つけられるのは、結構ジャズ映画にありますよってことで。また機会を見てそのあたりの注目曲も紹介していきますね。ではまた。今年もどうぞ引き続きカッキン体制でよろしくお願いいたします。

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