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このサントラ、ちょっとレア。第7回 バージョン違いにゾクゾクするのは自分くらいな件

レアとおぼしきサントラを独断で紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』映画がエネルギー源の志田一穂がご案内してまいります。

さて、バージョン違いにゾクゾクすると言う、いきなりフェチ気味なテーマなんですけれども、そもそもバージョン違いと言うのはどういう意味なのでしょうか。これ実は映画音楽ならではのお楽しみでございまして。映画というものは劇中、テーマ曲や主題歌などが別アレンジになっていろいろなシーンで登場するものなのですね。テーマ曲が激しくなったり切なくなったりとアレンジされたり、主題歌がインストバージョンとかロングバージョンになって登場したり。要はそのたびに、映画好きとしては「バージョン違いが来たぞー!アレンジ違い発見ーっ!」と、観ながらにして嬉しくなって心の中で叫んだりしているわけです。まぁフェチですね。なので、こうした発見の中にはレア・サントラと言うべき楽曲もあり、今回はその中からいくつか紹介したいのです。

まずは不朽の名作『明日に向って撃て!』(1969)です。こちらの主題歌はB.J.トーマスが歌う「雨にぬれても(Raindrops Keep Fallin’ On My Head)」が、ご多聞にもれず映画同様に大ヒットした楽曲ですけれども、劇中シーンに合わせてかなり面白いアレンジ曲がございます。タイトルは「On A Bycycle Built For Joy」。この楽曲、こんなタイトルなのに最初から「雨にぬれても」が登場するんです。思わずジャケットの楽曲クレジットを確認しましたね。おかしいな、これ違うタイトルなのに「雨にぬれても」をずっと歌ってるぞ?と。

しかし途中で突然リズムが速くなって、なんだか慌ただしい「雨にぬれても」になっちゃった。あのゆったりまったりの主題歌はどこへやらです。これは映画のシーンに合わせてアレンジされた、れっきとした別楽曲。だからタイトルも違うし、作曲とアレンジを担当しているバート・バカラック御大の、ある意味巧みな編曲テクニックが堪能できるレア・サントラなわけです。このように違う展開になる主題曲、劇場で観ていると結構ハッとさせられるんですよ(僕はね)

そして同じような別バージョンとして、劇中登場する作品が、あの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの最終作『Ⅲ』(1990)なんですね。本作の舞台はタイムスリップして西部の時代となっているため、音楽全体も古き良きジョン・フォードの西部劇的な調べになっていて、アラン・シルヴェストリによるテーマ曲も『大いなる西部』や『黄色いリボン』、そして『荒野の七人』などにリスペクトしたような勇ましいアレンジで登場するのです。が、注目は主題歌のヒゲオヤジ・ツインズ、ZZトップによる「Double Back」なのです。この曲、エンディングで鳴り響くハードなギターロックナンバーなのですが…

なんと劇中ではアコースティック・ギターによって、軽やかでクラシカル、かつトラディショナルなアレンジとなって登場するのです。しかもそれを町のお祭りシーンでZZトップ自身が出演し演奏するという、やや目立ちながらのカメオ出演。その曲に合わせて村人たちが楽しく踊っているのを見ると、あのハードなギターロック曲が、これまた随分と可愛いダンス・ミュージックにアレンジされましたねと、ちょっとほっこりしてしまうんですね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌といえばヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが定番ですけれども、この『Ⅲ』ではこうしてZZトップの楽曲が思いっきりフィーチャーされているわけですが、そもそも彼らのルーツはグッド・オールド・ロックンロール。そしてこれらの起源はもともとブルースであり、トラディショナルであると。そういった意味では西部の時代にZZトップを持ってくるとは、かなり粋なブッキングですよね。とにかくそんな別バージョンが劇中聴ける本作。なんともこういう音楽の使い方、とてもとてもニクイねとまたまたほくそ笑んでしまうんです(はい、僕はね)。

あ、こちらは時代的に8cm CDシングルも。BTTFファンなら持っていたいレア・アイテム!

さて、最後にご紹介するのは皆大好き『タイタニック』(1997)です。こちらはセリーヌ・ディオンが歌う主題歌「My Heart Will Go On」劇中セリフMIXという別バージョンがありまして、しかもこれは「Back To Titanic」というサウンドトラック盤の第二弾としてリリースされたCDでしか聴けないレア・サントラなんですね。サントラ第二弾なんて映画が大ヒットしないとリリースできないから、さすがタイタニック!なんですけれども。

で、せっかくもう一枚サントラ出すのだから「主題歌をそのまま入れてもつまらないわね?」とセリーヌが言ったかどうかは知りませんが、歌の途中でレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットによる会話のセリフが被ってくるという、なかなかファン泣かせな別バージョンとなっているのです。そもそも、かつてのサウンドトラック盤=映画音楽レコードには、出演俳優たちのセリフなどが一緒に収録されていたりしましたよね。当時はまだビデオがなかったため、こうしたサントラ盤を聴いて気に入った映画を反芻したりしていたわけです。実は最近もたまにこういう構成、見かけます。アクセントとしてセリフも収録しているサントラ盤。そうなんです。あくまでもアクセントとしての使用なんですが、それでもちょっとレアだからニヤリとしてしまうんですよね。DJなどでいきなりこういう楽曲をぶち込むと、あれ?このバージョンなに?と騒いでくれる人もちらほらいますので、実は活用率が高かったり。というわけでこれからもどんどんレア・サントラ探していきますよ!ではまたカッキン(隔週金曜日更新)で!

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音楽/アラン・シルヴェストリ 主題歌/ZZトップ

>>>CD, Apple Music, Spotify

志田一穂がジョニー志田名義でお送りしている湘南ビーチFM/SBCラジオ『seaside theatre』にて、今回紹介したサントラ数曲を番組でもOAいたします!こちらから聴いてね!(何をかけるかはお楽しみ!) 湘南ビーチFM | Shonan BeachFM 78.9

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