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第2話:「出会いの音」

メタバースの世界に入ったたくちゃんは、広大なデジタル空間を歩き回っていた。無限に広がる街並み、浮遊する広告、カラフルなアバターたち——だが、誰も彼を気に留めない。

(結局、リアルもメタバースも変わらないのかよ…)

人の輪に入ろうと試みるも、すぐに空気のように扱われる。話しかけても返事はない。途方に暮れた彼は、虚空を見つめながらため息をついた。

そんなとき——

「♪ジャーン♪」

どこからかギターの音が聞こえてきた。

たくちゃんのスピーカーの頭がビビッと震える。これは…音楽?リアルの世界では気にも留めなかったが、なぜかこの世界では、音がやけに心に響いた。

音のする方へと歩いていくと、そこにいたのは——

「Yo!調子はどうだ?」

陽気にギターをかき鳴らしながら歌っている男、Zunさんだった。彼のアバターはドレッドヘアのレゲエシンガー。カラフルなラスタカラーの網シャツを着て、サンダルでステージに立っていた。

たくちゃんは思わず立ち止まる。

(なぜだ…?この男、なんか…懐かしい匂いがする)

Zunさんはニヤリと笑って、ギターをかき鳴らす。

「お前さん、どうした?そんなションボリ顔して。音楽は心を癒やすぜ?」

「…俺、音楽なんてやったことないですよ」

「関係ねぇよ!感じるか、感じないかだ!」

たくちゃんは思わず口を閉じる。

Zunさんはギターのリズムに合わせて、メタバースの人混みの中で即興の歌を歌い始めた。

「♪おいでよ、お前のリズムで〜
 落ち込んでる場合じゃねぇ〜♪」

軽快なビートに、たくちゃんのスピーカーがまたビリビリ震える。なぜか心が軽くなったような気がした。

Zunさんは手を差し出す。

「お前もやってみろよ。リズムに乗れれば、もう仲間だ!」

たくちゃんは迷った。だけど、もう一度Zunさんの顔を見ると、彼の無邪気な笑顔につられて、口を開いた。

「…Yo、メタバースに迷い込んだ俺
 リアルじゃボロボロ、心はゾンビ
 でも今聞こえたこのレゲエのリズム
 もしかして俺、生きてていいのかも?」

Zunさんは驚いた顔をしたあと、豪快に笑った。

「Ha-ha-ha!最高じゃねぇか!お前、ラップの才能あるぞ!」

たくちゃんは、自分のスピーカーヘッドをポリポリ掻く。

(俺が…ラップ?)

「いいねぇ!これでお前も音楽の世界に片足突っ込んだな!」

Zunさんはギターを鳴らしながら、嬉しそうに叫ぶ。

たくちゃんの心に、小さな灯がともった気がした。

音楽って、もしかしてすごいものなのかもしれない——。

(第3話へ続く)

〜sono限定で読める〜

・メタバース×音楽小説

※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。