レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』 中学生時代はマルガリータでした。志田一穂がご案内します。

さて、掲題の通り、実はいまさらジロー的に、ジョン・ウィリアムズという天才作曲家についてお話したくなってしまったのですね。なぜかと言うと、先日某映画音楽イベントに出向いたところ(いわゆるサントラコンサートです)、そこで滅茶苦茶久しぶりに、映画『スペースキャンプ』(1986)の音楽を爆音で聴かされたのです。

それがもう懐かしいわ、素晴らしいわで、興奮のあまり記憶も飛んでしまい、あれ?これ誰の音楽だっけ?いやいやジョン・ウィリアムズじゃん!そうだそうだこれはジョン・ウィリアムズなんだよ、なんでそんな大事なことを失念してんだオレのバカバカ!と、表情はにこやかに拝聴しながらも、心の中では自らを物凄い勢いで叱責していたのでございます。
要するにそのとき思ったのです。これまで随分とマニアックなサントラ(つまりレア)ばかり、これ見よがしに紹介してきてイイ気になっていたけれど、そもそも、もっともっと多くの讃えるべき天才作曲家たちがいたじゃないかと。で、このコラムのテーマに沿って言えば、そのような方々にだって、実は隠れた名曲というか、作品は大きなヒットには恵まれなかったけれど、音楽は最高だった!という作品、たくさんあるじゃないかと。ジョン・ウィリアムズの『スペースキャンプ』を聴いて、沸々とそのように思ったわけです。ですから今回からそんなコラムも定期的にお送りしていきます。これはもう全人類に聴いていただきたい素晴らしいレア・サントラばかりですから。

というわけで、天下のジョン・ウィリアムズによる映画音楽。そういう意味では『スペースキャンプ』という作品、子供たちがNASAのトレーニングセンターで夏休み実習(これをスペースキャンプという)を楽しんでいたとき、なんと誤作動によって彼らが乗っていたスペースシャトルが、宇宙へ発射されてしまうという(おいおい!)。ストーリーはマンガ的だけど、実際に起こったら結構ゾッとする内容の宇宙もの、なのですが、そこにキッズものまで併せ持たせた割には、語り継がれるほどのヒットには至らなかったと、そんな作品なのですね(個人の見解です)。
しかしやはりそこは『スター・ウォーズ』に『E.T.』と名曲を生み出しているジョン・ウィリアムズです。見事な楽曲たちを携えて映画本編を完璧にフォローしてくれているので、結果中身はかなりゴージャス&面白い!(個人の見解です)。で、こちら、公開が1986年ということで、この二年前にはあのロス五輪の公式テーマ曲も発表していたジョン・ウィリアムズですが、なんとなくこの『スペースキャンプ』のテーマ曲、冒頭のファンファーレがロス五輪チックで思わずニヤリとしてしまうんですよね。

お次はあのスティーブン・スピルバーグ監督との初タッグ作品の音楽です。スピルバーグとジョン・ウィリアムズって『ジョーズ』が最初じゃないの?とずっと思っていたのですが、実はその前があったんです。『続・激突!カージャック』(1974)がそれですね。

この作品、すみません毎度ツッコむんですけど、この邦題…酷くないですか?スピルバーグのテレフィーチャーにして初劇場公開作となった『激突!』(1971)が世界中で評価され、日本でも公開されてそこそこヒットしたので、次のスピルバーグ作品も車ものだから「続」って付けちゃえ!という…。日本の配給宣伝会社の浅はかすぎる発想と、宣伝メインのためだけの姑息なアプローチでしかないことが手に取るようにわかります。原題は「The Sugarland Express」とカッコいいのに、ですよ。

まぁそれはともかく、この作品でジョン・ウィリアムズが素晴らしい音楽を提供してくれているのです。しかもお得意のオーケストレーションではなく、ブルースハープをフィーチャーした、ロードムービー風のシンプル&クール、かつジャジーな楽曲がテーマ曲として登場。ウィリアムズの意外な側面が聴けつつ、その雰囲気からは決して「激突!」と名のられるような作品ではないということが伝わってきますので、こちらも是非聴いていただきたいのであります。
もう一ジャンル、紹介させてください。一ジャンルとあえて言うのは、ジョン・ウィリアムズの映画音楽には大きく分けて、①オーケストレーションもの ②ジャズ・テイストのもの ③ソロ楽器フィーチャーもの と、三つに分けられると思っているのです。前述の『続・激突!カージャック』などは②に該当するのではないかと思いつつ、一方でご多聞にもれず、スティーブン・スピルバーグ監督は社会派作品なども不定期ながら多々発表してきているわけでして。例えばナチスドイツの凄惨な描写で話題となった『シンドラーのリスト』(1993)ですとか、

例えばオリンピックのテロ事件を描いた『ミュンヘン』(2005)ですとか、

あるいはベトナム戦争の機密記録を暴露したワシントンポストのジャーナリストを追った『ペンタゴン・ペーパーズ / 最高機密文書』(2017)ですとか。

もうこれらには『インディ・ジョーンズ』や『ジュラシックパーク』などの要素は皆無。すべてが実話の映画化で、作品として後世に残すべき重大案件ばかりなのですね。そしてその度に、ジョン・ウィリアムズの音楽も変化自在に、効果的なサウンドを作り上げてきているわけです。この社会派作品たちを③のソロ楽器フィーチャーものとして捉えるとするならば、その楽器とはまさにピアノなのであります。

ジョン・ウィリアムズはもともとはジャズ・ピアニストで、一時期ヘンリー・マンシーニの楽曲レコーディングでもピアニストとして活躍していました。ですから基本メロディーメイキングは最初はピアノからなのです。しかしそのピアノ自体を全面的にフィーチャーする作品はあまり多くないと。やはり壮大なオーケストレーションが氏の十八番なわけで、こうした真に迫る実話ドラマ映画にこそ、そのシンプルかつ切ないメロディーでピアノの旋律を響き渡らせているのです。『シンドラーのリスト』のテーマ曲のリプライズ・バージョンなどはピアノメインで演奏されていてとにかく泣けてきますし(メインでフィーチャーされているイスラエル出身のバイオリニスト、イツァーク・パールマンの演奏ももちろん落涙もの)、『ミュンヘン』『ペンタゴン・ペーパーズ』などはオーケストラとピアノが絶妙に交差させながら、その実情の悲哀さを表現しているので、これらもジョン・ウィリアムズの、さらなるもう一つの側面として是非聴いていただきたいレアなサウンドトラックなのです。
というわけで今回は大御所にしていまだ現役の天才作曲家、ジョン・ウィリアムズの楽曲たちを紹介いたしました。この天才作曲家シリーズはまたやっていきます。なにしろたくさんいらっしゃいますからね。因みに、今回紹介した楽曲群はすべてサブスクで聴けるので、是非ご試聴くださいませ。
では次回もカッキンで。
志田の映画音楽番組、湘南ビーチFM「seaside theatre」もよろしくです!