レアとおぼしきサントラを勝手気ままに紹介していく『このサントラ、ちょっとレア。』志田一穂が、今回もご案内させていただきます。

さて、今回は先日遂に『トイ・ストーリー5』(2026)が公開になったということで、シリーズ全体の音楽と、それを手がけたランディ・ニューマンの音楽がいかに素晴らしかったかを独断で展開したいと思います。というか、まずはこの『トイ・ストーリー』シリーズ、志田的には本当に “愛すべき”でして、確かに当初は「CGアニメなんてな」とそっぽを向いていたのですが(『トイ・ストーリー(1995)』第一作目も、そんなんだから劇場で観ませんでした…)、あるときひょんなことから同じピクサーのCGアニメ作品『バグズ・ライフ』(1998)を観ることになりまして、そのクオリティーのバカ高さに仰天したんですね。
なに?今のCGアニメってこんなスゴイの!?といまさらながら大反省もしまして。だって自分世代のCGアニメって言ったら、それこそCGシーンありが売りだった『ゴルゴ13』(1983)とか『SF新世紀レンズマン』(1984)とかじゃないですか。

それを観たあとのがっかり度と言ったら、それはそれでスゴかったわけです。だからそんなトラウマのおかげで『トイ・ストーリー』にも大した期待も持てず、ピクサーの第二作目である『バグズ・ライフ』までその素晴らしさに気づくことがなかったというわけなのです。

で、『トイ・ストーリー』を後追いで観て、CG技術の素晴らしさもさることながら、なんだこの面白さは…と驚いた原因は、まさしくその物語=脚本でしたね。家のおもちゃたちが実は人目につかないとき命が宿ってるかのように自由に動き回ってると。そして自分がおもちゃだと気がついていないバズと、仲間たちを仕切っているしっかり者のウッディとの友情物語にまとめていると。これ普通のアニメにしたって大傑作な内容じゃないか!と感動したのです。

そしてその物語を盛り上げているのが、あのランディ・ニューマンの音楽なんですね。既に『バグズ・ライフ』を観たときに音楽クレジットを見て、うわっランディ・ニューマンだ!とびっくりはしていたんですが、ランディと言えばシンガーソング・ライターとして70年代に活躍したあと、何気に映画音楽に注力していることはいろいろな資料を見て知ってはいましたし、中でも『ナチュラル』(1984)や『レナードの朝』(1990)、『ザ・ペーパー』(1994)あたりは本当に素晴らしいスコアを本編に提供しているんですね。だけどまさかアニメ映画の音楽まで手掛けることになったとは!と驚いたのが正直なところでした。
で、『トイ・ストーリー』の冒頭オープニング・タイトルとして流れる「You’ve Got A Friend In Me~君はともだち」。これを観て、あぁピクサーアニメはこの第一作目からランディを音楽に起用していたんだという感動もありつつ、この曲を聴いたとき、そもそもランディのボーカル曲のテンポ、雰囲気、歌のノリ、映画にぴったりだな!と。

同時に、名盤「Good Old Boys」の「Mr.President(Have Pity On The Working Man)」や、同じく大好きなアルバム「Little Criminals」の名曲「Short Peaple」といったナンバーたちが、既にこの作品『トイ・ストーリー』第一作目で帰ってきていたのか!と嬉しくなってしまったんです。
本作『トイ・ストーリー』は日本ではとかく吹き替え版(ウッディ/唐沢寿明 バズ/所ジョージ)が大評判ですが、米国オリジナル版ではウッディの声はあのトム・ハンクスが充てていまして、なんというかトム本人が歌っているのかな?と思い違いを普通にしてしまうほど、ランディの歌声はトムそっくりでしたよね。これはやっぱりそもそもランディの音楽が似合うはずだとも思いました。挿入曲の「Strange Things」と「I Will Go Sailing No More」のランディの歌もとにかく素晴らしいですし、スコアによる物語を盛り上げる高揚感や切なさの音楽演出も抜群で、ここにきてランディ・ニューマン、CGアニメとともに大復活だなと思っていました。(ちなみに日本語版でこれらの歌を歌ったのがダイヤモンド☆ユカイで、彼もまたウッディ=唐沢寿明の声にやや似ていてそれも良かったですよね)

そして『トイ・ストーリー2』(1999)です。ここから音楽の幅がグッと広がったのも嬉しい流れでした。もちろんランディはそのまま音楽担当として統括プロデュースしておりまして、ウッディが実はプレミア付の貴重なおもちゃ人形だったことがわかる楽しいカントリーソング「Woody’s Roundup」(歌はライダーズ・イン・ザ・スカイ)や、同じシリーズで作られた仲間の人形ジェシーの思い出のテーマ曲「When She Loved Me」(歌はサラ・マクラクラン)など、今やシリーズになくてはならない名曲たちが多々登場するのです。これらの作詞作曲ももちろんランディが手掛けていて、それにも当時、とても嬉しくなってしまいましたね。

『トイ・ストーリー2』でも、あの「You’ve Got A Friend In Me」がフランク・シナトラみたいな歌声を披露してくれるロバート・グーレのボーカルとして再登場しますし、インストゥルメンタル・バージョンではサックス奏者のトム・スコットを迎えて再レコーディングしたりしていてなかなか目が(耳が)離せません。トム・スコットと言えばあのブルース・ブラザース・バンドのオリジナル・メンバーであり、マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』(1976)のテーマ曲のサックス奏者ですから、映画音楽ファンにとってはわくわくする「You’ve Got A Friend In Me」のインスト・バージョンの登場で、なかなかの要チェックナンバーだったりしたのでした。
『トイ・ストーリー3』に行く前に、ピクサー作品でランディが音楽を担当した作品がもう二本ありまして、一本目は『モンスターズ・インク』(2001)ですね。

主役のモンスター2人の声優はビリー・クリスタルとジョン・グッドマン。彼らのデュオの「If I Didn’t Have You~君がいないと」もまた楽しい曲でもちろんこちらもランディの手によるもの。この作品では特にランディによるラグタイム調のサウンドトラックたちが、聴いていてとにかくノッてくるんですね。こんな曲も得意なのかいいぞランディ!とまたまた嬉しくなる始末でした。
そして二本目が『カーズ』(2006)です。

様々な車種の車をキャラクター化するという大胆なこの作品は特に大人たちに大人気になって、主題曲「Life Is A Highway」(演奏はラスカル・フラッツで、オリジナルは1991年に発表されたカナダのアーティスト、トム・コクラン)や、シェリル・クロウのオリジナル・ロックナンバー「Real Gone」、ブラッド・ベイズリーの渋いカントリー・ソング「Find Yourself」、そしてジェームズ・テイラーの素晴らしきバラード「Our Town」と、ここでも注目すべきサントラ・ナンバーたちがてんこ盛り。ランディはときに疾走感溢れる曲を、そしてときにライ・クーダーばりのスティール・ギターによるメロウ・ナンバーで、ルート66の忘れられた街の哀愁をしっかりとスコアにて表現してくれています。もう本当にピクサーのお抱え音楽職人なんだなぁと感動しましたね。

さて、『トイ・ストーリー3』(2010)ですが、前作から実に10年ぶりに登場しただけあってその物語の完璧度は段違い。号泣&嗚咽なしでは観られない大傑作としていまだに君臨している作品ですね。そしてそれはランディによるテーマ曲「We Belong Together~僕らはひとつ」を聴けばもうすべて完璧!とまたまた思ってしまうわけです。これまでよりアップテンポで、おもちゃたち、そして人間たちとのフレンドシップが高らかに歌われていて、これぞハッピーエンドでなくてなんなんだと言わせしめる最高の楽曲です。
このあと問題作となる『トイ・ストーリー4』(2019)でも、今回のすべての伏線回収となるとウワサの『5』でも、引き続きランディは音楽を手がけてくれていますが、もしかしたらこの『トイ・ストーリー』シリーズこそがランディの音楽人生において一番のエポック・メイキングなタイトルであり、またターニング・ポイントだった作品なのかもしれません。

70年代に風刺をこめてアメリカという国の表と裏をユーモア精神とともに表現してきたシンガー・ソングライター、ランディ・ニューマンは、CGアニメという最先端の映像に対して、きわめてアコースティックでネイキッドなサウンドトラックをしっかりと添えることで、映画そのものにナチュラルなバランスを宿してくれた最大の功績者だからだと思うからです。
そうした音楽からの側面でシリーズ全体を観ていくと、また様々な気づきがあるでしょうね。ではまた次回。
志田一穂がジョニー志田名義でお送りしている湘南ビーチFM『seaside theatre』こちらは毎週土曜20時からOA中。是非聴いてください。湘南ビーチFM | Shonan BeachFM 78.9