• Column

第1話:「終わりと始まり」

朝の光が部屋のカーテンの隙間から差し込み、四角いスピーカーの形をした頭が、目覚まし時計の音に合わせて揺れる。

「んあ~……朝か……」

たくちゃんはゴロゴロとベッドの上で転がりながら、重い体を起こした。時計を見ると午前9時。今日は休日だ。仕事も学校もない日曜日。

「おはよう!」

リビングに行くと、妹のユイがすでに朝食を食べていた。母はキッチンでコーヒーを淹れ、父は新聞を広げながらのんびりしている。たくちゃんは席につき、テーブルの上のトーストを一枚手に取った。

「昨日のテレビ、マジでバカだったよな!」

「またくだらない番組見てたの?」とユイが呆れたように言う。

「くだらなくてこそ面白いんだよ!」

「ほんと、あんたはバカ話ばっかりね。」と母がクスッと笑った。

そんな平和な朝。いつもの家族の風景。

「今日は家族サービスだ。遊園地に行くぞ!」

父の一言で、たくちゃんとユイは飛び上がった。

「マジか!」

「やったー!」

楽しい一日になる。たくちゃんはそう確信していた。

遊園地の帰り道

夕方になり、家族は満足げな表情で車に乗り込んだ。

「ジェットコースター、マジでヤバかったな!」

「お前、絶叫しすぎて声裏返ってたぞ!」

「うるせー!」

ユイはスマホを眺めながら笑っている。

「これ、たくちゃんの変顔!」

母は微笑みながら後部座席を振り返った。

「楽しかったね……」

その時だった。

「危ない!!!」

父が叫ぶと同時に、巨大なトラックのヘッドライトが視界いっぱいに広がった。

――ドォォォン!!!

たくちゃんの意識は、そこで途切れた。

病室での目覚め

静かな病室。遠くで機械音が鳴っている。

目を開けると、白い天井が見えた。

「……ここは?」

たくちゃんはゆっくりと体を起こそうとしたが、体が重い。隣には白衣を着た医者が立っていた。

「目が覚めましたか。」

「俺……ここで何を?」

「お伝えしなければなりません。」

医者の表情が沈んだ。

「あなた以外のご家族は……亡くなりました。」

その言葉が、たくちゃんの頭に重くのしかかった。

「嘘だ……」

震える手で顔を覆う。目の前がぐらつくような感覚に襲われた。

酒と夜の街と絶望

退院しても、家には誰もいなかった。

静まり返ったリビング。家族の笑い声がまだ残っているような気がした。

「……なんでなんだよ……」

たくちゃんは酒を浴びるように飲んだ。夜の街をさまよい、ネオンがぼやける視界の中で、ただただ荒れ狂った。

「なんで俺だけ助かったんだ……!」

酔った足でビルの屋上に向かった。高層ビルの縁に立ち、下を見下ろす。

「もういいや……」

一歩、踏み出そうとしたその瞬間――。

「たく……」

「たくちゃん……生きて……」

風に乗って、家族の声が聞こえた気がした。

「……なんでだよ……」

涙が頬を伝う。

「……もう少し、生きてみるか……」

その時、風に舞う一枚のチラシが顔に貼りついた。

「うわっ!?」

剥がして見ると、そこには大きくこう書かれていた。

「メタバースへようこそ!」

メタバースの世界へ

「……なんだこれ?」

死ぬ前に、メタバースなんてやったことなかった。

「まあ、最後の気晴らしにでも……」

たくちゃんはフラフラの足取りで帰宅し、安いVRゴーグルをネットで注文した。

翌日、ゴーグルが届いた。

「よし……やってみるか。」

ゴーグルを装着し、仮想空間へとログインする。

そこには――広がる、未知の世界があった。

(第2話へ続く)

〜sono限定で読める〜

・メタバース×音楽小説

※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。