レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』最近も暇さえあれば映画ばかり観ていてこんな人生でいいんでしょうかとぼんやり思いつつな志田一穂がお送りいたします。
さて、掲題のモンドミュージックとは一体なんでしょうか。この定義がとても難しくて、モンドという言葉自体のルーツはフランスのMONDEにあり、直訳すると「世界、世の中、大したもの」となりますが、スラング的には「むむ、いいね~」という感じなんですね。そうすると、ちょっと小粋でレア、キミなかなか趣味イイじゃない、というときに使ったりするのでしょうか。でもこれが音楽業界で使われると「この音楽ヤバいね、モンドだね」とか「なにこれよくわかんね~あやしぃ~モンドだモンド」みたいな感じになるわけです。

かく言う志田もかつて「TOKYO☆モンドナイト」という、マニアックな曲ばかりかけるDJイベントをオーガナイズしていたという前科がありまして、やっぱりそこでも映画やテレビドラマなどのサントラもたくさんかかっておりました。中でもキッチュでモンドなブリティッシュ・インベイション時代のオサレな映画音楽がウケたりしていたんですね。

今回はそんなイギリスの60年代中半、若者たちのカウンターカルチャー“スウィンギン・ロンドン”が爆発した頃の、モンドなサントラをご紹介したいと思います。
まずは『ナック』(1965)です。音楽は007シリーズでおなじみ、スパイサウンドを作らせたら世界一にして第一人者のジョン・バリー。

タイトルのKNACKもスラングで「女の子をゲットするぜ」という意味で、そのタイトル通り、ひたすらに女の子をモノにするためドタバタと映像が疾走していく楽しい作品です。そこにジョン・バリーのファニーでスリリングなサウンドが乗って、大変ファッショナブルとなりカッコいいんですね。まさにモンド・サントラの決定版です。

監督が初期のビートルズ映画のリチャード・レスターというのも肝で、随所にコミカルないたずらアプローチもいっぱい。90年代には渋谷系文化の影響でリバイバル公開もされ、サントラCDもバカ売れしました。今でもまったく古びてないので、遅くありません。要チェックです。
続いては先ごろお亡くなりになりましたマリアンヌ・フェイスフルとあのアラン・ドロンが共演して話題になった『あの胸にもういちど』(1968)。

イギリスとフランスの合作であるため、キッチュなブリティッシュ・カラーとフランス特有のシネフィル・テイストがミックスされた、クール&ウェットなラブ・ストーリー。しかしながら原題は「Girl On A Motorcycle」=オートバイ少女というから(なんであんな邦題に…)、その名の通りマリアンヌが黒のライダースーツに身をまとい、バイクで爆走する姿がとにかくビューティーで眼福。

まぁ愛するドロンの元へと爆走しているだけってことですが、ここにイギリスの名作曲家レス・リードの華麗でいてビートの効いたモンド・サウンドが響き渡り、たとえ愛する者がいるとしてもいいわいいわカッコイイから、となるわけです。こうしたシーンからあの「ルパン三世(旧ルパン)」に登場する峰不二子のイメージが確立されたとも言われているのですね。確かに映像も音楽もリスペクトしている感ありました。

さて、当時のイギリスと言えば、前述したように007の世界観=国際諜報局が舞台となるスパイ映画、そしてスパイドラマも大人気の時代でもありましたが、セクシー路線も踏まえた女性スパイが主人公となる『唇からナイフ』(1966)なんてのもありました。

こちらもジョン・ダンクワースの音楽含め、超モンドな作品でしたね。ここで似合うのはやはりジャジーなサウンド。スウィンギン・ロンドンと謳われたカルチャーの根底にはやはりイギリスならではのクールなジャズが似合うと。

そんなサウンドトラックの本作には、サスペンス・タッチでありながらも結構なんでもありのギャグ・アプローチも満載。このようなコメディー要素もまたモンドの定義にはまっちゃうわけで、こうしたシリアス・ギャグとも言うべき提示はなんだかんだ言って一番イギリスらしいところ。これは60年代後半からスタートする「モンティパイソン」などにも踏襲されていくジャンルとなるわけです。
ラストは『茂みの中の欲望』(1967)を紹介しなければです。

ブリティッシュ・インベイションと称されたこの時代のイギリスの音楽は、ロックであるけれどこれまでのストレートなロックンロールではなく、よりサイケデリックなアレンジに寄ったとても刺激的なものでした。そうしたサウンドもまた映画に取り入れられ、本作は作品自体そんなにメジャーではないけれど、サントラだけは要注目された隠れたモンド映画なのです。音楽を担当したのはスペンサー・デイヴィス・グループとトラフィックという思いっきり正真正銘のバンド衆。

では相当ギャンギャンしているのかと言ったら、いえいえ全然ポップなんです。やはり映画の中で奏でられるとミックス効果でロックもオサレなポップスに変わっていくんですね。サントラだけはめちゃくちゃ評判になって売れに売れたという作品です。

まぁタイトル通りいちいち茂みの中に入って行ってひたすら欲望のおもむくままに…的な、やっぱりこれもただただ女の子を追い掛け回す映画なのですが、その分女の子たちがオサレで可愛い子ばかりなので、観ていて退屈しないのだけは救いでしょうか…。
というわけで、とにかくこれらの作品たちのサントラはDJ諸氏にとっては一時期なくてはならないレコードだったりしたとかしないとか。東京で言えばやっぱりそれはリバイバル・ムーブメントで盛り上がった90年代の渋谷系と称された時代の影響なんですよね。ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、オリジナル・ラブやエル・マロ、サイレント・ポエツにコーザ・ノストラなど、とにかくそれまでの60sや70sのカルチャーを引用しまくりながら、新たなサウンドとともにオサレ・カルチャーを形成していた時代でした。そのルーツとなる音楽たちが、この映画たちに散りばめられているとしたら、これはもう今からだって全然チェックしなくては損!じゃないでしょうか? ではまたカッキンで★

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