• Column

第6話:「運命のレコード」

TOLAちゃんのラジオ番組で歌えなかった夜から、たくちゃんはずっと気分が晴れなかった。

メタバースの街は相変わらずネオンに彩られ、音楽があちこちから流れている。しかし、今のたくちゃんには、それらがすべて遠く感じた。

(オレには音楽は無理なのかもしれない……)

そんなことを考えながら、気づけば知らない通りを歩いていた。そして、ふと視線の先に、小さなレコードショップが目に入る。

「Blue Broccoli Records」

木製のドアにはそう書かれた看板がぶら下がっている。懐かしさを感じるアナログな雰囲気に惹かれ、たくちゃんは無意識のうちに店の中へ入っていった。

店内には壁一面にレコードが並び、スピーカーからは心地よいビートが流れていた。カウンターの奥には、ターンテーブルを回しながらリズムに乗る男がいる。

水色の大きなアフロが特徴的な彼は、まるで音楽そのものを纏っているような雰囲気だった。

「いらっしゃい、音楽好きかい?」

ターンテーブルを回しながら、男が微笑む。

「えっと……音楽は好きだけど、最近はちょっと自信がなくて……」

たくちゃんはポツリと呟いた。

「ふーん、何かあったのか?」

男はレコードを変えながら尋ねる。

「実は……TOLAちゃんのラジオ番組に少し出たんだけど、緊張して歌えなくて。オレ、音楽やってるつもりだったけど、やっぱり才能ないのかなって……」

すると男はフフッと笑った。

「才能なんて言葉に頼るなよ。音楽は楽しむもんだぜ」

「でも……僕はTOLAちゃんみたいに歌えないし……」

「歌えないなら、DJをやればいいさ」

男はそう言って、一枚のレコードを取り出した。

「お前さんにコレをやるよ」

たくちゃんが受け取ったレコードのジャケットには、見覚えのあるデザインが描かれていた。心臓が高鳴る。

「……このレコード、まさか……!」

男はニヤリと笑った。

「そう、今大人気のZUNさんの限定レコードだよ」

家に戻ったたくちゃんは、震える手でターンテーブルにレコードを乗せた。そして、針を落とす。

――♪

スピーカーから流れ出したのは、ZUNさんのあの曲だった。

たくちゃんは目を閉じる。

(これは……Jah Guidance……神様がくれた運命なんじゃないか?)

TOLAちゃんの前では歌えなかった。だけど、DJならできるかもしれない。ZUNさんの音楽を、オレが新しい形で届けられるかもしれない。

胸の奥から熱い想いが湧き上がる。

「よし……オレ、DJをやってみる!」

たくちゃんは決意した。

この一枚のレコードが、彼の新しい音楽人生の始まりだった。

(第7話へ続く)

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・メタバース×音楽小説

※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。