レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』 いよいよ梅雨も明けそうですが、どんだけ湿度と戦ってますか?じめじめムレムレで相変わらず拙書を売り歩いております、志田一穂でございます。

さて、この連載のちょうど二つ前にドロップしました第29回「スパイにカンフーにラロ・シフリンは戦う作曲家な件」ですが、このサントラ、ちょっと、レア。第29回 スパイにカンフーにラロ・シフリンは戦う作曲家な件 | sono – DJやアーティストの最新クラブイベント情報・楽曲情報が集まる音楽メディア なんとそれから20日後にまさかのラロ先生逝去…。思わず絶句し、また一人巨星堕つと心の中で号泣いたしました。ですので今回は出来る限りラロ先生の名作映画音楽を紹介していきたいと思います。「ダーティー・ハリー」「燃えよドラゴン」「スパイ大作戦~ミッション:インポッシブル」は前々回紹介したのでそれらは割愛で。
ラロ先生はジャズ畑出身で映画音楽にもかなりのノリでグルーヴィンなジャズ・サウンドを投下していたことは既にお伝えしました。そんなブリブリなグルーヴで映画を楽しませてくれる作品がまだあります。スティーブ・マックイーン主演「ブリット」(1968)ですね。

このメインテーマははっきり言って普通にフロアへブチ込めます。それぐらいクールで渋いンです。サウンドトラック・アルバムには「ルーム26」なんていうメロウ・グルーヴな曲も共存してまして、そんな曲においてはラウンジ・プレイにもばっちり持ってこい。さすがジャズィンなラロ先生のアプローチ。持っときましょう「ブリット」のサントラ・ヴァイナル。かなり重宝します。
やはりスティーブ・マックイーンが主演した1965年の「シンシナティ・キッド」もまた格別なサウンド。

オーケストレーションをベースにしているのにどうしてこんなにノレるのか。華麗で優雅なアレンジングをワルツに乗せたピアノソロに、急展開していきながらもナチュラルすぎな秀逸の構成。これ映画を観ていなくてもレコードを聴くだけでその世界へ没入できること確実です。要するにレコード自体もはや映画。ラロ先生の真骨頂。マストバイです。
テイクファイブばりのリズムで意気揚々とまくし立ててくるのがテレビドラマシリーズの人気作、「マニックス」(1967)のサウンドトラック。

ビッグバンド・ジャズのスタイルと、ビヴラフォンもフィーチャーしたなかなかのモンド仕様で、これもまたヴァイナルはDJユースな一枚。内容が私立探偵アクション系なので、どこかユーモラスなメロディ・ラインも活かされており、聴いていて楽しいテーマ曲です。最近レコ屋でとんと見なくなりましたが…(昔は安く買えました)。
リラクシンでソフトリーなテーマ曲といえば「暴力脱獄」(1967)がオススメです。

アコースティック・ギターをつま弾きながらの美しいメロディーを聴かせてくれるテーマ曲。これがラロ先生の曲?と一瞬耳を疑うほど優しい楽曲です。タイトル通りちょっと物騒なテイストの映画なのでスリリング溢れるトラックもアルバムには多々ありますが、基本的にはギターによるブルージーな曲も散りばめられていて、これもラウンジ・フロアには持ってこい。本作は是非サントラだけでも聴いてみてほしいですね。第40回アカデミー賞作曲賞にもノミネートされました。
こちらも翌年、1968年の第41回アカデミー賞作曲賞でノミネートされた、「女狐 The Fox」。

これはもうじっくりまったり雨の日なんかに静かに聴きたいテーマ曲。フルートなどによる主旋律がまたじわじわと心に響くんですよね。だけどこれもサスペンスフルな作品なので、隙あらば容赦なく不安を煽るフレーズが現れるのでご注意を。しかしラロ先生はジャズ・サウンドにこだわっている方だとばかり思っていましたが、こと映画音楽に関してはかなりの引き出しを持っていらっしゃる様子。それをさらに感じたのが「鷲は舞いおりた」(1976)でした。

このテーマ曲は凄いですよ。何が凄いってストリングスの使い方ですね。スピーディーに反復奏が用いられ、それにより気持ちも高揚、聴いているだけで興奮してきます。第二次大戦末期の緊張感と、いよいよ決戦の時となった緊迫感。これらがミックスされ、映画本編のクオリティーを完全に補完した存在となっていることがわかります。
そして皆大好き1977年の「ジェット・ローラー・コースター」ですね。

まあ皆と言ってもサントラファンの方々皆って意味なんですけど。で、これは日本のテレビ番組やラジオ番組などでもちょこちょこと使用されていたので、実はけっこう知っている方も多いのではないかというテーマ曲。しかしサントラファンが全編を通して聴くと、なかなかどうして、ラロ先生の得意技全部乗せみたいな贅沢極まりない造りになっていると感じるのですね。クール・グルーヴ、シンセサイザーを起用した斬新な味付け、轟くホーンセクション、そして印象的なフレーズで映画のライトモチーフを惹き立てていたり。時代的にファンクみも感じさせるところもあり、それはそれでご愛敬。やっぱりラロ先生はこのようなイケイケドンドンなサントラを作らせたら世界一だなと感じる逸品。当然フロア投入無問題な一枚です。
最後は「燃えよドラゴン」チームで作った、ジャッキー・チェンのハリウッド進出第一弾という記念すべき作品「バトル・クリーク・ブロー」をご紹介。

これもまたシブい。シブすぎなテーマ曲なんですね。まずシンプルなジャズ・セットによるライブ感溢れる演奏が堪らない。ウッドベースによる生々しいビートにシンプルなドラミング。そして何よりメロディーラインを口笛とフルートのユニゾンで攻め立ててくるという、ブルース・リーのあのドラゴン・サウンドとは一線を画す出来栄え。物語の舞台が1930年代のシカゴということもあり、その雰囲気、空気感をこんなにまでイメージングされるとは。これもまた職人技です。ラロ先生ならではの成せる名曲かと。
いやしかしやっぱり惜しいですね。亡くなられたこと、まだ信じがたいのであります…。

そんなわけで、期せずして追悼することになってしまった名作曲家、ラロ・シフリン氏のオススメ楽曲を思いつくままに紹介してみました。これは自分の番組でも多々OAしたいですね。来週7月11日金曜日の湘南ビーチFM「seaside theatre」(23時より)では、ラロ先生の追悼コーナー、このコラムにあわせてちょっと構成してみたいと思います。こういう機会がないと聴くことのない楽曲も多いのではないかと。是非素晴らしいサウンドトラックたち、体験してみてくださいませ。ではまたカッキンで。
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