レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』志田一穂が、今回もご案内させていただきます。

さて、今回はスパイダーマン新作公開にあわせてのMCUの音楽についていろいろつっこんでいきたいと思っております。とにかく初期MCUの『アイアンマン』(2008)からAC/DCは使いまくるわ(2でもガンガン)、あとブラック・サバスにアイアンマンのテーマを歌わすわで、結構ヒーローものにはゴリゴリのハードロックが似合ってしまうのね、とプチ感動したのですが、そのあたりのロック系引用曲を掘り下げていくと果てしないので、あえて劇伴=音楽の方をフィーチャーしたいのです。

『アイアンマン』シリーズではトータル3作違うコンポーザーが劇伴=音楽を担当しているという面白い差別化が図られています。まず第一作の『アイアンマン』の音楽を担当したのがラミン・ジャバディですね。イラン系ドイツ人のラミンは、あのハンス・ジマーに認められて彼のチームに入り様々なサントラを手がけていくことになりますが、本作で2009年のグラミー賞、最優秀スコア・サウンドトラック・アルバム (映画・テレビ) 部門にノミネートされる快挙を成し遂げるんですね。さすがチーム・ハンスの淀みない評価取りです。
しかし彼の実力が開花するのは実は映画ではなくて、2018年のプライムタイム・エミー賞で作曲賞シリーズ部門を受賞した、ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』なのでした。その他にもドラマやゲーム・サントラなど幅広く活躍していますが、MCUに再登板するのはまさかの『エターナルズ』(2021)というある意味レア作品。それでも復活登板したラミン劇伴は神秘的なサウンドでやっぱりゲーム的アプローチを感じさせ、適材適所とはこのことかと感じる次第。

『アイアンマン2』(2010)ではジョン・デブニーが音楽を担当しますが、残念ながらこの2ではクイーンにクラッシュにビースティ・ボーイズに2パック、ダフトパンクにアヴェレージ・ホワイト・バンドにもちろんAC/DCとロック引用曲が前作にも増しててんこ盛り。なかなか劇伴の印象が薄いままなんです(いや、それでもしっかり聴かせるところは聴かせてくれますが)。
しかしこれが『アイアンマン3』(2013)になると泣く子も黙るブライアン・タイラー兄貴が担当し一気にMCUサウンドの確立へと突き進み始めるんですね。

ブライアン・タイラーはもともと映画コンポーザーの大家、ジェリー・ゴルードスミスが体調不良のため継続出来なかったサントラの仕事を後任として務めたことが大きいのです。その映画サントラが『タイムライン』(2003)で、ブライアはこの大仕事で一気に注目を浴びたコンポーザー。その後ジェリーのオリジナル・サウンドトラックを生かした『ランボー/最後の戦場』(2008)も任され、ハリウッド内での信頼度もよりゲット。『ワイルド・スピード』シリーズや『エクスペンダブルズ』シリーズで、文字通りワイルドなサントラ・コンポーザーとして名を馳せ、満を持して『アイアンマン3』に辿り着き、シリーズ中一番人気と言われているエンディング曲となったテーマ・トラック「Can You Dig It」を投下。

まさにこれぞMCUサウンド!とお墨付きをもらったかどうかは正直定かではありませんが…、同年素早く『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)の音楽も担当しているということなので、まぁ、お墨付きについては間違いなく、そういうことでしょう。

さて、ここで『アイアンマン』の変遷をお伝えしたのは、続いての本命アベンジャーズ・シリーズを解説していきたいからなんですね。MCUが面白いのはこうして一人のコンポーザーに(結果として)固執することなく、様々なサウンド・プロデューサー(兼コンポーザー)を多角的に起用することによって、これこそがビジネスライクにブランディングしていく一つの方法論だという気づきを得たのではないかと(ホントにあくまで結果として)。だから『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)から始まる膨大なMCU作品リリースに対応できるよう、改めて作戦が立てられたのではないかとも思うのです。※個人の見解ですよ
さて、まずこのキャプテン・アメリカが、あえて言えばアベンジャーズ・シリーズの序章的な位置にいるならば、次作の『アベンジャーズ』(2012)へと繋がるため必然的に同コンポーザーでまとめておきたいと。ここで登場するのがもはや重鎮、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)など、ロバート・ゼメキス作品でおなじみのアラン・シルヴェストリなんですね。

シルヴェストリはここでアベンジャーズのコンセプトをしっかりと表現した名テーマ曲を提供していますので、このあとはそれを元に他のコンポーザーが手掛けていってもなんら問題ないという、MCUならではの仕組みができているわけです。なので次作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)では、そのテーマ曲を生かしつつ、ダニー・エルフマンと、(三たびの)ブライアン・タイラーが共同でこの大作を料理していくことになると。
この2015年には『アントマン』シリーズも並行してスタートしていますし、アベンジャーズ・シリーズの重要作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)も公開されています。前者ではクリストフ・ベックが本シリーズ全作を担当し、後者ではヘンリー・ジャックマンが登板してますね。

ヘンリーにおいては『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)で既に音楽を担当しており、そういう意味ではここでもアラン・シルヴェストリのアベンジャーズ・サウンドを踏襲して音楽を担当しているわけです。このようにさまざまな個性を持ったコンポーザーたちが集約されていても、決してMCUのサウンドトラックの基礎、土台、ベース(まぁぜんぶおなじですけど)は崩さない職人作曲家たちが集約されているからこそ、この壮大な世界観が音楽面でもまったく違和感なく繋がりを感じさせるのですね。

ちなみにアベンジャーズ・シリーズの後半戦二部作となる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ではしっかりとアラン・シルヴェストリを返り咲きさせ、ブランディングにも事欠かないところもさすがのMCUです。
まぁざっくりとした見解で賛否両論あるかもですが、このミックス具合、MCUのサントラ・ワールドを楽しむひとつだと思うんです。また機会を見つけて、他MCU作品の劇伴、音楽、それから引用曲なども分析してみたいと思います。ではまた次回。
志田一穂がジョニー志田名義でお送りしている湘南ビーチFM『seaside theatre』こちらは毎週土曜20時からOA中。是非聴いてください。湘南ビーチFM | Shonan BeachFM 78.9 毎週のプレイリストがアップされている公式ページはこちらです。“seaside theatre” from shonan beach FM 78.9