レアとおぼしきサントラを独断で紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』映画大好き志田一穂がご案内してまいります。
今回はサントラを楽しんでいたらなかなかイイAORサウンドを見つけちゃったので、そのあたりをご紹介していこうという、夏ですからね、激暑ですけどAORで少なからず涼をとっていただこうという回でございます。
まずこちらはAORのディスクガイドにも載っている、定番ですが一応ジャブで投げておくべき作品と楽曲。1980年の『サンフランシスコ物語』とそのサントラですね(なぜかLP発売時の帯タイトルは怪しい書体の「ドリーミング」。青春映画なのに…)。『オーメン』(1976)やら『スーパーマン』(1978)やら『グーニーズ』(1985)やらと、人気作ばかり監督しているリチャード・ドナーの作品なのですが、実は結構この『サンフランシスコ物語』は誰も知らない。しかしそんな映画だからこそレア・サントラが隠れているのです。サントラ盤の中身は80sお馴染みのボーカル曲コンピなのですが、メンツを確認すると驚くことに、ボズにイーグルスにパブロ・クルーズ、レオ・セイヤーにスピナーズとなかなかのツワモノ揃い。しかし一番のレアものはアンブロージアによる、ここでしか聴けない「Outside」という、デヴィッド・パックとマイケル・マクドナルドによる初共演作。どこか初期ケニー・ロギンス(&メッシーナ)を思わせる爽やかな名曲なのであります。取り急ぎ、夏レジャーのマストサウンドとしてお聴きいただきたい。
で、レアAORサントラ。そんな妙なジャンルの大魔王と言えばやはりデヴィッド・フォスター卿ということになってしまうんですね。
『セント・エルモス・ファイヤー』(1985)や『摩天楼(ニューヨークと読んでね)はバラ色に』(1987)などへ、スウィートでエレガントなAORサウンドを提供してきたことは有名ですが、他にも結構細かい映画音楽のお仕事、されているんですよね。
『君がいた夏』(1988)
デヴィッド・フォスター節全開のテーマ曲は、まさに誰もが、“君といた夏”を思い出さざるを得ない切ない一曲。シンセとストリングスにしっかり包まれながらも、胸を突くエレキギターのメロディーがナチュラルに共鳴。これぞ80s AORインスト。その王道的サウンドを是非チェックしていただきたいです。他にもフォスターならではのインストが映画全編に塗されているので、その気持ちのいいサウンド効果もあってか、作品自体も一部映画ファンから圧倒的支持を受けているなかなかの佳作です。
『ゴーストバスターズ』(1984)
いきなりゴーストバスターズ??…ですけど、とにかく80年代の洋画サントラはロック&ポップスのごった煮コンピスタイルなので、こんなコメディー映画にも潜んでいましたフォスター・サウンドが。オーストラリアのシーサイド・デュオ、エア・サプライによるI Can’t Wait Foreverです。プロデュースはもちろんデヴィッド・フォスターで、共同作曲としても参加している熱の入れよう。あまりにも美しいこのAORバラード、一体映画の中のどこにかかっていたの?と記憶を辿ってしまうのですが、まぁ全然思い出せない。この頃の洋画って、ホント音楽ってそんな感じでチョロっと使ったくらいでサントラに盛り込まれていたんですよね。
『セカンド・チャンス』(1983)
こちらはあの『グリース』(1978)の二人、オリビア・ニュートン=ジョンとジョン・トラボルタが再共演して話題となった作品。オリビアが映画に登板となれば必ず歌唱フィーチャーされるのは定番なので、もちろん本作でもしっかり歌いまくっているのですが、そんなサントラの中に一曲、なぜ?という謎の存在感を炸裂させているのが、重鎮ボズ・スキャッグスなんですね。しかもプロデュースがまたまたデヴィッド・フォスターという、AOR二大巨頭がこんなところでタッグを組んでいるなんてと驚きもひとしお。その楽曲The Perfect Oneはこれぞボズ!これぞフォスター!な名曲。フォスターは自身のピアノをフィーチャーした泣きのインスト、Night Musicも提供していて、こちらも情感揺さぶられる楽曲。まったくなんという贅沢なオリビア映画でしょうか。
さて、最後はAORとして紹介することが正しいのかどうか、自身も結構迷いがありますが、総体的に考えた上でご紹介したいのがマイケルJフォックス主演『再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ』(1988)ですね。
こちらに当時新曲として提供されたのがドナルド・フェイゲンのCentury’s Endです。そもそもAOR=アダルト・オリエンテッド・ロックなんてネーミングは日本が独自に作ったジャンルであり、そこに属するアーティストやバンドなども時代性を感じるサウンドによって、勝手に集約されたものでして。毎度思うのはフェイゲンの前身、スティーリー・ダンをAORと呼んでいいのか?ついてはフェイゲンだってどうなのだ?と思ってしまう、それが前段躊躇した理由なんですね。じゃあなんだと言われれば、プログレじゃない?とかよく友人と話したりするんですが、まぁ日本では申し訳ないんですけどAORってことに(いつもひとまず)なっちゃうんですけどね。で、Century’s Endですよ。ゴリッゴリのフェイゲン・サウンドが映画の無機質な都会の空気感にバッチリフィットし、本作のテーマ曲としてしっかり君臨しております。AORってとかくシーサイドなノリがあるんですが、一方でこうしたアーバンなノリってのもあって、多分そこがAOR論の分かれるところだったりするんですかね。
では今回のオマケ。実はワタクシ、もともと何年か前に「波の数だけAOR」というふざけたタイトルのラジオ番組をやっていたんですが(湘南ビーチFMにて2021~2022)、そのときに発見したレアAORサントラの中に日本映画もありまして、それが未だにCD化されていない噂の『限りなく透明に近いブルー』(1979)なんですね。村上龍原作にして第一回監督作品。ここに集まったメンツがハンパなくて、山下達郎に井上陽水に小椋佳に上田正樹、そしてカルメン・マキといった壮絶さ。しかもほぼ皆さん洋楽をAOR調でカバーしているから、原作の退廃的な若者たちの狂った日常はどこへやら。サントラレコードはなかなかゆるくて気持ちのいい内容となっております。(気持ちよすぎて楽曲権利処理が大変。DVDも出ていません笑)
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志田一穂がジョニー志田名義でお送りしている湘南ビーチFM/SBCラジオ『seaside theatre』にて、今回紹介したサントラ数曲を番組でもOAいたします!こちらから聴いてね!(何をかけるかはお楽しみ~) 湘南ビーチFM | Shonan BeachFM 78.9