レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』先週末から京都にてゆっくりさせていただき、すっかり夏休みボケの志田一穂がお送りいたします。
さて、前回に引き続きジャッキー・チェン映画のサントラ考察、第二回でございます。

重ねてお伝えしますが、志田が丸刈り中学生の頃、ジャッキーはもうヒーローを通り越して、神みたいな存在でして、新作映画を観に行くのはもちろんそのサントラ・レコードにまで手を伸ばしていた時代のお話しですね。
そんなジャッキー映画に違和感を感じたのはまさにそのサントラの中身でして、明らかに香港で作られたオリジナル・サウンドトラックではないナニか、が存在していたと。そもそも歌詞が日本語だったり(香港映画なのに)、作曲コンポーザーが林哲司さんやゴダイゴの面々だったり(香港映画なのに)、そんな逸話を前回はいろいろ紹介させていただきました。

さて、この違和感サントラ、まだまだ他にもあるんですね。ジャッキー映画ブームに乗っかってサモ・ハン・キンポー監督作品『五福星』(1984)も日本にいそいそと上陸してくるわけですが(それはなんてことはない、ジャッキーが友情出演しているから、あたかもジャッキー大活躍的な宣伝を打って集客を伸ばすという、当時の映画業界としては通例アプローチな作品なのですが)、そんなサモハン映画のテーマ曲にも謎すぎるアーティストの起用で再びひっくり返ったのであります。

それがこちらのテーマ曲「SUPER SUPERSTAR」ですね。

この曲、歌詞がしっかりと英語詞で歌われていますし、サモハン監督、ジャッキー出演の最新作ということで、かつて作られた昔の映画の掘り起こし興行でもない。正真正銘の新作であれば、今度こそオリジナルに作られたテーマ曲なのかな?とクレジットを見てみると、なんとそこにはあの陣内孝則さんのお名前が…。いやいやいや、なんでここで陣内さんでてくるんでしょうか、とマジ発狂しそうになりました。当時の陣内さんと言えば伝説のめんたいロックバンド、ザ・ロッカーズを解散させ、ソロ・シンガーとして再度売り出しにかかっていた頃です。そんな彼がなぜカンフーブームに乗っかった映画の(しかもジャッキー作品じゃないサモハン作品の)テーマ曲を高らかに歌っているのかよ、といよいよ「なぜだ!?」「どうして!?」「意味不明!!」と堪忍袋の緒が切れそうになりました。
しかし思えば陣内さんと言えば東映映画『爆裂都市 BURST CITY』(1982 )ですっかり東映御用達になっていたわけでして(当コラム「第21回 映画も暴動ならサントラも暴動だった件」参照)、そこから今度は歌手としてテーマ曲を歌ってもらうかと、東映内部の方々の考えで陣内推しという流れになっていたのかも…と思ったり。

※まぁそんなことがきっかけで陣内さんもこの映画のイベント👆に参加し、テーマ曲を歌う歌手として、初の武道館ライブという経験もされるんですけどね。
そう考えるとですよ、なんとなく、だけど明確に、一つの「理由」というものが頭に浮かんでくるのです。どうしてこんなことになっているのかという理由が。それは、「日本でテーマ曲を作って独自に当てはめている」ということですね。まぁそうとしか思えないことなんですが。要するに、すみません、テーマ曲はこっちで作らせてもらいまので良いですよね?と。テーマ曲があればテレビやラジオで宣伝しやすいということもあるし、プロモーション重視でやらせてくださいよ、ね?権利者さんと。そうだ、きっとそういうことなのだと当時の丸刈り中学生志田は思ったのです。でも、そうしなければならない「事情」までは、このときはまだわかっておりませんでした。とは言え、何はともあれ日本で独自にテーマ曲を作っているのだ、ということだけは受け止めていこうと思い直したのです。その「事情」を突き止めるまでは、このよくわからない香港映画テーマ曲たちを甘んじて受け入れようと。しかし、そんな甘やかしのような受け止めを、さらに奈落の底へ落とすような謎テーマ曲がその後またまた登場したのですね。
こちらは松竹洋画系が新作の公開権利を香港からぶんどってきた『ファースト・ミッション』(1985)という作品で、これもまたサモハン監督・出演、そして今度はジャッキーが主演のアクション・ヒューマン・ドラマ作品です。

このテーマ曲がまさに奈落の底レベルでした。歌っているのはジャッキー自身なので、遂にリアルタイムでオリジナル・テーマ曲がご披露されるのか!と期待していたら、またまた歌詞は日本語で、タイトルが驚愕必至の「TOKYO SATURDAY NIGHT」ですよ。え?英語表記じゃわかりづらい?「東京サタデーナイト」ですよ!これでどうだ。

こんな演歌のタイトルみたいな曲が劇場で、しかもエンディングで爆音で流れたとき(もちろんジャッキーものだからNG集のエンドロール)、わぎゃー嘘だろ!?と耳を疑いました。香港映画で香港が舞台の作品なのに「東京~サタデナイ~」ですから。映画の中のどこに東京が?映画の中でいつサタデーが?ナイト~とかって、もうタイトルのみならず楽曲もバリバリ演歌調ですけど??と。いや、これについても百歩譲って受け止めましたよ。だってそうしようと決めたわけですから。ジャッキーに歌ってもらって映画との親和性も出せると考えたのねと受け止めますよ。しかし、しかしですよ!東京サタデナイはないだろう!!と気絶級に怒りましたね。その歌を、楽しいはずのNG集とともに聴いていると、なんだか全然楽しくなくて、とにかく物凄い怒りが沸いてきてしまったりしたんですね。これまでは面白がって呆れたりなレベルでしたけど、これはもう告訴レベルでした(いやほんとに)。
松竹洋画系は、東宝洋画系のリアルタイム・ジャッキーや、東映の掘り起こしジャッキーに遅れをとるまいと新作の劇場公開権利を買ってきたはいいけれど、こんなミスマッチなテーマ曲を映画にぶちこんでしまって本当にその罪深さと言ったらめちゃくちゃ深いものがありましたね。しかし松竹もこと日本側のテーマ曲に関しては、思い起こせば前科があったんです。1983年、まさにジャッキー映画と並行してブームの火付け役になった『少林寺』(1982)の続編として製作された『少林寺2』ですね。

こちらを配給公開したのが松竹で、このときテーマ曲のボーカルにはプロレスラーのザ・グレート・カブキが起用されており、文字通り何よりもグレートな謎を提供してくれていたのです。そうなのです、掘り起こすともうどんどんそうした謎カンフー映画が出てくるのです。
ちなみに『少林寺』第一作目は東宝洋画系(東宝東和)配給作品ですが、この『少林寺』にも日本で製作した楽曲があり、ちゃんとレコードにもなって販売され、プロモーションでもガンガン使われておりました。

東宝東和の潔いところは、日本でオリジナルで作ったテーマ曲に対して、テーマ曲とは言わずに、あくまでイメージ・ソング(テーマ)であると、そう言ってレコード・ジャケットにも掲示していたことですね。これだったらわかるんです。あ、イメージ・ソングなのね?と。劇中にも流れるけれど、それは映画とのコラボ的なもので、決してオリジナル曲ではないってことですと。そうなると、ちょっとさらに「事情」について推測できることが出てくるのです。それは他でもない、目的は「宣伝演出」なのではないか、ということですね。
この頃のジャッキー映画に対してのイメージ・ソングは、さすが東宝東和、例えば『少林寺』にしてもジャッキーの『ドラゴンロード』(1982)にしても、インストゥルメンタルがメインなので違和感が他と比べるとあまりないのです(ちなみに「ドラゴンロード」インストにコーラス参加しているのはあのタイム・ファイブ!)。

もちろん英語詞のサブ・テーマ曲なんかもあるのですが、それらも割と当時の「洋楽ロックのテイスト」でまとめていて、逆に映画の中で流すと、妙にマッチしてそのシーン自体がよりカッコよくなっていくんですね。
要するにいいイメージ・ソングを作りましたよと。だから日本公開バージョンにはこれもくっつけて上映すればよりお客さんに楽しんでもらえます。だからいいですよね?と、そう香港サイドの権利者に許諾をとっていたのではないか…と。そんな「演出論」という考え方も、当時勝手に思ったりしていましたね。そうした中で、インストゥルメンタル曲のイメージ・ソングで最も成功し、またその後もさまざまなフィールドにスピンオフされ、名曲として語り継がれているのが『スパルタンX』(1984)のテーマ曲でしょう。

奇しくもこれもまたサモハン監督作品。ジャッキーとユン・ピョウのダブル主演にして、さらにスペインでのオールロケ超大作で話題になった本作ですが、日本側にて製作した軽快でパンチのあるメロディー満載のテーマ曲は、テレビのプロモーションでもそのサビのメロディーが印象に残り、レコードの売り上げもダントツに伸びていったそうです。さらにその後、プロレスラーの三沢光晴の入場テーマ曲としてもリバイバル的に人気を博したり、プロ野球では読売巨人軍のチャンステーマ曲としてももてはやされたりしました。松竹も、こうして映画や他の場にもウケるようなインスト名曲を「演出力」重視で映画とコラボさせれば、せっかくのいい映画を楽曲一つで台無しにすることもなかったのではと思うんですけどね(東映もな)。
さて、そんなわけで第二回目もある意味かつての志田の勝手な推論ばかりでまとめてしまいました。が、しかしこの流れにはまだまだウラがございます。いい加減そのウラを語れよという声が聞こえてきますが、それはいよいよ次回ですね。本当のウラの話をさせていただきますので乞うご期待です。それまではカンフー映画インストテーマ曲たちをいろいろ探して、聴いてみてくださいませ…。
このサントラ、ちょっとレア。#00〜#32のオモシロサントラエピソード、まとめてどうぞ!
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